みんゴロ古文出典
易 難 入試 出題箇所を チェック ! 平均的出題傾向で難易 度も特に高くないが、 内容をざっと知ってお くと有利。 二十日余りの月とともに都を出で侍れば、何となく捨て果てにし住みかながらも、 またと思ふべき世のならひかはと思ふより、袖の涙も今さら「宿る月さへ 濡るる顔にや」とまでおぼゆるに、我ながら心弱くおぼえつつ、逢坂の関と聞けば 「宮も藁屋も果てしなく」と ながめ 過ぐしけん蟬丸の住みかも、 跡だにもなく、関の清水に宿る我が面影は、 出で立つ 足元よりうち始め、 慣らはぬ旅の 装 よそほ ひいとあはれにて、 やすらは るるに、いと盛りと見ゆる桜の ただ一木あるも、これさへ見捨てがたきに、田舎人と見ゆるが、馬の上四五人、 きたなげならぬがまた、この花のもとに やすらふ も、同じ心にやとおぼえて、 行く人の 心をとむる 桜かな 花や関守 逢坂の山 『とはずがたり』 神戸学院大学 正応年二月二十日過ぎの有明の月とともに都を出発しましたので、特に深い理由もなく捨て去ってしまった住みかではあるが、 また帰ってこようと思ってよい世の習いではない無常の世の中よと思うと、袖の涙も今改めて、『古今集』の古歌のように「涙で濡れた袖に映る月までもが 泣いている様子であるのか」とまで思われるにつけて、自分が決心しておきながら気弱なことよと思われるにつけて、ここが逢坂の関だと聞くので、 「宮殿もわらぶき屋根の家も、そこにいつまでも生きて住めるわけではないから同じことだ」と 詠じて 過ごしたとかいう古人蟬丸の住みかも 今はその跡かたさえなく、関のほとりにあった清水に映る私の姿は、 出発して歩き出したときの 足もとからはじめとして、 慣れない旅の装束がひどくしみじみと切なくて、思わず ためらわ ずにはいられないでいると、たいそう花盛りと思われる桜が たった一本あるのも、この桜まで見捨てがたくしていると、田舎者と見える人で、馬に乗った人が四、五人、 さっぱりした身なりの人たちがこれもまた、この桜の花の下に 立ち止まっている のも、私と同じ気持ちであろうかと思われて、 ○旅行く人の心を引き止める桜であるよ。してみると、この花が関守なのか、逢坂山の関所では。 DATA FI LE
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