みんゴロ古文出典

出題率 0.6 % 43 位 歌物語 作者未詳 平 へい 中 ちゅう 物 もの 語 がたり 平安中期 さて、この男、その年の秋、西の 京 きょう 極 ごく 、九条のほとりにいきけり。そのあたりに、 築 つい 地 ぢ など崩れたるが、 この男、ただにも過ぎで、「 などか その庭は 心すごげに 荒れたる」 いひ入れたれば、「たぞ、かういふは」など問ひければ、「なほ、道ゆく人ぞ」 といひ入る。築地の崩れより見いだして、この女、 人の あ ※ き に 庭さへ荒れて 道もなく よもぎしげれる 宿とやは見ぬ と書きて、いだしけれど、もの書くべき具、 さらに なかり ければ、ただ、口移しに、男、 たが あ ※ き に あひて荒れたる 宿ならむ われ だに 庭の 草は 生 おほ さじ といひて、そこに、久しく馬に乗りながら立てらむことの、 しらしらしけれ ば、帰りて、 さ て、 こ の 男 は、 そ の 年 の 秋 に、 西 の 京 極 九 条 の 辺 り に 行 っ た。 そ の 辺 り に 土 塀 な ど は 崩 れ て い て、 そうはいっても 蔀などを上げて簾をずっと下げてある人の家がある。簾のもとに女たちが大勢見えたので、 この男はそのまま通り過ぎることができないで、「 どうして お宅の庭は 淋しそうに 荒れているのです か 」などと 中の女に対して供に言わせたところ、「どなたですか、そう言うのは」などと女が尋ねたので、「ただ通りがかりの者ですよ」 と言わせる。土塀の崩れた間から外を見て、この女は、 ○男に飽きられて、秋になって庭まで荒れて道もわからないほど雑草が茂っている家だと、きっとそうご覧になっているでしょう。 と書いてよこしたけれど、書くことができる道具を まったく持っていなかった ので、ただ口上で、男は、 と 言 っ て、 そ こ に 長 い 間 馬 に 乗 っ た ま ま で 立 っ て い る よ う な の は 興 ざ め だ っ た の で、 帰 っ て ○どなたに飽きられて、秋になって荒れてしまった家でしょうか。私 だけでも 通っていたら、庭の雑草など生やさないでしょうに。 さすがに 蔀 しとみ など上げて、かけ渡してある人の家あり。 簾 すだれ のもとに、女どもあまた見えければ、

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