みんゴロ古文読解
第一部 5 伊 い 勢 せ 物 も 作者未詳 歌物語 平安時代前期 むかし、 あてなる 男ありけり。その男のもと な りける 人を、 内 ない 記 き にありける藤原の敏行といふ人 、かのあじなる人、案をかきて、かか の 語 がたり
りければ せてやりけり。 めで まどひ にけり。さて男 の よめ の ながめ てあふよしもなし 返し、例の男、女にかはて、 漬つ らめ涙川 ながると 聞かば頼ま む る、 つれづれ 漬 袖のみ ひ 浅みこそ袖は ち
よばひ けり。されど若ければ、 文 ふみ も をさをさしか ら ず、ことばもいひしらず、 いはむや 歌はよま ざ にまさる涙川
さへ
身
昔、 高貴な 男がいた。その男の所 にいた 女の 人に、内記だった藤原敏行という人が 言い寄っ た。けれども女はまだ若かったので、 手紙 も 一 人前にしっかり書け ず、言葉の使い方も知らず、 まして 歌は詠ま なかったので 、その主人が、下 書きを 、女に書かせて送 。それを見て 男は ひどく 感心し てしまった。さてその男 が 詠 んだ歌、 =(長雨のために川の水が増すように、) 所在 ない もの思い の涙の量が増て涙の川とな り袖が 濡れる ばかりで、二人の会う手立てが ないことだ。 その男からの返歌を、例の男が女に代わって詠 んだ、 =あなた流す涙川が浅いので袖しか 濡れ な いのでしょう。涙が深い流れとなり身体 まで 流れると 聞くならば あなたを 頼りにいたしま
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