みんゴロ古文出典
36 入試 出題箇所を チェック ! 文章の難易度は高くな いが、国公立大での出 題が多く、訳出する力 が不可欠。 今は昔、人のもとに宮仕へしてあるなま 侍 さぶらひ ありけり。する事のなきままに、 清 し 水 みづ へ人まねして、 千 せん 度 ど 詣 まうで を二度したりけり。その後いくばくもなくして、主のもとにありける同じやうなる侍と 双 すぐ 六 ろく を 打ちけるが、多く負けて、渡すべき物なかりけるに、 いたく 責めければ、 思ひわび て、 「我持ちたる物なし。ただ今たくはへたる物とては、清水に二千度参りたることのみなんある。 それを渡さ ん ※ 」といひければ、かたはらにて聞く人は、 謀 はか るなりと、 をこに 思ひて笑ひけるを、 この勝ちたる侍、 「いとよきことなり。渡さば得ん」といひて、 「いな、かくては 請 う け取らじ。三日して、 この よし 申して、おのれ渡すよしの 文 ふみ 書きて渡さばこそ請け取らめ」といひければ、「よきことなり」 と契りて、そ日より精進して、三日といひける日、「さは、いざ清水へ」といひければ、この負け侍、 このしれ者にあひたると、かしく思ひて、喜びてつれて参りにけり。いふままに文書きて、 『宇治拾遺物語』 津田塾大学 今となっては昔のことだが、人の所に仕えている年若く身分の低い侍がいた。することがなかったので、清水寺へ人のまねをして、 千 度 詣 で を 二 度 し て い た。 そ の 後、 ま も な く、 主 人 の 下 に 仕 え て い た 同 じ よ う な 身 分 の 侍 と 双 六 を 打ったところが、ひどく負けて、渡すことができる物がなかったので、相手が負けたこの侍を ひどく 責めたので、 困ってしまっ て、 「 私 は 持 っ て い る 物 が な い。 い ま 貯 え て い る 物 は、 清 水 寺 へ 二 千 度 参 詣 し た こ と だ け だ。 そ れ を 渡 そ う 」と 言 っ た の で、そ ば で 聞 く 人 は、だ ま す の だ と、 ば か ば か し い こ と に 思 っ て 笑 っ た の を、 この勝った侍は、「たいへんよいことだ。渡してくれるならもらおう」と言って、「いや、このままでは受け取るまい。三日して、 この 事情 を清水の観音に申し上げて、自分に渡すという証文を書いて渡すならば受け取ろう」と言ったので、「承知した」 と約束して、勝った男はその日から精進して、三日目という日に、「それでは、さあ清水寺へ行こう」と言ったので、この負けた侍は、 こんな馬鹿者にあったことよと、おもしろく思って、喜んで一緒に参詣した。言うとおりに証文を書いて、 易 難 DATA FI LE
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