みんゴロ古文出典

読解ポイント 初瀬(今の奈良県)は、長谷寺の門前町として栄えた。長谷寺は 桜と牡丹の名所として名高く、平安時代以来、観音信仰で、女性 の信仰を集めた。住吉にある住吉神社は摂津(今の大阪府)にあ り、海の守護神・和歌の神として信仰を集めた。 ★「 わたつ 」の和歌の「そこ」が「海の底」と「場所」を指 示する「そこ」の掛詞。「海の底」は不安感を表している。「住 吉」は地名と「住みよい」の意が掛けてある。 現在では「あま」に「海女」と 漢字を当てますが、古文で は「海人」あるいは「海士」と 書くので注意しましょう。

わ ※ たつ海の そことも知らず 侘 わ びぬれば 住吉とこ そ 海 あ ま 人 は言ひけ れ と言ひて、立つをひかへて返さずと見て、うち おどろき て、 夢と知りせばと、悲しかりけり。 と言って、女が立ち去ろうとするのを袖をつかんで引き止める姿を夢の中で見て、そこで 目を覚まし て、 男は今見たことが夢であると知っていたなら目を覚まさなかったのにと、悲しい思いをしたのであった。

○海の底とも、ここはどこともわからぬ所に住んで、淋しい思いをして暮らしていますが、漁夫はここは住吉で住みよい所だと言っています。

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