みんゴロ古文出典

「 」 花園の左大臣( 源 みなもとの 有 あり 仁 ひと )は後三条天皇の孫で、白河院から源姓 を賜った。才能も容姿も優れ、若くして詩歌管弦に堪能な人物 だった。紀 きの 友 とも 則 のり は紀 きの 貫 つら 之 ゆき の従兄で、三十六歌仙の一人。平安前 期(寛平期)を代表する歌人。 ★「春霞」の和歌の なる は伝聞・推定。ここでは鳥の鳴き 声を聞いて音声から「 雁 かりがね 」の声だと推定している。四段動 詞「鳴く」は終止形と連体形が同形なので、その下に付い た「なり」が伝聞・推定なのか断定なのかは文脈で判断する。 「御格子」についた「まゐる」 は、格子を上げたり下ろした りする意をもつのです。 読解ポイント

と詠みたりければ、大臣 感じ 給ひて、萩織りたる 御 おん 直 ひた 垂 たれ を押し出して賜はせけり。 寛平の歌合に、「初雁」を、友則、 春霞 かすみていにし かりがねは 今ぞ鳴く な ※ る 秋霧の上に と詠める。左方にてありけるに、五文字を詠みたりける時、右方の人、声ごゑに笑ひけり。 さて次の句に、 「かすみていにし」といひけるにこそ音もせずなりにけれ。同じことにや。 と詠んだので、大臣は 感動 なさって、萩を織り出した御直垂を、御簾の下から押し出してお与えになった。 寛平の歌合の時に、「はつ雁」の題を、友則が、 ○春霞の中をかすんで飛んでいった雁が、 秋霧の降りている今戻ってきて鳴いているようだよ。 と詠んだ。友則は左方であったので、最初の五文字を詠んだ時、右方の人々は、声々に笑った。 ところが次の句で「かすみていにし」と詠んだところ、音もたてなくなってしまったということだ。同じことであろうか。

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