みんゴロ古文出典
易 難 入試 出題箇所を チェック ! 阿仏尼は『十六夜日記』 が有名だが、上位大で は『うたたね』が出題 されるので注意。 「おのづから事のついでに」などばかりおどろかし聞こえたるにも、 「世のわづらはしさに、思ひながらのみなん。 さるべき ついでもなくて、 みづから聞こえさせず」など、 なほざりに 書き捨てられたるもいと心憂くて 消え果てん 煙の後の 雲を だ ※ に よもながめじな 人目もると て と覚ゆれど、心の中ばかりにて くたし 果てぬるは、いと 甲 か 斐 ひ なしや。 その頃心地例ならぬことありて、命も危うき程なるを、ここながらともかくもなりなば わづらはしかるべければ、思ひかけぬ便りにて、 愛 を 宕 たぎ の近き所にて、 はかなき 宿り求め出でて、 移ろひなんとす。かくとだに聞こえさせまほしけれど、問はず語りもあやしくて、 阿 あ 仏 ぶつ 尼 に 『うたたね』 日本女子大学 「 た ま た ま 所 用 の つ い で に 」 と だ け 便 り を 差 し 上 げ た の に 対 し て も、 「 世 間 の う る さ さ に 思 っ て い る ば か り で ど う し よ う も な い。 し か る べ き 機 会 も な く て、 直接お会いしてお話しすることもない」などと いいかげんに 書き捨ててあるのがたいそううらめしくて、 と思われたけれど、心の中だけで 葬っ てしまっ のは、とても不甲斐ないことよ。 そ の 頃、 病 気 に な っ て、 命 も 危 う い ほ ど に な っ た の で、 こ こ に 居 た ま ま で ど う に か な っ た ら、 や っ か い で あ ろ う か ら、思 い が け な い 縁 故 を 頼 っ て、愛 宕 に 近 い 所 に ち ょ っ と し た 宿 所 を 求 め て、 そこに移うとする。引っ越しますとだけでも申し上げさせたいけれど、尋ねられてもいないのにこちらから言い出すのも具合が悪いので、 ○私が死んで火葬にされた時の煙が雲のように立ち上っても、 それさえもあなたは決して眺めてはくれないでしょうね。他人の目が気になるからということで。 DATA FI LE
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