みんゴロ古文出典

易   難 入試 出題箇所を チェック ! 和歌がからむことが多 いので難易度はかなり 高。上位大志望者は 押さえておくべき作品。 大方の世騒がしく、心細きやうに聞こえし頃などは、 蔵 くらうどのとう 人頭 にて、ことに 心のひまなげなりしうへ、あたりなりし人も、「 あいなき ことなり」など言ふこともありて、 さらにまた、ありしより けに 忍びなどして、おのづから、とかくためらひてぞ もの言ひなどせし折々も、ただ大方のことぐさも、「かかる世の騒ぎになりぬれば、はかなき数に ただ今にてもならむことは、疑ひなきことなり。さらば、 さすがに 露ばかりのあはれは

DATA FI LE かけてむや。たとひ何とも思はずとも、かやうに聞こえなれても、年月といふばかりに なりぬるなさけに、道の光もかならず思ひやれ。また、もし命たとひ今しばしなどありとも、 すべて今は心を昔の身とは思はじと、思ひ したため てなむある。そのゆゑは、ものをあはれとも、 何のなごり、その人のことなど思ひ立ちなば、思ふ限りも及ぶまじ。心弱さもいなべしとも 『 建 けん 礼 れい 門 もん 院 いん 右 う 京 きょうの 大 だい 夫 ぶ 集 しゅう 』 広島大学 世 間 全 般 が 騒 が し く、 心 細 い と 言 わ れ て い た こ ろ な ど は、 資 盛 は 蔵 人 頭 で、 格 別 に 心が休まることがなさそうだった上に、近親の人たちも「妻があるのに 感心できない ことだ」などと言うこともあって、 ま す ま す 以 前 よ り も い っ そ う 人 目 を 忍 び な ど し て、 自 然 と あ れ こ れ と た め ら っ て、 話などしていた時々も、ただふだん話すこととしても、「このような世の中の騒乱の時になったので、亡き人の数に 今すぐにもわたしが入ることは疑いないことである。そうなったら、気丈なあなた とはいってもやはり 、少しのあわれは かけてくれるでしょうか。たとえ何とも思わないとしても、このように親しく話すようになってからでも、短くはない年月と呼べるほどに なった情として、冥途の道の光となるよう供養のことを必ず気にかけてくれ。また、もしも命がたとえもうしばらくあるとしても、 今はすっかり心を昔の自分と同じだとは思うまいと心の 準備をし ている。そのわけは物事を懐かしんで、 何々の名残だとかだれそれのことなどを思い出し始めたとしたら、思っても思い尽くせないだろう。気弱さとはどのようなものだろうと、

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