みんゴロ古文読解

第三部 9 源 げ 氏 じ 物 も 春 とう 宮 ぐう も一たびにと 思 おぼ しめし けれど、もの騒が しきにより、日をかへて 渡らせたまへり 。御年 心もなく うれしと思して 見たてまつりたまふ 御 気色いとあはれなり。中宮は涙に沈みたまへる を、 見たてまつらせたまふ も、さまざま御心乱 れて思しめさる。よろづのことを聞こえしらせ たまへど、いとものはかなき御ほどなれば、 う しろめたく 悲しと 見たてまつらせたまふ 。大将 にも、 おほやけ に 仕うまつり たまふべき御心づ かひ、この宮の御 後 うしろ 見 み したまふべきことをかへ 春宮も帝と御一緒にと お思いになっ しいとお思いになる。桐壺院は春宮にろいろのこ とを教え知らせ申し上げなさるが、春宮は全く理解 できない御年齢であるので、 気掛かりでもあり 悲し いことだと思って 見申しあげなさる 。源氏の大将に 対しても、 朝廷 に お仕え申し上げ なさるためのお心 構えや、この春宮のお 世話 をなさってくれるように という御依頼を、何度も繰り返して おっしゃ 夜 ん の 語 がたり 作者 紫 むらさき 式 しき 部 ぶ のほどよりは、 おとなびうつくしき 恋しと思ひ きこえ させたまひけるつもりに、 何 御さまにて、

物語 平安時代中期 たが、何とな く大げさな騒ぎになるので、別の日に春宮だけ桐壺 院のお見舞いに お出かけなさった 。御年齢のわりに は、 分別ありげでかわいらしい 御様子で、父の桐壺 院を恋しいと思い 申し上げ なさったお気持ちが積も り重なったので、今の御対面を 無心に うれしいとお 思いになって桐壺院を 見申し上げなさる 御様子が実 に身にしみるほどいじらし。中宮〔=藤壺〕は悲 しみの涙に沈みさっていたが、桐壺院はそれを 見 申し上げなさる つけも、様々にお心が乱れて悲

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