極める古文2 センター試験編

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はじめに

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2

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志望大学の目安表

国公立大

私立大

難 関 大 上 位 大 中 堅 大

旧帝大レベル (センター 8₅~90%レベル) 早大・上智大

G ※ MARCH レベル

上位国公立大レベル (センター 80%レベル) 地方国公立大レベル (センター ₇0%レベル)

関関同立 レベル

日東駒専 レベル 産近甲龍 レベル ※G=学習院大 M=明大 A=青学大 R=立教大 C=中央大 H=法政大

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センター

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スタート

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3

1 本書はセンタ 解く際にはでき 2 問題を自力で解き終え 点だけを気にするのでは ましょう。 3 最も大切なことは 「復習」 です。 する」ことが大切です。特に「ポイ の血肉と化すように心掛けてください 4 この問題集を一通り解き終えたあと、 「古文 てください。上段が古文、下段が口語訳になっ つつ、自力で上段の古文を口語訳してみましょう に向上します。 ※ 古文単語は『古文単語ゴロゴ』 、古文文法は『古文文法ゴロゴ』 、こ に関してすべてが網羅的に掲載されているので、本問題集と併用して使え 「本書の利用法」

4

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センター古文の読解法

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5

目次

第4講

第3講

第2講

第 1講

◦ 助動詞「べし」 ◦ 傍線部の前後の「て・ば

◦ 解釈問題の解法 ◦ 「前書き」や 注」は必ず参照する! ◦ 助動詞「る・らる」

◦ 二種類の「たまへ」の識別

◦ 助動詞「まじ」 ◦ 「こと」は「言」と「異」に注意! ◦ 助動詞「む」

近世

近世

中世

中古

紀行『来目路の橋』

日記『うなゐ松』

擬古物語『松浦宮物語』

物語『とりかへ

― ――――――――――――――――――――――― ― ―――――――――――――――――――――――――――

― ―――――――― ◦ 和歌の修辞法ベスト3 ― ――――――――――――――――― ◦ 「ぬ」と「ね」の識別 ◦ 反実仮想のパターン ◦ 内容合致問題の解法

◦ 序詞 ◦ 「たまへらむ」

◦ 呼応の副詞 ◦ 「なり」の識別

8

24

54

38

6

第 8講

第7講

第6講

第5講

◦ 「に」の識別 ◦ 和歌の解釈の手順 ◦ 撥音便の下の「なり」は伝聞・推定

◦ 心情・内容説明問題の解法 ◦ 尊敬の四段動詞「給ふ」+完了の助動詞 り ◦ 完了の助動詞「り」の接続

◦ 「る」の識別 ◦ 「む」の仮定 用法

近世

中世

中世

近世

擬古物語『真葛がはら』

擬古物語『恋路ゆかしき大将』

擬古物語『う 擬古物語『兵部卿 』

― ―――――― ◦ 理由説明問題の解法 ◦ 接続助詞「ば・ど・ども・と ― ――――――――――――― ◦ 登場人物の心情や原因を問われた場合の

― ―――――――――――――

◦ 「エ段+らりるれ」の法則

◦ 和歌や人物関係に絡む問題

――――――――――――

― ―――――――――

102

120

84

66

7

講 『

第 1

学習テーマ

 『とりかへばや物語 つ。あらすじとしては次の ある貴族に、顔が瓜二つの男 うが女らしく、女君のほうが男らし 性別を「とりかへばや」=「取り替えた つまり男君を女として、女君を男として育て の男と女に戻ってめでたしめでたし、 いうラス 今回のテーマはいろいろあるが、ひ ことで言え きる。古文読解における「文法」の重要さはいくら強調 も多いと思うが、一度マスターしてしまえば文法は強力な武 に時間を割き、 きっちりマスターしてほしい。 で、 の「単語問題」に関しても、最初のうちは単純に単語の意味さえ覚え を並べている。 問1

この問題集では、

と出典

易しいものから次第に難しいものへと難易度を上げていく構成

センター古文攻略のカギは「古文文法制覇」にあり!

