みんゴロ古文出典
1 10 第 位 ~ 第 位
「 など 、かからで、よき日もあらむものを、何しに詣でつらむ」とまで、 涙も落ちて休み 困 こう ずる に、四十余ばかりなる女の、 壺 つぼ 装 さう 束 ぞく などにはあらで、ただ 引きはこえたるが、「まろは七度詣でしはべるぞ。三度は詣でぬ。いま四度は ことにもあらず。まだ 未 ひつじ に下向しぬべし」と、道に会ひたる人にうち言ひて 下 くだ り行きし こ ※ そ 、 ただなる所には、目にもとまるまじきに、これが身に、ただ今なら ばや とおぼえ し ※ か 。 「 どうして 来てしまったのだ。こんな暑い日に来なくても、もっとよい日もあるだろうに、どうして私は参詣しているのだろう」とまで、 涙 も 流 れ る ほ ど 疲 れ 休 ん で い る と、 四 十 歳 過 ぎ く ら い の 女 で 旅 装 の 壺 装 束 な ど で は な く、 た だ 着物の裾をたくし上げた女が、「私は今日一日で七度詣でをしますよ。すでに三度は参詣した。あと四度など 問題ではない。まだ未の刻(=午後二時)のうちに下山できるだろう」と、途中で出くわした人にちょっと話して下って行ったときは、 この女はふつうの場で目に留まらないつまらない女だろうが、この時は私もこの女の身に今すぐなり たいなあ と思わずにはいられなかった。
読解ポイント 清少納言が通ったこの稲荷山を登山道は「お山めぐり」呼 ばれる険しい道のり。千本鳥居と呼ばれる鳥居のトンネルが 延々と続き、華やかである。小祠や塚を巡拝するこの「お山 めぐり」は約4kmの道のりである。伏見稲荷大社は商売繁 盛・五穀豊穣の神様が祭られている。 ★文中で係結びが何箇所かあるが、「 こそ→已然形 」につい
てはしっかり慣れておきたい。特に「こそ→うらやましけ れ」のように形容詞の已然形が結びになっているものや、 「こそ→しか」と過去「き」の已然形の結びのものに注意。 『枕草子』は人物関係を知っ ておくと入試で断然お得。 頻出の段にはあらかじめ目 を通し きましょう。
31
Made with FlippingBook - Online catalogs