みんゴロ古文出典
は取り返せないのだ。一生のうちで何が一番大事なこと かを決めて、その一つを一生懸命にやるべきだ。あれも これもと執着していては、結局一事も成就することはで きないのだ。 かけもなくた自然あげるのが本当の厚意というも だ。その品物を惜しむふりをしたり、相手に欲しいと言 わせようとしたり、勝負に負けたのにかこつけてあげる のは見苦しい。
ながら、ついつい怠けて過ごし、目前のことばかりに気 を取られて月日が過ぎてしまい、結局何も成し遂げずに 人はこれを面白いと言っていたが私もそう思う。 わざとらしく趣があるよりも、自然で平凡なのが良い のだ。客にご馳走する際も、うまいタイミングで出すの も良いが、ただ何ということもなく、偶然のようにご馳 走を出すのが実良い。人に物をあげるのも、何のきっ 年老いてしまう。一つの道の熟達者もなることもでき ず、思ったように出世もしない。しかし後悔しても年齢
は説経を習う時間がないまま年をとってしまった。 世の中にはこうしたことがよくある。若いうちは、立 身出世し芸能も学問も身につけようと将来の計画を立て わしい人がいないなら私にください』と言ったなら、も っと立派だっただろうに」と入道が言ったそうだ。ある
顔 ることにしていますから、その鯉をいただきましょう」 と言って料理したのは、その場にふさわしく興趣がある 酒などを勧められたときに、法師で芸がないのも施主が つまらないだろうと思い、早歌を習った。この二つがど んどん上達していくのがうれしくて励んだが、そ息子 と人々は思った。その話をあるが北山の太政入道話 したところ、「それは少し嫌味だな。『鯉を切るのにふさ
1 位 3 2 位 須 夕 一八八段 「或者、子を法師になして」 二三一段 「園の別当入道は」 磨 1 位 2 位 ある人が自分の息子を法師にしようと、「学問をして 因果応報の道理を知り、説経などをして生計を立てなさ い」と息子に言った。息子は教えに従い、まず馬乗りを 園 その の 別 べっ 当 とう 入 にゅう 道 どう は、 類 たぐい まれな料理人である。ある人の 邸で立派な 鯉 こい が出たので、人々は彼の包丁さばきを見た いと思ったが、軽々しく頼むことをためらっていた。別 当入道は気の利いた人で、「修行のために百日間鯉を切 習った。導師として招かれるときに、馬に上手に乗れず に落ちたら情けないと思ったからだ。次に、仏事の後で
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