みんゴロ古文出典
て、気がかりだったので参上いしました」とっしゃい ます。定子様が「雪が積もて『道もなし』と思いましたの に、どうしてまたいらっしゃったのですか」と質問なさい ますと伊周様は笑って、「道もないのに参上すれば、中 宮様はさぞ感心するだろうと思いまして」とお答えなさい ました。定子様の美さや、伊周様のお召しになってい る 直 のう 衣 し や 指 さし 貫 ぬき の色の美しさに、こちらも夢心地です。伊 周様が他の女房と楽しく会話を交わしなさる様子を見て、 私は女房たちの態度には驚き、あきれました。
その後、伊周様が私に近寄りなさり、差し向かいで座 ることになりましたが、私は緊張のあまり冷や汗をかき ながら、身の程知らずの宮仕えであると後悔し、伊周様 が早くお帰り らないかと、ただひたすら祈っており ました。 歌を贈りましたが、則光は和歌が苦手で、読まずに立ち 去りました。則光は「私に和歌を詠むときは、絶交すると きです」と口癖のように言っていたので、私は則光に「仲が 良かったけど、今日のことで私たちの仲も崩壊しましたね」 という和歌を贈り、その後結局疎遠なってしまいました。
1 位 3 2 位 須 夕 一八四段 「宮にはじめてまゐりたる」 八四段 「里にまかでたるに」 磨 1 位 2 位 中 ちゅう 宮 ぐう 定 てい 子 し 様のお父上藤原 道 みち 隆 たか 様が急にいらっしゃるこ とになり、女房たちは大慌てで片付けを始めました。私 も奥に下がり、 几 き 帳 ちょう の縫い目から中の様子を伺いました。 ところが、いらっしゃったのは定子様のお兄様の藤原 伊 これ 周 ちか 様でした。伊周様は「昨日今日と 物 もの 忌 い みでしたが、雪が降っ て来て、私の居場所を教えろと迫ったそうです。則光は知 らん振りするのがおかしくて笑ってしまいそうでしたが、 近くを通り過ぎた 左 さ 中 ちゅう 将 じょう 経 つね 房 ふさ が素知らぬ顔をしていた ので、則光も苦し紛れに食卓の上にあった 若 わかめ 布 をムシャム シャほおばってや過ごしたとのこと。これを聞い私は 顔 私が里邸に退出しているとき、里邸に 左 さ 衛 え 門 もんの 尉 じょう 則 のり 光 みつ が訪ねて来ました。則光のもとに 宰 さい 相 しょう の 中 ちゅう 将 じょう 斉 ただ 信 のぶ がやっ
絶対に私の居場所を教えるなと念を押して強く口止めを しました。数日後、則光から「また斉信様に居場所を聞か れ、もうだめです」という内容の手紙がきました。私は返
事を書かずに若布だけを則光に送り、絶対私の居場所を 教えるなということをほのめかしました。しかし則光は 意味が通じなかったよう、とぼけたことを言って た。あまりの間抜けさ私は腹が立ち、嫌味たっぷりの和
作者清少納言は中宮定子の女房。父は 『後撰和歌集』の撰者である清原元輔。
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