みんゴロ古文出典

『古今』一部は一世界を表はし、人の一生涯をかたどるといへり。いづれの集も

読解ポイント 松永貞徳(1571~1653)は江戸前期の俳人・歌人・歌 学者。文化的に恵まれた環境に育ち、多方面で活躍したが、 中でも俳諧の方式を定め、門下に北村季吟らを育て貞門派を 形成、俳諧三神の一と称された。編著には『新 しん 増 ぞう 犬 いぬ 筑 つく 波 ば 集 しゅう 』 『戴 恩記』などがある。 ★「鴨長明ののせられたり」の「 の 」は主格で、そのため下の「 ら れ 」は尊敬の意になっている。受身ととらないように注意。 本文は『戴 たい 恩 おん 記 き 』 ○松永貞徳 → 貞門派 ○西山宗因 → 談林派 ○松尾芭蕉 → 蕉門派 ちなみに井原西鶴は談林派です。 出題 : 大阪大学

ありと知るべし。総別、 みなみなかくのごとし。公任 卿 きゃう 和歌の 九 く 品 ほん をえらび給ひしにも、 上 じやう 品 ぼん 上 じやう 生 しやう の歌も、 下 げ 品 ぼん 下 げ 生 しやう の歌も、 人丸の御歌ならずや。されば人丸赤人の歌にも、歌 屑 くづ ありと知るべし。俊成卿の『千載集』 えらばれし時、「われは人をば見ず、ただ歌をのみ見る」と仰せられもこれなり。 あると知るべきだ。総じて、『古今集』の一部は一つの世界を表し、人の一生をかたどると言っている。どの集も みなこのようだ。公任卿が『和歌九品』を選びなさった折も、上品上生(=最上級)の歌も下品下生(=最下級)の歌も、 ともに柿本人麻呂のお歌ではないか。だから、人麻呂・赤人の歌にも歌屑があると知るべきだ。俊成卿が『千載集』を 選びなさったとき、「私は作者を見ず、ただ和歌だけを見る」とおっしゃったのも、このことである。

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