「古文文法の完全マスター」

ということに尽

をとっているの

問題編 02 ページ

第1講  『とりかへばや物語』

問題集の るので、 前半の の習得も大切で、 「 文単語ゴロゴ』と『古 すぎないことを肝に銘じて ア「具し聞こえて」  「具す」は重要単語かつ、 ゴロで一発の単 こえ( 「聞こゆ」の連用形) 」は謙譲の補助動詞 「言(云)ふ」の謙譲語として「申し上げる」と訳 語が 本動詞なのか補助動詞なのかの判別がポイントになるこ 別し、選択肢の訳がどちらになっているかを確認しよう。 イ「去りがたきほだし」 ほ ここで「ほだし」=「足手まとい」の意 なっているのは

ぐ ー す か寝たまま

訳しているのは

うり 出し た 足手まとい

1 の「のがれられない」なので、正解は

連れて行く

ほだし=足手まとい

、 サ ー 変 具す= (サ変) 連れて行く

3 「お連れ申し上げて」が正解。ここでの「聞

1 と 3 だが、 「去りがたき」というのを 1 。 「ほだし」は「出家の妨げ」という意味

ので、必ず品詞分解したうえで判

『古

P OINT

合いで「足 ウ「めやすき」 目安し  「めやすし」は「目安し う意味なので、ここでは の問題はめずらしい傾向のもので、普通、助 い。そこで、ここではまず「べし」の七つの意味 助動詞「べし」 というのが正しく、 「きっと~だろう」 「~にちがいない」という訳がピタ 法は「当然」=「~はずだ・~べき 」なので、 く場合が多い。 問2 「べし」は推量の助動詞「む」を強めたもの、

す 推量 い 意志 か 可能

っかり、そりゃ 助動詞「べし」はセンター試験では頻出

ゴロゴロ

無難 2 の「感じのよい」が正解。

めやすし=無難だ

と 当然 め 命令 て 適当 よ 予定

ので覚えて

というのが基本なので、 同じ推量でも「強めの推量」

「べし」はまず「当然」で訳してみる

なので完璧にマスターしておきたい。た

解答

3

とうまくい

1

2

10

第1講  『とりかへばや物語』

さて、ここで問われているのは、 (Ⅰ) 「 合、 (Ⅱ) 「べし」の前に係助詞「ぞ・なむ・や の三つのグループ分けだ。  (Ⅱ)のグループとしては、ⓑの前に「かは」 、ⓒの  (Ⅲ)のグループとしては、ⓓの後に「別れ」 、ⓕの後に それぞれ体言を修飾している。 そこで、 Ⅱ がⓑとⓒ、 (Ⅲ)がⓓとⓕと確定するので、 (Ⅰ) もちろん(Ⅰ)の確認として、ⓐとⓔの下に「こと」が補えるかどうかは

⑦予定

⑥適当

⑤命令

④当然

③可能

②意志

①推量

=~しろ。 =~ことになっている。 =~がよい。

= (きっと) =~よう。~つも =~できる。➡下に =~はずだ。~べきだ。 ➡この

わかりやすいのが(Ⅱ)と(Ⅲ)

なので順に見ていこう。

4 が正解となる。

11

センター試 とで正解にたど で解答する形 なっ さらに言えば、こうした にくい場合が多いので、それを が多いと うことを覚えておこう。 ちなみにa~fの「べし」のそれぞれ a「遅らかし給ふ b「立ち帰り見給ふ c「いみじうなむうれしかる d「行く末もはるけかる e「よりどころなき心地す f「さる 掛詞は和歌の修辞法の一つで、大学入試では頻出項目の一つ。設問パター 解釈 、 ②和歌の修辞法を問う 今回問われている掛詞は、日本語に同音異義語が多 という性質を利用したも 問3

べき 老いしらへる女房」=「しかるべき老いた女房たち」…

べき ならねば」=「置き去りになさるつもりはな べき 」=「お戻りになれようか(いや、できない) 」

べき 」=「とても嬉しいにちがいない」… べき 」=「将来の幸せも遥かに続くにちがいない」… べき も」=「より所のない気がしてしまうはずなのも」…

、というのが二大パターンといえる。

当然

推量

可能

推量

意志

当然

普通だと漢字で

解答

①和歌の

4

12

第1講  『とりかへばや物語』

P OINT

書くところ は和歌全体がす 和歌の解釈として 『泣く』泣く出発する の二つの意味が掛かってい センター古文における「和 義語の性質を利用したもの。一方が自然風物 (例) 掛 ➡ 詞 1 掛(懸

