みんゴロ古文出典
1 位 3 2 位 須 夕 1 2 宇 う 多 だ 帝が 鳥 とり 飼 かいの 院 いん という離宮にいる時に、いつものよう に管弦の音楽の遊びが催された。帝が「ここにいる遊女 の中に、声が美しく奥ゆかしい人はいるかな」と問うと、 遊女たちは「 大 おお 江 え の 玉 たま 淵 ぶち の娘という者がいます」と答えた。 深 ふか 草 くさ 帝の時代に 良 よし 岑 みねの 宗 むね 貞 さだ 少将という人がいた。あると き少将は、内裏にいる女性と逢う約束をした。しかし約 束の時刻を過ぎても少将は女を訪れず、女は「約束の時刻 をとうに過ぎた丑三つ(午前二時)になった今、もうあな たを頼りにはしません」と歌を贈った。歌が届けられると、 一四六段 一六八段
ならねどたちのぼりけり(「あさみどりかひある」に「鳥 飼」が詠み込められている)」見事な歌を詠んだ。帝は 感動して声高にはやしたて、涙を流して誉めた。酒に酔っ てそこにいた人々も、感動して涙もろくなり酔い泣きを した。帝は女に 袿 うちぎ と袴を与え、他の上達部たちにもこの 振りは見せなかった。もし出家をしたいと言ったら、妻 が悲しみ自分の出家の決意も揺らいでしまうと思っか らだ。妻は悲んで長谷寺に参詣しそこにいた導師に「夫 (少将)の姿を、夢でもよいから仏様に聞いてお見くだ さい」と言って自分の衣装や刀など全てお布施とした。法 師となってたまたま長谷寺で修行をしていた少将はこの 女の話を耳にし、聞いているうちに自分のことだと気が ついて、正気を失うほど悲しんだ。少将は一晩中泣き明 かすと、朝には何もかもが血の涙に染まっていたとさ。 女に衣服を脱いで褒美として与えるように命じた。 都に帰るときに、帝はこの女の世話を家来に命じ、そ の後家来は常に女を訪れて世話をしたとさ。
顔 この少将を大切にしていた帝が亡くなると、男は突然 世間から姿を消してしまった。少将は二人の妻には出家 をしたいと言っていたが、最愛の妻には少しもそんな素 ねた。帝はその場にいる人たちすべてに「鳥飼」という 題で歌を詠ませ、「玉淵はとても物事に精通していて、和 歌も上手に詠んだものだ。『鳥飼』の題で上手に和歌を詠 むことができら、本当玉淵の娘だと信じよう」と言っ た。女は、「あさみどりかひある春にあひぬれば かすみ
磨 帝の前に現れた女は、容姿がこざっぱりとして美しく、 帝はとても感動し「お前は本当に玉淵の娘か」などと尋 寝ていた男は目を覚まし「あなたの夢を見るかと寝てい たら子の刻(午前0時)を寝過ごしてしまった」と返した。
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