みんゴロ古文出典
1 10 第 位 ~ 第 位
読解ポイント 清水寺は古くから石山寺、長谷寺と並ぶ観音霊場として有 名で、これらの寺は平安時代の作品にもたびび登場する。 「千度詣」は名前の通り千度お参りをすること。 ★ 文中で何度も出てくる「 ん 」は「む」と同じ働きをす る助動詞。打消の意味はないので注意。ちなみに「と」
御前にて師の僧呼びて、 事のよし 申させて、「二千度参りつること、それがしに双六に打ち入れつ」 と書きて取らせければ、請け取りつつ喜びて伏し拝みて、 まかり出で にけり。 その後、いくほどなくして、この負け侍、思ひかけぬ事に捕へられて 獄 ひとや に居にけり。取りたる侍は、 思ひかけぬたよりある 妻 め まうけて、いとよく徳つきて、 司 つかさ などなりてたのもしくてぞありける。 「目に見えぬものなれど、 まことの心 をいたして請け取りければ、仏あはれと おぼしめしたりける な ※ んめり 」とぞ人はいひける。 観音の御前で師の僧を呼んで、 事情 を観音に申し上げさせて、「二千度参詣したこと、双六に勝った侍に双六の賭け物として渡した」 と 書 い て 渡 し た の で 、 受 け 取 り つ つ 喜 ん で 観 音 を 伏 し 拝 ん で 退 出 し た 。 そ の 後、ま も な く、こ の 負 け た 侍 は 思 い が け な い こ と で 捕 ら え ら れ て、牢 獄 に 入 っ た。受 け 取 っ た 侍 は、 思いがけず裕福な家柄の妻と結婚して、たいへん財産を持ち、官職についてとても豊かに暮らした。 「 目 に 見 え な い 物 だ け れ ど、 真 心 を つ く し て 受 け 取 っ た の で、 仏 も 情 が 深 い こ と だ と 思 い に な っ た の で あ る ら し い 」 と 人 々 は 言 っ た 。
★「 なんめり 」は断定の助動詞「なり」の連体形「なる」+ 推定「めり」=「なるめり」が撥音便化したもの。さ らに無表記形「なめり」になる場合が多い。訳は「~であ るしい」。
の前に「む・ん」がくると、たいていの場合、意志「~ しよう」の意になる。
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