みんゴロ古文読解

第三部 6 大 お お 鏡 かがみ 粟 あは 田 た 殿の御男 君 きん 達 だち ぞ三人 おはせ しが、太郎君 は 福 ふく 足 たり 君と申し しを、おさなき人はさのみこ そとおもへど、いと あさましうまさなう あし くぞおはせし。東三条殿の御賀に、この君舞ひ をせさせ たてまつらん とて、ならは せたまふ ほ ども、 あやにくがり 、 すまひ たまへど、よろづ にをこづり、いのり さへ して、をしへ きこえ さ するに、その日になりて、いみじうしたて たて まつりたまへるに 、舞台の上にのぼりたまひ、 もののね調子ふきいづるほどに、わざはひか な、「 あれ は舞はじ」とて、びんづらひきみだ り、御装束はらはらとひやりたまふに、粟田 粟田殿〔=藤原道兼〕の御子息たちは三人 いらっ しゃっ たが、御長男は福足君と申しあげたけれど も、幼い人はみなそのようなものと思うが、この方 はほんとに 驚き呆れる ほど たちが悪く 、やんちゃで いらっしゃった。御祖父の東三条殿〔=兼家〕の還 暦のお祝いにこの福足君に舞を舞わせ 申し上げよ う として、習わ せなさる 間も、 意地を張り 、 嫌がり なさったが、いろいろだましすかし、祈祷 まで して、 お教え 申し上げ させたのに、その当日なって、粟 田殿が福足君にたいそう立派に舞の装束つけて さし あげなさったのに 、福足君は舞台の上に登りなさっ て、楽器の音の調子を合わせ始めると困たこと になったものだ、 が「 わたし は舞うのは嫌だ」 と言って結い上げたびんずらをひき乱し、御装束を ばらばらに引き裂き るので、父の粟田殿は顔色 が真っ青になりなさって、 気が抜けてぼんやりした 御 様子 である。その座にいた すべての 人は、「こん 作者未詳 歴史物語 平安時代後期

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