(例)あきつしま➡大和

2 縁 語(えんご (例)なぎさ➡寄る➡波 3 枕 詞(まくらことば

五音で、特に訳さない。

や複雑なイメージをもたらす技法。

ま つ ︷ 待 つ (心情)

) 詞 (かけことば

松 (自然風物) ) =和歌の中のある語から連想される (=縁のある) 語を用いて

) =一つの語に二つの意味を掛けて、意味 ) =ある特定の語を導き出すために、その語の上に置かれる語句。基本的に

5 。

ベスト3!

。しかし、

解答

5

13

P OINT

問 なっているよう 肢が絞れたりする場 する。 解釈問題の解法 傍線部解釈問題は、必ず品詞分解を 文では、助動詞の意味と訳がポイントに ①「文法的判断」 、②「単語的判断」 、の二 ことが大切になる。 ここでは、 「いづかた/に/身/を/たぐへ/ 別れ/を」と品詞分解した後、助動詞「まし」に注目する。 センター古文では「まし」の意味の中でも事

れるので、まずは「反実仮想」のパターンをまとめてみよう。

4 センター試

実 の 反 対を 仮 定して

まし /とどまる/も/出づる/も/ともに/惜しき/

にある。一

想 像する「反実仮想」がよく出題さ

14

第1講  『とりかへばや物語』

P OINT

「どちらに~しようか」 となる

「反実仮想

ましか ませ 未然形 =仮に~だったと たら~だったろう 次に、右記のような「反実仮想」の形では ちな意志・希望」を表すことが重要。 普通「まし」は反実仮想で用いられる場合が多い ちな意志・希望」の意になっている。その場合の訳は「 「いづかたに」 と呼応して、 ちなみに 消去してOK。残った つかめれば、正解は 「惜しき」の主体さえつかめば正解できる。 せ

ば~ 1 と 2 は「どこに出て行くのかもわからない」という部分が不要な付け 5 と 6 では形容詞「惜しき」の主体がこの歌の詠み手である妹君であること まし ※「ましか」 「ませ」は ※「せ」は過去の助動詞「き

6 になる。

和歌は基本的に一人称

であり、詠み手の感情や意志を表すものなので、

そこで選択肢は

ここでは疑問の意の 5 と 6 に絞る とができる。

解答

6

15

P OINT

問5 傍線部に ている内容に注 傍線部の前後に 「 て ・ ば (順接の接続助詞としては 「を」 傍線部 ここでは傍線部Cの直前に「~とおぼして た内容を検討する必要がある。 「やがてついでに渡し奉りて、我は一筋に思ひ置く事な = 「そのままよ 機会にお移し申し上げて、 私は一切の心配 ここでの「一筋に」の対象は のことを指す。したがって正解は「一切の俗縁を断った環境を作りたい」 また、Cの直前の「さるべき」という語に注目すると、 A B

5行目に「一筋に行ひ勤め侍るべき」とあるように「仏道修行」 「勤行

4 。

16

第1講  『とりかへばや物語』

P OINT

問6 内容合致問題の解法

猿ベキ という意になり、 というところも決め手 修行に専念したいという自己都

ていな 。 ていないので×。

1 選択肢の内容を要素に分け、その内容を本文の該当 していく。 2 その場合、基本的には読点「、 」で切って一要素とするが、 討していく。 3 各要素を本文と対照させながら○×を付けていくが、検討する優先 観的な事実関係」 a 主語・目的語や話の流れなどの事実関係の正誤。

