みんゴロ古文出典
読解ポイント 作者讃岐典侍は、堀河帝の秘書であると同時に寵愛を受ける 愛人であった。若くして病に倒れ危篤状態にある堀河帝を片 ( 推 量 )」に切れる。ここでは「明けるだろう」の意。「明けてほ しい」と訳す場合は、「なむ」は一語で、その場合は他への 時も離れずに看病していた。夜が明けて休もうとする作者に 堀河帝は寝るなと促す。下仕えの者から、帝のお世話をす 願望の終助詞となる。「明く」が下二段活用なので、未然 形と連用形が同形であり、その場合は「なむ」の識別は文 脈判断になる。 るために作者が健康に留意し無理をしないよう 言わ れ、かえって悲しみに耐えられない気持ちになっている。 ★ 「 明けなむ 」の「なむ」は「な(完了「ぬ」の未然形)+「む
休まむと思ひて単衣をひき かづく を、御覧じて、引き退けさせたまへば、なほ、 な 寝 そ と 思はせたまふなめりと思へば、起きあがりぬ。大臣殿の 三 さん 位 み 、「昼は御前をば たばから む。 休ませたまへ」とあれば、おりぬ。待ちつけて、「われも、強くてこそ あつかひまゐらせさせたまはめ」といふ。 なかなか 、かくいふからに、 耐へがたき心地ぞする。日の経るままに、いと弱げにのみならせたまへば、 このたびはさなめり、と見まゐらする悲しさ、ただ思ひやるべし。 私は休もうと思って単衣をひき かぶる のを、帝はご覧になってお引き退けになるので、やはり帝は私に寝る な と 思っていらっしゃるのであるようだと思うので起き上がった。大臣殿の三位が、「昼間は帝のお世話を何とか 取り計ら おう。 あなたはお休みください」とおっしゃるので私は局に下がった。下仕えの者が私を待ち受けていて、「あなたも健康な状態で 帝 を お 世 話 申 し 上 げ な さ っ て は い か が で す か 」 と 言 う。 か え っ て こ の よ う に 言 わ れ る と、 私は悲しみに耐えることのできない気持ちがする。日が経つにつれて、帝はとても弱々しくおなりになるばかりなので、 このたびはそう(=死ぬの)であるようだ、とお見申し上げる私の悲しさを、ぜひ思いやってほしい。
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