みんゴロ古文出典
読解ポイント 文中の四条大納言とは有名な藤原公任のこと。和歌・漢詩・管 弦の「三舟の才」を兼備しており、藤原道長の称賛を浴びたほ どの秀才だった。だが、藤原氏の権力は北家が握っており、 「兼
宿借るばかりは、 いかで 濡れむぞ。ここもとぞ劣りたる。歌柄はよし。 道済がは、さ言はれたり。末の世にも、集などにも入りなむ」 とありければ、道済、舞ひ奏でて出でぬ。長能、もの思ひ姿にて、出でにけり。 さきざき 何事も長能は上手をうちけるに、この度は 本 ほ 意 い なかり けりとぞ。 ○長能─藤原長能。道済と歌のライバル関係にあったと伝えられる。 ○道済─源道済。 ○信明─源信明。 ○四条大納言─藤原公任。詩・管弦にすぐれ、当代随一の歌人と称された。 あられで宿を借りるほど どうして 濡れようか、いや濡れない。 このところが劣っている。歌の品格はよい。 道済の歌は、雪に濡れても濡ても狩を続けようというふうにこの点、もっともな表現をしている。後々の世の歌集にも入ることであろう」 とあったので、道済はうれしさで舞い踊りながら退出していった。長能は何か考えごとをする姿で退出していった。 これまでは 何事においても、長能は道済を上回っていたのに、今度ばかりは 不本意になってしまっ たということだ。
= 家―道隆―道長」ラインが摂関政治を握った。なお公任には 『和漢朗詠集』という中国の漢詩文と日本の和歌のアンソロジー がある。 ★「 られ降る 」和歌では三つも掛詞が使われている。 「みの」が「 御 み 野 の 」 (=御料地)と「蓑」との掛詞。「かりごろも」が「狩 り衣」と「借り衣」の掛詞。「濡れぬ」が「狩り衣濡れぬ(=狩り衣 が濡れた)」と「濡れぬ宿( 濡れない宿)」の掛詞。 平安の説話文学はゴロで 「 霊 の 散歩 道は 今 も 昔 も 古本 屋」 と覚えましょう。 日本霊異記 三宝絵詞 今昔物語集 古本説話集
11 第 位 ~ 第 位 20
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