みんゴロ古文出典
易 難 入試 出題箇所を チェック ! 難易度が高いが、短編 集でストーリー性が高 く、内容を知ってる と俄然有利。 右 う 馬 ま の 佐 すけ 見たまひて、「いとめづらかに、さまことなる文かな」と思ひて、「 いかで 見 てしがな 」と思ひて、中将と言ひあはせて、 あやしき 女どもの姿をつくりて、 按 あ ぜ ち 察使 の 大納言の出でたまへるほどにおはして、姫君 の ※ 住みたまふかたの、 北 きた 面 おもて の立 たて 蔀 じとみ のもとにて 見たまへば、男の 童 わらは の ※ ことなることなき、草木どもにたたずみありきて、さて言ふやうは、 「この木にすべて、いくらもありくは、いとをかしきものかな」と、「これ御覧ぜよ」とて、 簾 すだれ を引き上げて、「いとおもしろきかは虫こそ さぶらへ 」と言へば、さかしき声にて 「いと興あるとかな。こち持て 来 ※ こ 」とのたまへば、 「取り分かつべくもはべらず。ただここもと、 御覧ぜよ」と言へば、あららかに踏みて出づ。簾をおしはりて、枝を見はりたまふを 見れば、かしらへ 衣 きぬ 着あげて、髪もさがりば 清げに はあれど、けづりつくろはねばにや、 『 堤 つつみ 中 ちゅう 納 な 言 ごん 物 もの 語 がたり 』 東洋大学 右馬佐はこの返事をご覧になって、「まことに世にまれな、風変わりな手紙だなあ」と思って、「 どうにかして 姫 君 を 見 た い も の だ 」 と 考 え て、 友 人 の 中 将 と 相 談 し、 賤 し い 女 ど も の 姿 に 変 装 し て、 按 察 使 の 大納言が外出をなさったすきを見ていらっしゃって、姫君 が お住みの居間の北面の、立蔀の側に忍んで 垣間見なさると、折しも男の童 で 平凡な童が、植え込みの間を立ちどまりながら歩いて、さて言うことには、 「この木全体に無数に這っているぞ。とてもすばらしいものだなあ」と感嘆する。「これをご覧なさい」と言って、 簾を引き上げて「まことにすばらしい毛虫が おりますよ 」と報告すると、姫君ははきはきとした声で 「とてもすてきね。こっちに持って おいで 」とおっしゃるので、「選び取ることができそうにもありません。ついここの所ですよ。 ご覧なさい」と言うと、姫君は荒っぽい足取りで出てくる。簾を前に押し張り身をのり出して、毛虫の枝を大きく見開いた目でご覧になる姫君の姿を 見ると、着物を頭にかぶったように着こみ、髪も額髪の下がったあたりは 美しい が、櫛で手入れをしないためか、 DATA FI LE
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