みんゴロ古文読解

第一部 9 枕 まくらの 草 そ う 子 し 作者 清 せい 少 しょう 納 な 言 ごん 随筆 平安時代中期 もの見におそく出でて、ことなりにけり、白き しもとなど見つけたるに、近くやりよするほど、 わ びしう 、下りても 往 い ぬ べき ここちこそすれ。知ら れじと思ふ人のある に 、前 なる 人に教へてものい はせたる。 いつしか と待ち出でたる 稚 ち 児 ご の 、 五 い 十 日 か ・ 百 もも 日 か などのほどになりたる、行く末、いと 心 もとなし 。 なにごとにもあれ、いそぎてものへ行く べき を りに、まづわが さるべき ところへ行くとて、ただ いまおこせ む とて、出でぬる車待つほどこそ、い と 心もとなけれ 。 大 おほ 路 ぢ 行きけるを、「 さななり 」 とよろこびたれば、 外 ほか ざまに往ぬる、いと くちを 祭りの行列見物に遅く出掛けて、既に行列は 始まってしまい、検非違使のつく白い杖などを 見付けたのに、牛車を行列に近付ける間は、 つ らく 、いっそ車から降りて歩いて行き たい 気持 ちがする。見にきいることを気づかれまいと 思う人が目につい ので 、前 に座っている 女房 にわけを言って応対させているのは、どうな ることかと気気でな。 早く早く と待ちかね てやっと生まれてきた赤ん坊 が 、生後、五十日目・ 百日目の祝いのころになると、かえっこの子 供の前途を思う 不安になる 。 何事でもあれ、急用でどこかへ行か なくては ならない ときに、だれかが先に、自分が しかる べき ところへ行かなければならないと言い、す ぐに車をお返しし よう と言って、出ていった車 を待っている間は、大変 気がかりだ 。大通りを 通っていた車を、「 帰ってきたらしい 」と喜ん

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