みんゴロ古文出典
出題率 0.3 % 66 位 擬古物語 藤 ふじ 原 わらの 定 さだ 家 いえ か 松 この道にともなふ人々はおのおのその道守らむとして退く心のみあれば、 器 うつは 物 もの にあらず、 おろかに耐へぬ身にして、高き世にだに乱れし国のあとを追ひて、なまじひに 母后朝に臨む名を盗まむとす。わざはひ速やかに、こと 極 きは まり ぬれば、 かへさひ 定むるにだに及ばず。 后 は、「 私 は 愚 か で 卑 し い 女 の 身 で、 幼 い 年 齢 で も っ た い な く も 英 明 な 君 主 に お 仕 え す る こ と を 今、思いがけなく帝の崩御という国の悲しみに逢い、越女が病気の帝を思って死んだ先例を追わずに生きながらえた間違いによって、 乱れた国の母后という汚名を受けている。臣下の中からふさわしい人物を選んで、政治を託するべきであるが、帝のご病床のそばで 遺命を受けなさって、国政を補佐するはずだった人々は、逆臣の謀略によって非業な死を遂げてしまった。 この都落ちの旅に同行している臣下たちは、めいめい道中の無事を守ろうとして、敵を避ける気持ちばかりでいるから頼りにならず、私は 才能 も乏しく、 ま こ と に 愚 か な 身 な が ら、 遠 い 昔 の 世 で さ え 乱 れ て い た 国 の 先 例 を 追 っ て、 力 不 足 な が ら も、 母后が政治を執行する評判をひそかに立てたい。災厄が急速に生じ、事態が 切迫し ているので、 何度も思い返して 決定する暇さえもない。
250 まつ 浦 らの 宮 みや 物 もの 語 がたり 鎌倉前期 后、「我おろかに卑しき女の身、 いとけなき 齢 よはひ にして かたじけなく 賢き君に仕うまつることを 許され、身に余る位に備はりて、十かへりの春秋を送りしかど、 牝 ひん 鶏 けい の朝する戒めを恐れて、 掖 えき 庭 てい のせばき身のうへのことをだに、君の みことのり にあらずして、一事詞を加へ行なはざりき。 いま、はからざるに国の悲しびあひて、越女の思ひに死ぬるあとを追はぬ過ちによりて、 乱るる国の恥を受く。臣下のなかにその人を選びて、国の政を授くべきに、御門の御病の床のもとに、 顧命を受けたまひて、朝を助くべかりし人々は、逆臣の謀によりて 横 よこ 様 ざま に命を失ひはてつ。 許され、皇后という身分不相応な位につき、十年の歳月を送ったけれど、女は政治に口を出すべきでないとの戒めを恐れて、 後宮の限られた身辺のことでさえ、帝の お言葉 によらずに、一つのことも行わず、一つの言葉も加えなかった。
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