語彙・テーマ

日本では、老荘の「無為自然」を引 自然 を「自然に放置された」「人為を加えない」ものと解釈する 傾向 がある。それゆえ、 人間が自然に加えるいかなる改変も、 それ自体悪となる、という形で、自然」が絶対価値と見な されることにもなりかねな。だが西欧的発想に立てば、 人間も自然の一部である以上、人間の 営みだけを人為とし て自然から切り離すことを不自 然と受け取る――。 自然と 人間の存在的本質をきびしく区別したヨ ーロッパ が、その 場面では両者を融合的に取り扱う日本や 東洋に対して、機 能としての両者の本質を、後者よりも融 合的に見なす、と いうのはパラドキシカルかもしれないが 、絶対的創造神の 媒介を考えあわせれば、外見ほどこの事 態はパラドキシカ ルではない。 (村上陽一郎『近代科学を超えて』) 語句 〈例文〉 くまでもなく、

26 絶対 他から独立して存在していること。 (P 参照) パラドキシカル 逆説的。一見矛盾しているようで、正し い ことを述べているさま。 「逆説(パラドックス)」については、 P ・ P ・P 参照。 42

老荘 古代中国の思想家である老子・荘子と、 そ の流れをくむ思のこと。万物の根源を 道 と呼び、道の働きに従って人為を加えな け れば(無為)、 おのずから上手くいく(自然) と説いた。

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