みんゴロ古文出典

読解ポイント 与謝蕪村(1716~1783)は江戸中期、天明期の俳人・ 画家。画家としては 池 いけの 大 たい 雅 が とともに活躍した。「芭蕉にかえ れ」という蕉風復興を唱え、古典の教養を生かした空想的・ 絵画的な句を作った。『 夜 や 半 はん 楽 らく 』の中の「 春 しゅん 風 ぷう 馬 ば 堤 ていの 曲 きょく 」は発 句と漢詩を交えた斬新な形式の詩として高く評価されてい

よろづ心うくおぼさめなど、とひなぐさめけるに、阿満いついつよりも顔ばせ うるはしく 、 のどやかにものうち語り、よべかくかくの怪異ありしとつぐ。聞くさへえり寒く、すり寄りて、 あなあさまし、さばかりのふしぎあるを、いかに家子どもをもおどろかし給はず、ひとりなど かたふべき。 似げなく も剛におはしけるよといへば、いやとよ、つゆおそろしきことも 万事につけてご心配なことでしょう」などと、お尋ねしては慰めたところ、阿満はいつもよりも顔つきが 美しく 、 穏やかに話をして、「昨晩はこれこれの怪異がありました」と私に告げた。私はその話を聞くだけで首筋が寒く、阿満の近くに寄って、 「あ あ れたことです。それほどの不思議な出来事があったのに、なぜ下男下女たちをお起こしにならずに、どうして一人で こらえていることができのですか。あなたは 見かけによらず 、剛胆でいらっしゃることよ」と言うと、彼女は「いえいえ、すこしも恐ろしいこととは 思いませんでした」と語って聞かせてくれた。普段は、窓を打つ雨や荻の葉を吹き過ぎる風の音さえ恐ろしいと言って、 物を引き かぶっ ていらっしゃるそうであるのに、阿満がその夜だけは、怪異を恐ろしいとも思われなかったというのは、本当に不思議なことである。 覚えず侍りけりとかたり聞こゆ。日ごろは窓うつ雨、荻ふく風のおとだにおそろしと、 引き かづき おはすなるに、その夜のみ、さともおぼさゞりけるとか、いといとふしぎなること也。

出題 る。「菜の花や月は東に日は西に」という句は、『続 ぞく 明 あけ 烏 がらす 』に 収められた句で、色彩感豊か絵画的な蕪村の代表作。ほ にも俳文集して『新花摘』がある。 本文は『新花摘』 蕪村は南宋画を描く画人でも あったので、絵画的俳諧が多い のが特徴です。 : 関西学院大学

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