語彙・テーマ

彼ら(=江戸時代の儒学者)の大部分は、中国を理想化し、 日本のおくれを強調した。もっと正確に いえば、中国とい う歴史的・具体的・ 特殊 な文化または国家を、本来、超歴 史的・抽象 普遍 的な価値と、同一視する傾向があった。 もし彼らが 普遍 的な価値の立場をとっていたとすれば、 現 実の中国に対しても、現実の日本に対 てと同様、批判を 加えていたはずであろう。また彼らの究 極の目的は、中国 人に似ることでなく、日本人および中 国人の現実を超え る理想近づくことであったはずだろ う。しかし、大部分 の儒者において、中国を批判する 普遍 的な価値の基準はな く、中国と価値は混同され、同一視されていた。 (加藤周一『雑種文化』) 語句 〈例文〉

儒者 儒学者。古代中国の孔子を祖とする儒学(儒 教)は、中国において支配者から民衆ま で 伝統的な価値観して根づき、江戸時代 の 日本においても幕府や藩を支える教学と し て重視された。

同一視 (本来は異なるものを)同じものとみなすこ と。

理想化された中国

= 超歴史的・抽象的・普遍的

現実の中国 = 歴史的・具体的・特殊 ⇔

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