みんゴロ古文出典

「これ程」とて締めければ、竜の 云 い はく、 ※ れ ける」といへば、 「これ程か」とて、いやましに締め付けて、人に申しけるは、「かかる無理無法なる いたづら者をば、もとの所へやれ」とて追つ立てたり。人 げに もとよろこびて、 もとの 畠 はたけ におろせり。その時、竜いくたび悔やめども、 甲 か 斐 ひ なくして うせ にけり。 「これくらい」と言って縄を締めたところ、竜の言うことには、「まだまだその程度ではない。きつく締められた」と言うので、 「これくらいか」と狐は言って、ますますきつく締め付けて、人に申したことは、「このような筋の通らない、 非 道 な な ら ず 者 は、 も と の 場 所 へ や れ 」 と 言 っ て 追 い 立 て た。 そ の 人 も な る ほ ど そ の 通 り だ と 喜 ん で、 もといた畠に竜を下ろした。その時、竜は何度も悔やんだけれども、そのかいもなく 死ん でしまった。 「いまだそのくらゐなし。したたかに締め ら

読解ポイント 『伊曾保物語』は江戸時代前期の仮名草子で訳者は不明。『イ ソップ物語』の中の九十四話を文語に翻訳したもので、『国 字本伊曾保物語』ともいう。 ★文中の「 らる 」は最初が尊敬、次のものが受身で使われて

いる。最初のものは狐が人に対して敬意を表しており尊 敬の意。次のものは竜がどの程度締められたのかを受身 で表している。「る・らる」は意味の識別が非常に大切。

出題 福井大学 『伊曾保物語』の各話には最後に

れ」というもの。

もないと天罰が下るものと悟

うむったら必ず恩に報いよ、さ

: 教訓が付きます。 この話の教訓は「人から恩をこ

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