みんゴロ古文読解
第一部 4 玉 た 勝 か つ 間 ま 作者 本 もと 居 おり 宣 のり 長 なが 随筆 江戸時代後期 兼好法師がつれづれ草に、花は盛りに、月は く まなき をのみ見るもの かは とかいへ る は、いかに ぞや。いにしへの歌どもに、花は盛りなる、月は くまなき をも見たるよりも、花のもとには風を か こち 、月の夜は雲を いとひ 、あるは待ち、をしむ 心づくし を詠め る ぞ多くて、心深きも、ことにさ る歌に多かるは、みな、花は盛りをのどかに見 ま ほしく 、月は くまなから むことを思ふ心 の せちな る からこそ、さも え あら ぬ を嘆きたる なれ 。いづ この歌に かは 、花に風をまち、月に雲をねがひた るはあらむ。 さるを 、かの法師が言へ る ごとくな るは、人の心にさかひたる、後の世の さかしら 心 兼好法師が、その著『徒然草』に、「花は満開 の時に、月は 一点の曇りもない 時にだけ眺める べきもの であろうか、いや、そうとは限らない 」 とかいっ ている のは、どうであろうか。古歌な どには、花は満開であるのを、月は 一点の曇り のない のだけを眺めたのよりも、花の咲いた下 では風の吹くのを 嘆き 、月の夜は雲が月を隠す のを 嫌い 、あるいは花の咲き、月の出るのを待ち、 花の散り、月の入るを惜しむ もの思い を詠ん だ ものが多くて、情趣が深いのも、ことにそう いう歌に多いのは、それはみな、花は満開のと ころをのどかに見 たいと思い 、月 くまなく照っ てい てほしいと願う心 が 切実である からこそ、 そう することができない 様子を嘆いているの で ある 。どこのだれ 、花咲いている時に 風の吹くのを待ち望み、月の照っている時に雲 の出るを願も があるだろうか、そんなも ま
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