みんゴロ古文出典

18 13 15 光源氏は葵の上の死後、服喪の期間を過ごしていた。 深き秋のあれまさりゆく風の音身にしみけるかな、と ならは ぬ御ひとし寝に、明かしかね た ※ まへ る朝ぼらけの霧りわたれるに、菊のけしきばめる枝に濃き 青 あを 鈍 にび の紙なる文つけて、さし置きて 往にける。 いまめかしう も、とて見たまへば、 御 み 息 やす 所 どころ の御 手 なり。 「聞こえぬほどは思し知るらむや。 人の世を あはれときくも 露けきに おくるる袖を 思ひこそやれ ただ今の空に思ひ た ※ まへ あまりてなむ」あり。常よりも優にも書いたまへるかな、とさすがに置きがたう 見たまふ ものから 、 つれな の御とぶらひやと 心うし 。さりとて、かき絶え音なうきこえざらむも いとほしく 、人の御名の朽ちぬべきことを思し乱る。過ぎにし人は、とてもかくても、 さるべき にこそはものしたまひけめ、何にさることをさださだと けざやかに 見聞きけむと悔しきは、 『源氏物語』攻略の鍵は なんといっても人物関係 の把握。P ~ の人 物関係図を参照のこと。 『源氏物語』 立命館大学 晩秋の情趣が深まっていく風の音は身にしみるものよ、と 慣れ ない 一人寝をなさって、眠ることもできずもてあまし なさっ た 朝ぼらけの、一面に霧が渡っているところに、咲きかけた菊の枝に、濃い青鈍色の紙に書いた手紙を結びつけて使者がそっと置いて 帰っていった。「 当世風だなぁ 」と思って源氏がその手紙をご覧になると、御息所の御 筆跡 である。「消息を申し上げなかった私の気持ちはご推察なさっているでしょうか。 ○人の世を無常と聞くにつけても涙がちになるのですが、まして葵の上に先立たれなさったあなたのお悲しみのほどは、十分お察し申し上げます。 だ今この空の風情を見て、気持ちを抑えきれなくなり まし て」と書いてある。「いつにもまして優雅に書きなさったものだなぁ」と、さすがに手紙を下に置きがたく ご覧になる ものの 、 しらじらしい 六条御息所のご弔問であるよと 嫌な気がする 。そうかといって、全くお便りを差し上げないのも 気の毒で 、御息所の御名を汚してしまうにちがいないと、源氏はあれこれお迷いになる。お亡くなりになった葵の上は、いずれにせよ、 そうなるはず の 運命でいらっしゃったのだろう。どうしてああしたことをまざまざと あざやかに 見たり聞いたりしたのであろうかと、くやしく思われるのは、 易   難 DATA FI LE 入試 出題箇所を チェック !

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