みんゴロ古文出典
出題率 0.3 % 58 位 物語 作者未詳 とりかへばや 物 もの 語 がたり 平安後期 北の方 二 ふた 所 ところ ものしたまふ。ひとりは源の 宰 さい 相 しやう ときこえしが御むすめにものしたまふ。御 心ざし は いとしも すぐれ ね ど、人より先に見そめたまひてしかば、 おろかならず 思ひきこえたまふに、 いとど世になく玉光る男君さへ生まれたまひにしかば、 またなく 去りがたきものに 思ひきこえたまへり。いま 一 ひと 所 ところ は、藤中納言ときこえしが御むすめにものしたまふが 御腹にも、姫君のいと うつくしげなる 生まれたまひしかば、さまざま めづらしく 、 思ふさまにおぼし かしづく こと限りなし。上たちの御ありさまのいづれもいとしもすぐれたまはぬを、 おぼすさまならず 口 くち 惜 を しき ことにおぼしたりしかど、今は君たちのさまざまうつくしうて 生ひ出でたまふに、いづれの御方をも、捨てがたきものに思ひきこえたまひて、今は さる方におはしつきにたるべし。君たちの御 かたち のいづれもすぐれたまへるさま、 北の方はお二方いらっしゃる。お一方は、源宰相と申し上げた方のお嬢様でいらっしゃる。大将のご 愛情 は それほどには すぐれているわけでは ない が、誰よりも先に夫婦の契りをお結びになったので、 いいかげんでなく お思い申し上げなさるうちに、 さ ら に、ま た と な い 美 し い 男 の 子 ま で お 生 ま れ に な っ た の で、大 将 は ま た と な く 離 れ が た い 伴 侶 と し て お思い申し上げなさっている。もうお一方、藤中納言と申し上げた方のお嬢様でいらっしゃる方であるが その方にも、姫君でたいそう かわいらしい 方が、お生まれになったので、二人の子は異なった様子でそれぞれに すばらしく 、 思いどおりに心にかけて 大切にお育てになる ことはこの上ない。奥方たちのご容姿身分・境遇が、どちらもそれほどにはすぐれていらっしゃらないことを、 大将はご期待どおりではない、 残念な ことにお思いになっていらっしゃったが、今ではお子様たちがそれぞれにかわいらしく 成長なさるので、どちらの奥方に対しても、大将は縁はなかなか断ち切りにくいものとお思い申し上げなさって、今は それなりにすっかり腰を落ちつけていらっしゃるようだ。お子様たちのご 容貌 が、どちらもすぐれていらっしゃる様子は、
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