ッ、 鹿ルベキ

2 と 3 は、 「老女房」への思いや

を優先させる。

ッ、 当然 りっぱだ

なので×。

1 「同性である娘のもと

さるべき=1 5 「役に立たない老女房」という

内容的なまとまりを優先

4 の「使いなれた老女 父宮の考えはあくまで自分

「消去法」

解答

させて検

で検討

「客

4

17

b 修辞法や 4  「心情に関する説 ○×の判断をしない。1 慎重に正誤を判断 て く。 【最初の段階では判断を保留する ・心情に関する説明…「不粋にも」 ・主観的な考え方…「人生の悲哀が伝わ ・表現の主観的解釈…「粗暴さが前面に出 ※内容合致問題の選択肢の内容は、古文全体のあらす で、他の問いを解くうえでのヒントとすることが出来る。 択肢をざっと読んで全体の流れをつかんでおくという手もある まず、本文全体の流れをたどろう。父宮 願いとしては、一途に仏 ちの将来への気がかりがその「ほだし(足手まとい) 」となっていた。し になり、大将の庇護下に入ることが決定 たので、娘たちと別れる寂しさはあ 道修行に専念できることになり、嬉しく思っている。こうした流れをつかんだ上 重要単 c

本文読解に先立ち、内容合致問題の選

18

第1講  『とりかへばや物語』

古文攻略のカギを握る

1 は「やむを 者だと思ってい その内容もおかしい にとってはかねて ら 残った 定し」 「娘たちとの別れに一抹の寂 てしまったことに心細さを感じながら」 と過去形でとらえているところもおかしいし い点も×。 以上のように の気持ちが

3 と 5 では、

3 より内容的に不足していること 選択肢を要素に分けて、 ○△×を付けて判断してい

4 は「しいて自分に言 3 はすべての要素に〇が付く

2 は「上の娘」と

3 では「気がかりであった娘たち

5 では「急に身辺がひっそりとし

5 は娘たちに対する吉野の宮

解答

3

19

 『

第1講

問3

問1

5

3

問4

1

6

問5

2

問2

4

問6

4 配点5/5/5/7

3

5/8/7/8

20

その日になりて、 く、中の君も、遅らか 具し聞こえてぞ出で給ふ。 さや、いかなるべき事にか」と おぼさるれど、父宮もあるべき様お てて、 「今は何しにかは、この庵をまた 帰り見給ふべき。みづからも 都 立ち出で 侍るべきならねば、これなむ対面 限りにて 侍るめ 。年ごろ去りがたきほだしとかかづ らひ聞こえて、後の世の勤めも、おのづから 懈怠し侍りつるを 今よりは、一筋に行ひ勤 め侍るべきなれば、いみじうなむうれしかる べき」とて、うち泣き給ひて、 行く末もはるけか べき別れには逢ひ見  『と

む事のいつとなきかな とて、 「今日はこといみすべしや」と 押し

第1講

その日になって、 はとてもすばらしく、中 つもりはない で、お連れ申 やはり、 「さあ、 どうかしら、 こ つらい気分にばかりおなりだが、父宮 計画なさって、 「 この庵にお戻りになれようか。私も京に出てい ありませんので、お目にかかるのもこれが最後でし の間、のがれられない束縛として関わり合い申し上げて のための仏道修行も、自然とおろそかにしていましたが、今 らは、ひたすら仏道修行のお勤めができますので、そのことが とてもうれしいにちがいない」と言ってお泣きになり 行く末も…=将来の幸せも遥かに続く ちがいないと思え

るあなたとの別れですが、またお逢いすることがいつかわか らないのが、つらいことです。 と言って、 「今日は不吉な言動を慎まなくてはね」と、

あなた(=女君)は

女君(=姉君)

が新居にお移りにな

、今となってはどうして

父宮が

21

のごひ隠し あふことを づべきかたもなくな と、袖を顔に押し当て 中の君、 いづかたに身をたぐへま づるもともに惜しき別れを 我は必ずしも、急ぎ出づべきならねど、 にしばしも立ち離れ聞こえては、いとよりど ころなき心地すべきもさる事に 、宮も、 「や

がてついでに渡し奉りて、我は一筋に思ひ置 く事なくて」とおぼ て、さるべき老いしら へる女房 どをだにとどめ給はず 出し立て させ給ふ。 大将殿、女君とは一つ御車にておはしま

