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10 解説 重要語 で説明したとおり、「アイデンティティ」とは、自分が他の誰でもない自分であるということに対する 確信でした。ですから、持っているモノがすべてみんなと同じでは、アイデンティティの意識は満たされません。 他者とは異なるモノを選択することで、自分を証し立てたい。 筆者が例文で言うように、私たちは「平均性を嫌い 個性的であろうとする意志」を持ち合わせているのです。 しかし、みんなとは違うモノを選択することが「個性」と言えるでしょうか? 出来合いの既製品から選択する ということ自体が、 個性的でありたいという私たちの欲望が売り手に用意されたもの であることを示しています。 「お好きな色・形・デザインを自由に組み合わせることができます」と言われても、与えられた選択肢から選ぶだ けなのです。
こうして、「欲望の多様化」が「画一化と矛盾せず進行」するという逆説が成立します。消費社会において、個 性もまた大量パターンに基づく画一的なものにすぎません。そして、そのように自分ではない者によって作られ た個を、私たちはあたかも自己の内面から生じたもののように思い込まされ、それを満たす「記号」の消費にか き立てられているのです。
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