語彙・テーマ
解説 ナショョナリズムの高揚は、グローバリゼーションの進行という対外的な要因だけでなく、共同体の弱体化とい う国内的な要因からも説明できます。 発展テーマ2「共同体」で説明したように、現代においては、かつての地域 の共同体にあった濃密な人間関係は希薄化し、組織されない匿名的な「大衆」が存在するにすぎません。この状況 を、筆者も例文で「住みなれたムラのような共同体を失った個人」と指摘しています。 このように 他者との連帯感を失った現代人が、自らのアイデンティティを確認する拠りどころと して求めたのが、 であるという意識を高めなければなりません。
ナショナリズムであった と言えるでしょう。「過去から現在に至る長い歴史のなかで自分たちの意味づけ」を行う ことで、「自分のはかない生に意味」を見出すのです。 ここで、 「国民国家」 という言葉について説明しておきましょう。「国民国家」とは、 近代において成立した、主 権者である国民を単位として一つになった国家 のことです。自分たちの国のことは、 自分たち国民で決める。しかし、 そのためには、 「国民」にあたるのは誰かを確定し、 自分たちは「国民」 そこで必要とされたのが、ナショナリズムでした。自分たちは一つの民族であり、一つの文化・社会を形成し ているという意識が、「国民国家」では求められます。筆者が例文の冒頭で「国 民観念は近代の産物」というのは、 そのような意味においてです。
109 発展テーマ
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