す。出車十、童、下仕へまで引 続き、かば かりの草の庵より出で給ふ御有様ども、いと いかめしう勢ひ殊にて、さるべき殿上人、五

涙を拭いて あふことを ない別れでは、この く出て行くしかありませ と、 袖を顔に押し当てて、 お 中の君(=妹君)は、 いづかたに…=私はどちらに身を 妹君 ご自身は、別に急いで出発する気はないものの、姉 しの間も離れ申し上げては、たいそうより所のない気が まうはずなのも当然のことで、父宮も、 「このまま好機に乗 てお移し申し上げて、 私は全く心配のないかたちにしておこう」 とお思いになって、吉野に残るのがふさわしい老いた女房たち でさえもお残しにならず、 うか。この吉野に残っ 父様と

大将殿は、姉君と同じお車でいらっ ゃる。牛車十台、女の 童や下仕えなどまで後につづき このような質素な草庵から出 発なさるご様子としては、たいそう堂々として威勢があり、し

別れるのも、どちらもつらい別れです。

お父様に

姫たちとともに

お姉様と

お逢いできるの

別れるのも、ここを出てお

出発させなさった。

22

位、六位な 房も、縁に触れ つぞさぶらはせける 引きさがりて、出車三 さるべき人、御前などあま もは、 この御方のあかれにてぞ 宮は、いとうれしく、かひある様と こえ給ふ。名残なくかい澄む心地して、 くおぼさるれど、一筋に行ひ勤めさせ給ひけ れば、いみじくうれしく、年ごろおぼしつる 本意、かなひ出でぬる心地せさせ給ふ。

かるべき殿 女も、縁故を求 せていた。妹君のお れもしかるべき人や前駆 この 妹君 付きの女房として、こっそり 父宮はたいそう嬉しくて、待って 申し上げなさる。名残な さっぱりと いともお思いにな が、今までも仏道の修 いたので、 姫君たちの身の振り方 ついたことが 長年気にかけて られた本来の目的がかなえられた 分にもなられる。

※  

線は口語訳のポイントとなる箇所に引かれてい ます。自力で口語訳する時に 意して下さい。

線の箇所を特に注

とても嬉しく、

23

2 講 『

学習テーマ

と出典  『 松 まつらのみや 浦宮 物語』は 『 石 いわしみず 清水 物語』などの作品がある。 『松 えば『新古今和歌集』の撰者で有名 内容は弁少将氏忠を主人公として、そ り、平安時代の作品である『浜松中納言物語 今回のテーマ問題は問2と問5 特に問5では、贈答歌に込められた詠み手の心情 れる歌のことで、基本的に男女間での場合が多い。貴族 り、そこで教養や機知が試された。 贈答歌で気をつけることは、二つの歌に同じ言葉がある場合だ 使って二人がそれぞれの気持ちを伝えあっているところがポイントに ている。 「擬古物語」とい

問1 ア「あぢきなさ」

ぎ こ 古 物語といわれるものの

定 さだいえ 家 説が有力。藤原定家とい

住 すみよし 吉 物語』

問題編 10 ページ

24

第2講  『松浦宮物語』

 「あぢきなさ」は いる選択肢がない。そ いては、単語の訳はゴロ通 許容し、文法的な解釈や文脈判  「あぢきなし」というのは「行き  「やがて」はゴロにもあるように、 「そのまま」と「すぐ」の二つの意 うした複数の意味を持つ単語が出題され、文脈でどの意味なのかを判断させる は「やがて」の後に「その浦に身をとどめて」とあるのがヒントで、状態の継続 「やりきれなさ」が最も近い。  「なかなか」は超重要単語。ゴロ通りの意味の イ「なかなか」 なかなか

