語彙・テーマ

6 10 発 展 ここまで、重要語や頻出テーマを解説するのに、「他者」とい う言葉をたびたび用いてきました。 「他者」とは、自己に対する 何かあるもののこと です。 「他人」の場合には人のみを指しますが、 「他者」は人以外にも用いられます。例えば、「ヨーロッパにとっ て日本は他者である」などと言います。 ここで重要なのは、 自己と他者は対立するもの である、という ことです。他者に自己は含まれません。その意味で、自己と他者 の関係は、基本テーマ 「自然」で説明した、近代における人間 分かり合える相手は「他者」ではない。 他者

と自然の関係と同様であると言えるでしょう。人間は自然の一部 ではなくなる、つまり、人間にとって自然は「他者」になったか らこそ、自然を実験・観察の対象として、普遍的な法則を見出す ことも可能となったのです。 そのように見ると、 「他者」という捉え方じたいが、西洋近代

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