みんゴロ古文出典
出題率 0.3 % 61 位 物語 菅 すが 原 わらの 孝 たか 標 すえの 女 むすめ 夜 よる ( 半 (よわ) )の 寝 ね 覚 ざめ 平安後期 人の世 のさまざまなるを見聞きつもるに、なほ寝覚の御仲らひばかり、 浅からぬ契りながら、よに 心づくし なる 例 ためし は、ありがたくもありけるかな。 そのもとの根ざしを尋ぬれば、そのころ太政大臣ときこゆるは、 朱 す 雀 ざく 院 ゐん の御 はらから の 源氏になりたまへりしになむありける。 琴 きん 、笛の道にも、 文 のかたにも、すぐれて、 いと かしこく ものしたまひけれど、女御腹にて、 はかばかしき 御 後見 もなかりければ、 なかなか ただ人 にて おほやけ の御後見とおぼしおきてけるなるべし、その 本 ほ 意 い ありて、いとやむごとなき おぼえ にものしたまふ。北の方、一所は 按 あ 察 ぜ 使 ち 大納言の 女 むすめ 、そこに男二人 ものし たまふ。 帥 そち の宮の御女の腹には、女二人おはしけり。形見どもをうらやみなくとどめおきて、 競 きそ ひかくれたまひにし後、 世 を 憂き ものに懲りはてて、いと広くおもしろき宮にひとり住みにて、 男 女 の 仲 の さ ま ざ ま な 関 係 を ず い ぶ ん と 見 聞 き し て き た が、 や は り 寝 覚 め の お 二 人 の 仲 ほ ど、 深い縁で結ばれていながら実に 悩 み を 尽 く す 例は 、珍しいことであったよ 。 寝覚めの恋のお二人の血筋を尋ねてみると、その当時太政大臣と世間で申し上げていた方は、朱雀院の御 兄弟 が臣籍に下って 源氏におなりになった方であった。この方は琴や笛といった管弦の道にも、 漢詩文 の方面にも優れており、 たいそう 才覚に富んで いらっしゃったが、この方の母は女御であって、 しっかりした 御 後見人 もなかったので、父帝は かえって 臣下 として 朝廷 の補佐をするのがよいと 決めになっておられただろう、その望みがかなって、今では並々ならぬ 世間の信望 を得ておられる。太政大臣の北の方は、お一人は按察使大納言の娘で、男の子二人が 生まれ ておられる。 もうお一人の北の方である帥の宮の御娘との間には、女の子二人がいらっしゃった。二人の北の方が形見となるお子様たちを互いに恨みっこなしに残して、 前後を競うかのようにお亡くなりになった後、太政大臣は 男女の仲 を つらい ものだと懲りてしまわれて、たいそう広く風情あるお邸に独り住みの状態で、
240
Made with FlippingBook - Online catalogs