ウ「やがて」 矢が 的中、

ア ッ、 磁気なし

金 かえって

そのまま

バンド、

こない

すぐ 死んだ

つまらない それに近いニュアンス

なかなか=かえって

3 の「もどかしさ」も近いが、焦っている

やがて=1そのまま

2すぐ

あぢきなし=

5 「かえって」が正解。

単語のニュアンスをとらえ

。センター古文の解釈

センター試験ではこ

4 「そのまま」

。ここで

2 の

25

P OINT

でないと文 まず「れ」のほう 身・尊敬・可能・自発 連用形だ。この時点で 詞の未然 か四段動詞の已然形 残った四つの選択肢はいずれも助 助動詞「る・らる」の四つの意味 1 受身 =~される。  「AにBされる」という形で「~に」にあたるもの 2 尊敬 =~なさる。お~になる。 尊敬に値する人物が主語になっている場合。ただし、主語は 3 可能 =~できる。 基本的に下に打消語( 「ず」など)を伴うが、鎌倉時代以降は単独 4 自発 = (自然と) ~する。 上に「思ふ」 「しのぶ」など、気持ちに関係する心情語がある場合。この「 らる」の最大のポイント。 問2

3 と 6 が×になる。

ちなみに「れ」が完了の助

解答

2

5

4

26

第2講  『松浦宮物語』

さて、こ 間違ってはい 隠されている本当の ことを『朝廷』がお許 休む 許されないとい は 2 とわかる。 一方の「ね」だが、こ は 「ね」は打消の助動詞「ず」の已然形だ 「えゆるされたまはねど」  「ね」の識別はややマイナーで、 「ぬ」の識別のほうが頻出す とめて覚えておこう。

え ー 、 ず っと できない

上に副詞「え」を伴って「え~ね」 で 「お許しを得ることができたわけではないけ

の?

え~(下に打消・反語を伴って)=~することができない。

。よく読むと、ここ

と訳す。

この場合、

27

P OINT

P OINT

「ぬ」と「 問3 「前書き」や「注」は必ず参照する! センター古文で、 「前書き」や 注 に登場人物の説明や、本文までの がある場合、 「ぬ」 「ね」 ここでは「ね/ど」となっているが、 「ど」は已 形=「~ない」とわかる。

1 打消の助動詞「ず」 2 完了の助動詞「ぬ」の終止形 1 打消の助動詞「ず」の已然形= 「~な 2 完了の助動詞「ぬ」の命令形= 「~しろ」

必ず「前書き」や「注」を参照して本文読解の手がかりとする。

「ねど」=「ないけれど」と覚えておくのがベストだ

➡連用形+ 「ね」

➡未然形+ 「ね」

➡連用形+ 「ぬ」

➡未然形+ 「ぬ」

解答

2

28

第2講  『松浦宮物語』

もう一人は 注が付いているので、混乱しな まず、前書きを読むとわかるよう 備の皇女」に思いを寄せ、歌を交し合 内してしまう。まずはこの関係を押さえるこ 次に本文に入ると、 弁の少将に遣唐副使の宣旨 と「明日香の皇女」が、 「いみじきことにおぼせど ここを押さえることが二つ目のポイントだ。 さて、問題の傍線部Aだが、ここでは「 まず、先ほども触れたように、 「大将と明日香 皇女」にとって、 きない事態は、 「息子の弁の君が遣唐副使に選ばれてしまったこと」であ に書かれている。一方「弁の君」 とっても血の涙を流すくらいの悲しい事態 にかなふわざにしあらねば」= どちらも思い通りになるものではないので」 、 づれも」

→ 人物関係など 読速解しなければ 今回、ちょっとやや

というのは何と何のことなのかを押さえるポイント。

弁の君が思いを寄せる 「神

「皇女」が二人いる

『誰にとって』

だ。この二人の皇女が2行

こと。一人は

心にかなふわざにしあらねば」なのかと、

弁の君の母である「明

「い

29

になってし この流れがわ 「弁の君」となって 選択肢 は「皇女を入内させる」と せること」も、弁の君の望み 次のポイントとして、 ので、これが一つ目。続いて本文冒頭部分で も皇女も「とどめむちからなし」とあるように、 の君の思い通りにならない二つ目のものだ。選択肢 ここでは、自分が唐の旅に出てしまうことで、かえって入内した皇 なって、皇女への思いを断ち切るこ ができる もしれないという弁の君 の内容が選択肢の「うれしい」ものに該当する。 次に傍線部Cは、直前の「親たち~見聞かざらむことを」のところがつかめれ ていこう 問4

