みんゴロ古文出典
いと かたき ことにぞ侍る」と申せば、少将、「いと いたく なすぐだちそ」とて、 しとと打ち給へば、「 さはれ 、下りさせ給へ」とて、もろともに入り給ふ。御車は、 「まだ暗きに 来 こ 」とて、帰しつ。我が 曹 ざう 司 し の 遣 やり 戸 ど 口 ぐち にしばしゐて、あるべきことを聞こゆ。 人少ななる折なれば、 心やすし とて、「まづかいまみをせさせよ」とのたまへば、 「しばし。心劣り も ※ ぞ せさせ給ふ。 物 もの 忌 い みの姫君のやうならば」と聞こゆれば、 「笠も取りあへで、袖を かづき て帰るばかり」と笑ひ給ふ。 、 」 ご仲介出来るかどうかは大層 むずかしい ことでございます」と申し上げると、少将は、「あまり ひどく 、きまじめなことを言うなよ」と言って、 帯刀をちょっとたたきなさると、帯刀は「 ともかく 、車からお降りください」と言って、一緒に邸にお入りになる。お車は、 「まだ夜の明けないうちに 来い 」と言って、帰してしまう。帯刀は部屋の入り口にしばらく留まって、これからの手はずを申し上げる。 人 気 の 少 な い 時 な の で 安 心 だ と 思 っ て、「 ま ず、 姫 君 を の ぞ か せ ろ よ 」 と お っ し ゃ る の で、 「ちょっと待ってください。少将さまががっかりなさる と困ります 。もしも古物語の『物忌みの姫君』のようでしたら」と申し上げると、 「その時は、物語と同じように笠もかぶらず、袖で 顔をおおっ て一目散に帰るばかり」とお笑いになる。
読解ポイント 落窪の姫君は中納言の娘で、母が亡くなったために継母に育てら れていた。継母はそんな姫君を酷使し、床の落ち窪んだ部屋に住 まわせ、人々に「落窪の君」と呼ばせていた。少将はその悲しい境
「 」= 遇にある姫君に興味を持ち、中納言一家の留守を見計らって邸を 訪れる。問題文は少将が臣下の帯刀の手引きで初めて姫君の姿 を垣間見る場面。 ★ 係り結びの特殊な意味、 もぞ 「~すると困る」に注意。 「もこそ」も同様に悪い事態を予測して心配する意を表す。
31 第 位 ~ 第 位 40
「
もぞ もこそ
もぞ
すると困る すると大変だ
もこそ
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