みんゴロ古文出典
読解ポイント 『方丈記』の冒頭部分は名文で有名である。「ゆく河の流れは絶え ずして、しかも、もとの水にあらず、よどみに浮かぶうたかたは、 かつ消え、かつ結びて、久しくとどまりたるためしなし、世の中 にある人と住家と、またかく如し」。 ★「 むすべり 」の「り」は完了助動詞「り」の終止形。完了の 助動詞は存続「~ている」の意の場合もあるので、文脈で判 断する。
今の世のならひ、この身のありさま、ともなふべき人もなく、 頼む べき 奴 やつこ もなし。 たとひ、ひろく作れりとも、誰を宿し、誰をか 据 す ゑん。それ、人の友とあるものは 富めるをたふとみ、ねむごろなるを 先 さき とす。必ずしも なさけ あると、 すなほなるとをば愛せず。ただ 糸竹花月 を友とせん にはしかじ 。人の奴たるものは、 賞罰はなはだしく恩顧あつきを先とす。さらに、育みあはれむと、 安く静かなるとをば願はず。ただわが身を 奴 ぬ 婢 ひ とする にはしかず 。 今の世の状況で、我が身の境遇では、ともに生活すべき妻子もなく、 頼り にできる下僕もいないからだ。 たとえ庵を広く作ったとしても、いったい誰を宿泊させたり、誰を置いたりしようか。そもそも友達づきあいを見ていると、 財産のある者を大切にし、自分にちやほやする者とまず親しくなろうとする。必ずしも 思いやり のある者や、 率直な者を大切にしない。そんなことなら、もっぱら 音楽や自然 を友として楽しむ に越したことはあるまい 。人に召し使われる者は、 褒 美 が 非 常 に 多 く、 待 遇 の よ い の を 第 一 条 件 と す る。 そ の う え に、 い た わ っ て 使 っ て く れ る と か、 安らかで静かな生活が出来るとかいうことは問題にない。それならば専ら自分自身を召使にする に越したことはない 。
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