みんゴロ古文出典

出題率 0.2 % 68 位 1768 ~ 1843 歌人 香 ※ きつつ ひとり 寝 ぬ る夜の あくる間は いかに久しき ものとかは知る 『拾遺集』恋四、「入道摂政 まかり たりけるに、門を おそく 開けければ、 立ちわづらひぬと言ひ入れて 侍 はべ りければ、詠みて 出 い だしける」とあり。 今宵もやと わび ながら、独りうち寝る夜な夜なの明けゆくほどは、いかばかり 久しきものとか知り 給 たま へる、となり。門開くる間を だに 、しかのたまふ御心にひきあてて おぼしやり給へと、このごろ 夜がれ がちなる下の恨みを、ことのついでにうち出でたるなり。 『 蜻 かげろふ 蛉 日記』に、この門たたき給へることを、つひに開けずして帰しまゐらせて、明くる あした 、 こなたより詠みてつかはせしやうに書けるは、 ひがごと なり。「ひとり 寝 ※ る 夜のあくる間は」といひ、 右大将道綱の母が詠んだ歌 『拾遺集』恋四にある歌で、その詞書には「入道摂政(=藤原兼家)が 宮中をさがっ て道綱の母宅を訪れたところ、道綱の母が なかなか 門を開け なかっ たので、 車 の 置 き 場 所 に 迷 っ た と 外 か ら 申 し 入 れ て き ま し た の で、 道 綱 の 母 が 詠 ん で 差 し 出 し た 歌 」 と あ る。 今 宵 は 夫 兼 家 が 来 る か ど う か と 悩 み な が ら、 一 人 で 寝 る 幾 夜 か が 明 け て ゆ く 間 は、 ど ん な に 長く感じるものと知っていらっしゃるか、ということである。門を開ける間 だけでも 、そのように長く感じるとおっしゃる、そのお気持ちにあてめて ご推測ください、と最近あまり 夜は通ってきてくれない 心中の恨みを、この機会に詠んで示したのである。 『 蜻 蛉 日 記 』 に、 こ の 門 を お 叩 き に な っ た こ と を、 と う と う 開 け な い で お 帰 し 申 し 上 げ て、 翌 朝 、 道綱の母側から詠んでおやりになったように書いてあるのは、 間違い である。「一人で寝る夜が明けてゆく間は」と言い、 右大将道綱の母 嘆

か 川 がわ 景 かげ 樹 き 江戸後期 ○あなたのおいを待ちわびて嘆きながら、独りさびしく眠る夜が明けるまでの時間がどんなに長いものかご存じでしょうか、いや、ご存じないでしょうね。

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