「新・ゴロゴ古文単語」 特典版v1.20
94 ■ 訳 美しい野の山に秋風が吹き、夜も更けて、昔の都である吉野の里は寒々としていて衣を打つ 砧 きぬた の音が聞こえてくる。 ● 本歌取り。 おほけなく うき 世 よ の 民 たみ に おほふかな わが 立 た つ 杣 そま に 墨 すみ 染 ぞめ の 袖 そで 前大僧正慈円 三 ■ 訳 身の程知らずと言われても、仏仕える身の法師として、この憂き世の民を救済するために覆いかけましょう。比叡山に住みはじめた 私が身に着けているこの墨染めの袖を。 ●「おほふ」 「立つ(裁つ) 」 「袖」は縁語。 ●「わが立つ杣に 墨染の袖」 … 「おほふかな」へ続く倒置法。 ●「墨染の袖」 … 「墨染」は、 「住み初め」との掛詞。 ● 本歌取り。 ※ 体言止め。 花 はな さそふ 嵐 あらし の 庭 には の 雪 ゆき ならで ふりゆくものは わが 身 み なりけり 入道前太政大 臣 ■ 訳 桜の花を誘って吹き散らす、激しい風の吹く庭には一面に花吹雪が舞っているが、 その降りゆく雪ではなく、本当に古 (ふ)りゆくものは、 老いさらばえていく私自身であるだなあ。 ●「はなさそふ 嵐の庭の 雪ならで」 … 「はな」 「嵐」ともに擬人化されている。 「雪」は、 「はな」を雪に見立てた表現であり、さらに散る花を 老いていく自分に見立てている。 ● 「ふりゆくものは」 … 「ふりゆく」は、 「(雪が) 降りゆく」と 「(わが身が) 古りゆく」の掛詞。 95 96 み 吉 よし 野 の の 山 やま の 秋 あき 風 かぜ さ 夜 よ 更 ふ けて ふるさと 寒 さむ く 衣 ころも 打 う つなり 参議雅経
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