語彙・テーマ

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しかし、スミスは一方で、おのれの利己心を抑制するものとし て、「公平な観察者」と呼ばれる内面的な良心を重視しました。 自分のことを客観的に見て、自ら利己心を抑えることができてこ そ、個人の内面に対する権力の干渉を排除できると考えたのです。 このように、本来の「自由主義」は経済的自由だけでなく精神 的自由も射程に入れるものでしたが、現代の 「新自由主義(ネオ・ リベラリズム)」 は様相が異なります。この社会のすべての人を 経済的な主体とみなし、市場のプレーヤーとなることを求めるの が、新自由主義です。

しかし、新自由主義において認められていないことが一つだけ あります。それは〈市場から降りる自由〉です。ここに、自由競 争を強いられる、つまり、 を強制される不自由という逆説 が

成立します。競争の結果として敗れても、「自己責任」片付け られる。こうして、市場を下支えしていた家族や地域コミュニ ティが弱まる (発展テーマ ・ 参照) なかで、格差は拡大し続け、 国民の間に「分断」が生じているのです。

現代文テーマ

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発展テーマ

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