みんゴロ古文出典

読解ポイント 『宇津保物語』は平安中期の伝奇(作り)物語で、作者は不明だ が源順とする説もある。『宇津保物語』は全体を二つあるいは 三つに分けられる。学芸の家・藤原俊蔭一族四代にわたる 琴の名手の物語と、絶世の美女貴宮が多くの求婚者を拒んだ

年月のゆくままに、おのが弾く琴の声に響きかよへり。この木のあらむところ尋ねて、 いかで 琴一つ造るばかり得 む 、と思ひて、俊蔭、三人の人にいとまを乞ひて、 斧の声の聞こゆる方に、 疾 と き足 をいたして、 強 こわ き力をはげみて、海河峰谷を越えて、 その年暮れぬ。また明くる年も暮れぬ。 年月が経つほどに、俊蔭自身が弾く琴の音に響き合うようになった。この木のあるようなところをたずねて、 何 と か 、 琴 を 一 面 作 る だ け の 木 を 得 た い も の だ 、 と 思 っ て、 俊 蔭 は、 三 人 の 人 に お ひ ま を 申 し 入 れ て、 斧 の 音 が 聞 こ え て く る 方 に、 早 足 で、強 い 力 を ふ る い 起 こ し て、海 や 河 や 高 い 峰 や 谷 を 越 え て い っ た が、 その年は暮れてしまった。また翌年も暮れてしまった。

「 」 末に東宮に入内しその子が皇位継承争いに勝つという、源正 頼一族の政権争奪のドラマとが、矛盾を抱えながらも大団円 を迎える大河小説の体裁を整えることになんとか成功してい る。 ★ 手 とは、ここでは琴の曲の奏法のこと。ほかにも「筆 跡」の意の場合があるので注意。 古典常識としては、 ○「遊び」 = 詩 しい 歌 か 管 かん 弦 げん ○「手」 = ① 筆跡 ② 楽器の弾き方 この二つを押さえましょう。 「遊び」の中心は「音楽(管弦)」 です。 出題 : 明治学院大学

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