。まず、問題の前書きに「神奈備の皇女 まず傍線部Bは、直前の「朝夕~漕ぎ離れむも」までの内容がつ

2 は、 「遣唐使そのもの

弁の君の思い通りにならない「いづ

1 ・ 2 ・ 3 から正解を選ぶこと

傍線部Aの

1 がこの二つを説明しているので正解。

ということ

4 ・ 5 ・ 6 が×になり、

解答

1

3

30

第2講  『松浦宮物語』

唐へ旅立 を表している。 後半も皇女に関する記 2 同様皇女に関する記述がな ない」とあるので×。これでは 問5 受験生の苦手な和歌を出題すると平均 る。選択肢も長く、難易度も高い。しかし和 つかむようにしたい。 aは出発する弁の君に対して神奈備の皇女が贈っ る。 「たちかへりみよ」の解釈がポイントで、 「無事に帰国 正解に一歩近づけたも同然だ らい単語が多いので、なんとか手がかりを探そう。 贈答歌の場合、共通する語があれば、その語が掛詞になっていたり、歌の 合が多い。 選択肢では

1 が以上の矛盾する弁

。bはその歌に対する返歌。さて内容はどうだろうか。こち

3 は「宮仕えにともなう 4 と 5 はどちらも「親たちが自分

2 は前半の「複雑な思

解答

1

31

ここでは は四段活用の自動詞 離れていても心を寄り の心が寄り添ってくれるな 消去法的には、aの歌で「入 気が付かなかったとしてもそれぞれ 「入内」も×だが、 「お気持ち もともに」とある点を読み落とさず、歌の大 bの解釈 まったく逆の方向性なので×。 2 のaは、皇女が弁の君を追って唐に行く、という内 た身」についてもこの歌では触れられていない。bの「 4 のaは、 とについて詠んでいること なるが、ここでは「唐から帰ってく 「たちかへりみよ」=「無事に帰国して、 また私と会ってください」 その意味で、 ている 1 のaは、

大きな間違い。

。aの「たぐふ

2 と同様に「入内」について言及していること自体が間違い。 5 のaの解釈も間違っているので×。また、bの「大海原に身を投げても」

共通する「

1 ・ 2 ・ 4 が落とせるが、それに

3 。

解答

3

32

第2講  『松浦宮物語』

 『松浦宮物語』解答欄

第2講

問3

問1

問6 理由説明 し、その部分に ない。その場合は、 宮の心情が書かれてい それを追っていくと、母 るかもわからないはかない身の いう意図からだとわかる。その説明 1 ・ 3 ・ 5 は、その会話部分で述べられている内容 しいが、 「息子の帰国まで自分が生きている くあひみぬ身とならば」とあり、 生きていられな であって、母宮一人とは言っていない。

1

2

問4

傍線部の後に理由が

5

1

問5

4

問2

3

問6

2 配点5/5/5/6

4 が正解。

4

7/7/8/7

、今回も傍線部Dの

2 はかなり紛らわ

解答

4

33

たえぬ思ひによろ らすに、明けむ年もろ べき遣唐副使になしたまふ 将も皇女もいみじきことにおぼ すぐれたるを選ばるるわざなれば、 ちからなし。弁の君ひとかたならず、血 をながせど、いづれも心にかなふわざ しあ らねば、皇女つひに参りたまひぬ。ときめき たまふこといみじきを見聞くに、いとどあぢ きなさまさりて、かくなむ。 おほかたは憂き目を見ずて ろこしの雲  『松

のはてにも入らましものを 朝夕の宮仕へにつけてたへ たき心をも、 なかなかひとかたに思ひ絶ゆ かり漕ぎ離れ むも、ひとつにはうれしけれど、親たちの気 色をはじめ、おはせむさまをだに見聞かざら

第2講

日夜を送っていると、来 唐副使に 秀な人物をお選びになることなので、 きない。弁の君の悲しみはひと通りでなく だったが、 退することも、弁の君にとっては のではないので、 宮中で きするにつけて、 このように歌を詠む。 おほかたは…=普通は、 んな辛い目にあわずに遠い唐土

