みんゴロ古文読解
第二部 5 かくて、二三日 おと もせさせたまはず。頼もしげに のたまはせ しことも、いかになりぬるにかと思ひつづ 。目もさましてねたるに、夜 とて、御返し、 和 い ず み 泉 式 し き 部 ぶ 日 に
くるに、 いもね られず うやう ふけぬ らむ かしと思ふに、 門 かど をうちたたく。 あ な おぼえなと思へど、問は すれ ば、宮の御文なりけり。 つま戸押し開けて見れば、 すめる秋の夜の月 うち ながめられて、つねよりもあはれにおぼゆ。 門 かど も らむ ば月はしも見ず や 見るや君さ夜うちふけて山の端 は に
くまなく 開けねば、御使待ち遠にや思ふ ふけぬらむと思ふものからねられねど
なかなかなれ
っ 記 き 作者 和 い ず み 泉式 しき 部 ぶ 日記 平安時代中期
こうして、二、三日の間は何の もなさらな い。頼りになりそうな感じで邸に引き取って一緒に 暮らそうなどと おっしゃっ たことも、どのように なってしまったのかと考え続けると、 寝ることもで きない 。さえた目で横になっていると、夜も 次第に 更けてしまっ ている だろう思うころに、門をしき りにたたく。 「 ああ 、だれだろう。心当たりもないよ」 と思うけれども、取次ぎに尋ね させる と、宮からの お手紙であった。妻戸を押し開けて、月の明かりで お手紙を見てみると、 =あなたは見ていますか。夜が更けて山の端に 少し の曇りもなく 澄んでいるこの秋の夜の月を。 とあった。 ふと 自然に月が眺められて、いつもより しみじみと情趣を感じる。門も開けていないので、 お使いもき 待ち遠しく思っ ているだろう と思っ て、返歌をする =おっしゃるとおり、夜も更け澄んだ月出ている お便り
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