みんゴロ古文出典

易   難 入試 出題箇所を チェック ! 国公立大の出題が多 く、口語訳や内容説明 を深く求められるので 注意。 次の文は『住吉物語』の一節である。女主人公の姫は、事情があり、心ならずも父中納言の家を出奔して摂 せっ 津 つ の住吉に隠 れ住み、彼女を片恋する男主人公の中将は、彼女の行方を神仏に祈って捜している。話は、従者たちを伴って初瀬(長谷寺) に参籠した男主人公が、暁がたに霊夢を得るところに始まる。 春秋過ぎて、九月ばかりに 初 はつ 瀬 せ に籠りて、七日といふ、 夜もすがら 行ひ て、 暁がたに少しまどろたる夢に、 やんごとなき 女、そばむきて居たり。さし寄りて見れば、 我が思ふ人なり。嬉しさ、 せんかたなく て、「いづくにおはしますにか、 かく いみじき めを見せ給ふぞ。いかばかりか思ひ嘆くと知り給へる」 と言へば、うち泣きて、「かくまでとは思はざりしを。いとあはれにぞ」と言ひて、 「今は帰りなん」と言へば、 袖 そで をひかへて、「おはしましどころ、知らせさせ給へ」とのたまへば、 ※ ※ 『 住 すみ 吉 よし 物 もの 語 がたり 』 京都大学 春秋と月日が経って、九月頃に初瀬長谷寺に参籠して、七日目というときに、 夜どおし 勤行し て、 夜明け方に少しうとうとしていたときの夢の中で 高貴な 女性が、わきを向いて座っていた。近づいて見ると、 男が思いを寄せている人であった。うれしさのあまり、 たまらなく切ない気持ち で、「あなたはいったいどこにいらっしゃるのですか、 姿をお隠しになって私をこんなに つらい 目におあわせにならないでください。私がどれほどあなたをお慕いして嘆き苦しんだかご存知でしたか」 と言うと、女は泣いて「これほどまであなたを苦しませたとは思いもよりませんでした。たいそう悲しいことです」と言って、 「これでお別れしましょう」と言うと、男は袖を押さえて、「今お住まいになっていらっしゃる所を、お教えください」とおっしゃると、 DATA FI LE

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