みんゴロ古文出典

1 位 3 2 位 須 夕 顔 1 2 「道長」より 「伊尹」より 四条大納言殿(藤原 公 きん 任 とう )は何事もマルチにデキる人物 だった。大入道殿(藤原 兼 かね 家 いえ )は「どうしてこのように諸 芸にすぐれているのか、私の子供たち( 道 みち 隆 たか ・ 道 みち 兼 かね ・ 道 みち 長 なが )は公任殿の影さえ踏むことができないのが残念だ」と 言う。それを聞いた中関白 道隆)・粟田殿(道兼)は、 恥ずかしくて何も言うことができない。一方、入道殿(道 長)だけはまだ年若いが「影を踏まない代わりにその面を 踏んでやるさ!」と意気込んだ。 花 か 山 ざん 院 いん が在位中の時の話。五月下旬の闇夜で、梅雨の 藤原 朝 あさ 成 ひら 中納言と一条摂政(藤原 伊 これ 尹 ただ )がまだ若く、同 じ殿上人だった頃、朝成中納言は、身分こそ一条摂政に 及ばなかったものの、学問や声望は負けていなかった。 この二人に 蔵 くろうどのとう 人頭 になる順番が巡ってきた時の話である。 朝成中納言は伊尹に、「私には今回しかチャンスはあ りませんが、あたには将来またきっとチャンスがあ る。だから今回はあなたは立候補しないで、私に蔵人頭 の座を譲ってほしい」と頼んだ。伊尹も納得して承知し てくれた。しかしどういうわけか、いつのまにか伊尹が 蔵人頭になっていた。朝成だまされと思い、二人は 仲たがいの状態となってしまった。 磨 時期が過ぎて、とても気味悪く雨が激しく降った夜のこ とだった。花山帝が退屈して殿上の間にきて、殿上人た ちと遊んでいると、ある殿上人が怖い話をする。帝が「今

夜はなんだか気味が悪い夜だが、人気のないところに一 人で行けるか」と持ちかける。人々はとてもできないと いうが、入道殿(道長)だけが、「どこでも行きます」と啖 ある夏の暑い日のこと、朝成は伊尹邸に参上するが、 自分より身分の高い伊尹邸に勝手に上がることもでき ず、案内があるまで庭で待っていた。ところがいつまで 待っても案内が来ない。ついに夜になってしまい、結局 伊尹に会わずに帰ってきてしまった。怒りに燃えた朝成

呵をきった。花山帝は面白がって、道隆・道兼・道長に それぞれ人気のないところを指定して行ってくるように は、 一族を永久に絶やすことを誓 亡くなったの で、伊尹一族を代々にわたって呪う悪霊となってしまっ たということだ。 命じる。道隆と道兼は結局恐れをなして途中で引き返し てくるが、道長だけは平然と行って帰ってきたのった。

成立は平安時代後期。ジャンルは歴史 物語。

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