語彙・テーマ

これは、ひとつには、日 本では、「公」はもっぱら「お 上」の観念と重なってしまったからであるといってもよい。 「公」は国家的なことがら、国家の偉い人たちが決めること がら、という奇妙な了解ができてしま った。だから、今で も、「公共の事柄」はもっぱら官僚の行政や政治家の領分だ と見なされている。 ヨーロッパにおける、家の外は基本的 にすべて「公」という感覚とは異なっている のだ。ヨーロッ パでは他者との出会いの場所はすべて「 公」の世界なので ある。 しかし、日本的な「公」 観からは、家外へ一歩出ると「公」 の世界で という理解は出てこない。こうして、「私」の 世界と「公」の世界の区別は曖昧となってゆく。 (佐伯啓思『「市民」とは誰か』 ) 〈例文〉

公共 その社会に属する人す 国や自治体が行う活動だけでなく、民間 に おけるNPOや自治会活動、また誰 も が利用できる交通インフラなども、「公共」 に含まれる。

お上 主君や貴人に対する敬称。転じて、前近 代 の日本では、天皇・将軍・大名・領主など、 民衆によって選ばれたわけではない支配 者 を「お上」と呼んだ。 べてが関わること。 語句

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