みんゴロ古文出典
読解ポイント 藤原道長一門の繁栄の裏で、不遇な身の上にほぞをかむ 帥殿(藤原伊周)が、生きがいを見失いつつも出家する 已然形が文末ではなく文の途中にあり、「、」などで 下へ続いていくと逆接になる。「~けれども・~のに・ ~が」と訳す。 ★「 やは 」「かは」の形は基本的に反語になる。「~だろ うか、いや~ない」と訳す。 決意もできず苦しんでいる場面。この後、妹である中宮 定子が産んだ第一皇子は皇太子となれず、道長の娘であ る中宮彰子が産んだ皇子が皇太子となる。 ★ 「 こそ → つれ 、」は逆接の意。係助詞「こそ」の結びの
あはれなる事どもをうち泣きつつ聞えさすれば、殿も、「かくてつくづくと罪をのみ 作り積むも、いと あぢきなく こそ あべけれ 。ものの因果知らぬ身にもあらぬ ものから 、 何ごとを待つにかあらんと思ふに、いとはかなしや。なほ今は出家して、しばし おこなひ て、 後 のち の世の頼みを だに やと思ふに、ひたみちに起こしたる道心にもあらずなどして、 山林にゐて経読みおこなひをすとも、この世の事どもを思ひ忘るべきやうもなし。 さてよろづに 攀 へん 縁 えん しつつせん 念 ねん 誦 ず 、 読 どきやう 経 はかひはあらんとすらん や ※ は と思ふに、 まだえ思ひたたぬなり」など言ひつづけさせたま。いみじうあはれなることなりかし。 しみじみと心 動かされることなどを泣きながら申し上げたので、殿も、「こうして何もせずぼんやりと罪ばかり 作り重ねるようなのも、ひどく つまらない こと にちがいない 。物事の因果をわきまえぬ身でもない けれども 、 何事を待っているのであろうかと思うと、とてもむなしいことだよ。やはり今は出家して、しばらくは 仏道修行し て、 来 世 の 頼 り に で き る こ と だ け で も 祈 ろ う か と 思 う が、 ひ た す ら に 起 こ し た 道 心 で は な い の で、 山林にいて経を読み修行をしたとしても、この俗世のことなどを忘れられ こともできそうにない。 そうして万事につけて俗縁にかかわりわずらいしつつ、念誦や読経は効き目はあるだろうか、いや、あるまいと思うと、 まだ決心できないのである」など言い続けなさる。たいそう気の毒なことであるよ。
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