みんゴロ古文読解

第三部 8 つごもりの夜、 追 つい 儺 な はいと 疾 と く はてぬれば、は ぐろめつけなど、 はかなき つくろひどもすとて、 、弁の 給へり。 内 たくみ 匠 の 蔵 くらうど 人 は 長 なげし 押 のしもにゐて、あてき が縫ふものの、かさね、ひねり教へなどつくづく としゐたるに、 御 おまへ 前 のかたにいみじく ののしる 。 内侍起こせど、 とみに 起きず。人の泣きさわぐ音 の聞こゆるに、いと ゆゆしく 、 ものもおぼえず 。 火かと思へど、 さにはあらず 。 内匠の君いざい ざ と先におしたてて、 ともかうも、宮、しも におはします、まづ参りて見奉ら む と、内侍を あららかにつき 驚かし て、三人震るふ震るふ、足 も空にて 参り たれば、はだかなる人ぞふたりゐた る。 靱 ゆげひ 負 ・小兵部なりけり。 かくなりけり と見るに、 大晦日の夜、悪鬼を払う追儺の行事はとても 早く 終わったので、お歯黒をつけたり、 ちょっとした お 化粧などをしようと思って、 くつろいでいたところ 、 弁の内侍が来て、 いろいろ話などし てお休みになっ た。内匠の蔵人が長押の下手にいて、あてき〔=女 の童の名〕が縫う着物の、重ね方や、折り込み方の 教授など一心にやっていると、中宮彰子様のおいで になる方角でひどく 大声をたてている 。弁の内侍を 起こしたけれ、 急は 起きない。人の泣き騒ぐ声 が聞こえるので、とても 不吉で 、 どうしたらよいか わからない 。火事かと思ったけれど、 そうではない 。 「内匠の君、さあさあ」と先におし立てて、 「とにかく、 中宮様は、天皇様の所ではなくて御自分のお部屋に いらっしゃいますまず、参上し大丈夫かどうか 御様子をうかがいましょ う 」と、弁の内侍を手荒に 突っつて 目を覚まさせ て、三人でぶるぶる震えな がら、足も地につぬような心地で 参上し たところ、 裸の人が二人た。靱負と小兵部であった。 追い剥 ぎであったのだなあ と思うと、ますます 不気味であ 「 」 「 」 紫 むらさき 式 し き 部 ぶ 日 に っ 記 き 作者 紫 むらさき 式 しき 部 ぶ うちとけ ゐたるに 内 ない  し 侍 来て、 物語し て臥し

日記 平安時代中期

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