みんゴロ古文出典

1 位 3 須 1 2 位 横 よこ 笛 ぶえ という女を 滝 たき 口 ぐちの 入 にゅう 道 どう は心から愛していた。滝口 入道の父親はこれを聞き、「世間で評判の者の婿にして、 宮仕えも気楽にさせようと思っていたのに、取るに足らな い身分の者を好きになりおって」と反対した。滝口入道は 「不死と言われた 西 せい 王 おう 母 ぼ もお亡くなりになったし、長寿と 言われた 東 とう 方 ほう 朔 さく も名前しか知らず見たこともない。この 世は一瞬の光と同じで、はかないものだ。長生きしてもせ いぜい ~ 歳。元気なのはせいぜい 年くらいだろう。 不尽なことをしたからである。人は自分が栄えているから といって、してはいけないことをしたり、言ってはいけな いことを言ったりするのはよくないとわきまえるべきだ。 源三位入道の息子、伊豆守 仲 なか 綱 つな は、宮中でも評判の名 馬を持っていた。平宗盛はこれを聞き、仲綱に使者を送 て「評判の馬を見たい」と伝えた。しかし仲綱からの返事は 「馬は休養中で田舎にいる」のことだった。だがそれが後 に噓だとわかり、それなら無理にでもその馬を手に入れよ うと、平宗盛は再三にわたって仲綱に手紙を送った。それ を聞いた父の三位入道が「たとえ名馬でも、それほど欲し がる人がいるなら惜しまずにあげさい」と言うので、仲 横 笛 競 2 位 源 げん 三 ざん 位 み 入 にゅう 道 どう (源 頼 より 政 まさ )は長年静かに無事に過ごしていた のに、なぜ謀反を起こしたかというと、平家の平 宗 むね 盛 もり が理 70 80 夢や幻のようにはかないこの世で、いくら身分が高くも ブスと結婚するのはごめんだ。しかし愛する女性と結婚す ると父に背くことになる。この機会に出家してしまおう」と 言って 歳で出家し、嵯峨の 往 おう 生 じょう 院 いん にこもってしまった。 磨 夕 顔

20 横笛はこれを聞き「私を捨てるのは仕方ないけれど、姿 を変えて出家してしまうなんてひどいとです。せめて出 家するのを知らせて欲しかった」と悲しみ、往生院を訪れ、 念仏を唱える滝口の声を聞いた。それを知っ滝口は心穏 19 やかではなく、障子の隙間から横笛の様子を伺うが、使 いの者に「滝口という者はいない」と言わせ、横笛を追い返 したのであった。 綱は仕方なく宗盛に馬を贈った。一方、宗盛は馬をもら ったが、「すばらしい馬だが持ち主が惜しがったが憎ら しい」と言って、馬の体に「仲綱」と焼印して厠につないだ。 そして客が来ると「仲綱に乗れ、仲綱を打て」と言ってその 馬をひどく扱った。それを聞いた仲綱は憤慨し、三位入道 も平家打倒を決意したのだった。

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