みんゴロ古文読解
第三部 10 じう黒き に 、雪すこしうち散りたるほど、黒戸 枕 まくらの 草 そ う 子 し 作者 清 せい 少 しょう 納 な 言 ごん 随筆 平安時代中期 きさらぎ 月 つごもり ごろに、風いたう吹きて空いみ 陰暦二月の月末 時に 如
思 といふ。みないと はづかしき なかに、宰相の御 いらへ を、 いかでか ことなしび にいひ出で む 、 と、心ひとつに苦しきを、 御 お 前 まへ に御覧ぜさせむ
「 」 ひわづらひ ぬ。 誰 たれたれ 誰 か と問へば、それそれ、 るも、これが 本 もと はいかでかつく べからむ 、と
「 」 とのもりづかさ 殿司 来て、 かうてさぶらふ といへば、 寄りたる に 、 これ、 公 きん 任 たふ の 宰 さいしゃう 相 殿の とてあ るを、見れば、懐 ふところがみ 紙に、 すこし春ある心地こそすれ とあるは、 げに けふのけしきにいとようあひた 「 」 に 主
いそう暗い 涼殿の黒戸に主殿寮の役人がやって来て、「 ごめん ください 」と言うので、私が近づいていく と 、「こ れは、公任の宰相殿からのお手紙でございます」と 言って、差し出したのを見ると、懐紙に、 =ちょっと春めいた気分がします と書いてあるのは、 なるほど 今日の空模様にとても よく合っているがこの和歌の下の句に対する 上の 句 は、どのようにつけ たらよかろうか と、 思い悩ん で しまった。そこで主殿司に「殿上の間にはだれと だれがいらっしゃるの」と尋ねると、これこれの方々 です、という。皆、気おくれするほど 立派な 方々の 中で、特に、公任の宰相殿への御 返事 を、 どうして なんでもない様子 で詠み出せ ようか、詠み出すこと はできない と、自分の胸一つでは収拾がつかないの で、 中宮様 に御覧にいれようとするが、 帝 がおいで
ごろに、風がひどく吹いて空がた 、雪が少しちらついているころ、清
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