みんゴロ古文出典

読解ポイント 新井白石(1657~1725)は江戸時代中期の儒者・政治家。 木 きの 下 した 順 じゅん 庵 あん の門に入り学んだ。六代将軍 家 いえ 宣 のぶ ・七代将軍 家 いえ 継 つぐ の 時には幕政を補佐し、 「正徳の治」と呼ばれる改革政治を行った。

著書も多く、近世屈指の大学者。自伝に『折たく柴の記』があ る。これは祖先の業績を子孫に知らしめようとしたもので、非 公開を前提として書かれたも。 ★接続助詞の「 に 」は連体形に付き、 「~で」「~のに」「~と・ ~ところ」と訳す。ここでは逆接の「~のに」。 本文は『折たく柴の記』

また物のたまふ事もなかりし」ととひ申されしに、「されば、頭のいたむ事 殊 さら に甚しく、我いまだ人に くるしげなる色みえし事もなかりし に ※ 、日 比 ごろ にかはれる事もありなむには、 しかるべからず。また世の人熱にをかされて、ことばのあやまち多かるを 見るにも、 しかじ 、いふ事なからむ には と思ひしかば、さてこそありつれ」 と答へ給ひき。これらの事にて、よのつねの事でも、おもひはかるべし。 また物をおっしゃることもなかったのか」と尋ね申し上げたところ、父は「さよう、頭の痛むことが特にはなはだしく、私はこれまで人に 苦しそうな表情を見られたこともなかったのに、常日ごろの状態と変わったことがあるようなときには、 苦しそうな様子を人に見せることがあるかもしれない。また他の人が熱にうなされて、ことばのあやまちが多いのを 見るにつけても、何も言わないようなこと に越したことはあるまい と思ったので、何も言わないでいたのだ」 と お 答 え な さ っ た。こ れ ら の こ と で、父 の 平 素 の 様 子 が 推 察 で き る だ ろ う。

出題 接続助詞の「に」と「を」は古文の 読解上で大切です。 順接か逆接か単純接続かを判断 しながら読みましょう。 : 横浜市立大学

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