みんゴロ古文出典
1 第 位 ~ 第 位 10
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読解ポイント 「葵」の巻の一場面。光源氏の正妻葵の上は、賀茂祭(葵祭)の 見物に出かけた際に、光源氏の愛人の六条御息所と車争いを して六条御息所から怨みをかっていた。葵の上は、夕霧を出 産後、六条御息所の生霊襲われて亡くなった。その後の六 条御息所と光源氏との手紙のやり取り場面である。 ★「 たまふ 」には二種類ある。一つは四段動詞で尊敬。もう一
わが御心ながらなほ え 思しなほす まじき なめりかし。 斎 さい 宮 ぐう の御 浄 きよ まはりもわづらはしくやなど、久しう ご自分のお心ながらやはり、御息所に対する厭わしい気持ちをお変えになることは でるはずがない ようであるよ。斎宮の御潔斎にもありはしないかなどと、長らく 思い ためらい なさったけれど、 わざわざ 御息所がくださったお便りに返事をしないのは 薄情だ と思って、紫でねずみ色がかった紙に、源氏は「 この上もなく ご無沙汰の日数が経ちましたが、いつも心に掛けており ます ものの、お便りを 遠慮していた 間のことは、それならばご理解くださっているのだろうと存じまして。 ○この世に生き残っている者も、死んだ者も、ともに同じはかない露のようなもので、はかない世に執着するのは むなしいことです。 思ひ わづらひ たまへど、 わざと ある御返りなくは 情けなく やとて、紫の 鈍 にば める紙に、「 こよなう ほど経はべりにけるを、思ひ た ※ まへ 怠らずながら、 つつましき ほどは、さらば思し知るらむとてなむ。 とまる身も 消えしも同じ 露の世に 心おくらむ ほどぞ はかなき ○さること―御息所の生霊が葵の上にとりついたこと
つは下二段動詞で謙譲語。今回の文章ではどちらも出て いるので、しっかり違いを識別して欲しい。謙譲語のほ うは補助動詞の用法で、会話文中で用いられ、「~ます」 と丁寧語のように訳すのもポイント。 尊敬の「たまふ」は四段。 謙譲の「たまふ」は下二段。 「たまへ」の識別が勝負の ポイント。
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