も 母の明日香の皇女

弁の君が の雲海の奥深い果てにまで入っていくだろうも を私はいろ いろと辛い思いをすることだ。 弁の君は

御寵愛を受けてたいそう栄えていらっしゃることを見聞

弁の君を

朝夕の宮仕えにつけて耐えがたい気持ちも、かえっ

尽きない苦悩のうち 神奈備の皇女の入内をとどめることも、遣唐使

神奈備の皇女は

任命なさることになる宣旨が も、辛いことだとお思いになるが

弁の君は

ますますやりきれなさがつのって、

どちらも思いどおりになるも ついに入内なさってしまった。

父の 大将

34

むことを、 ほどにもなりぬ 式部大輔なる参議 を、大使にてつかはさ 世の博士 ・ 道々の人の集ま いとどしういどみならはすに、 ていたらぬ所なくかしこければ、帝 きものにおぼしめして、春、正下の加階 ふ。 今はと出で立ちて京を出づるに、たかきい やしき馬のはなむけす。夜すがら文つくりあ かして、出でなむとするに、いみじうしのび てたまへる 神奈備の皇女、 もろこしの千重の波間にたぐへやる心も

ともにたちかへりみよ 今はと参りたまひ ち、ひ 言葉 御な さけもなかりつるを心憂 と思ふに、 ほ折 過ぐ ずのたまへるを見るに、血の涙をなが

てすっぱり うれしいけれど れから先のご様子さ 辛く思ううちに、月日は 式部大輔である参議安倍の 遣わされる予定なので、次々と世 が集まって、 勉強させるのだが、この弁の少将は万事に ので、帝もすばらしい人物だとお思いになり、 五位下の位をお与えになる。 いよいよ出発ということで都を離れるときに 身分 問わず人々が集まって送別の宴を催す。一晩中詩を詠み明か て、 いざ出発しようというときに、 たいそう人目をお避けになっ て神奈備の皇女が贈られた歌は、 もろこしの…=千重の波間を隔てた唐土にまでも、私 心

をあなた(= かその私の心と一緒に無事帰国して、また私と会ってくださ い。

渡唐予定者の

弁の君

)に添ってついて行かせますから、どう

才能を試したり、一段と競争させ、

神奈備の皇女の

35

「帰りたまはむまでは、そなた 空を見む。 若き老いたるとなき浮かべる身の、遠き舟路 にさへ漕ぎ離れたまはむに、波風の心も知ら ず、たれもむなしくあひみぬ身とならば、や がてその浦に身をとどめて、あ つ領巾振り けむためしともなりなむ」 と出で立ちたまへば、大将、限りある宮仕へ

せど、使ひ まる人につけて 息の緒に君が心 大将は、 「難波の浦まで送らむ」 とのたまひしかど、母宮、 「限りあらむ神の誓ひにてこそ添はざら この国の境をだにいかでかは離れむ」 とのたまひて、去年より松浦の山に宮をつく りて、 け身をも投ぐがに

国に最も近い国の境だけでも、どうして離れましょうか、いや 私は唐の国を望む国境の松浦山から離れません」 とおっしゃって 去年から肥前の松浦の山に御殿を造って、 「 あの子 (=弁の君) が

今はもう、 あるお言葉を賜 が、やはり機会 逃 も、 弁の君は は人ごみに紛れて姿を消した て、 神奈備の皇女付きの女房 息の緒に…=私の命にあなたのお ださるなら、きっと航路も穏やかになり き分けて、無事に帰 てくるでしょう。 父の大将は、 「難波の浦まで見送りをしよう」 とおっしゃったが、母君は、 「衆生を救うために神仏がたてた誓願も限りがあるでしょうか ら、 息子の弁の君と

血の涙を流すほど切ない

一緒にはいられないけれども、せめて唐の

お帰りになるときまでは、 そちら (=

のもとに、次の歌を贈る。

神奈備の皇

弁の君は

恨めしいと思う

一言も情け

唐土 )

36

をえゆるさ 「すみたまはむ と添ひたまへれば、 しるしもなし。追ひ風 二十日のほどに大宰府に着

のほうの空 ない人間の身で ら、予期せぬ波や風 い身となったら、 というあの松浦佐用姫の前例 とおっしゃって出発なさったので 宮中の 勤めを、お許しを得ることが ど、 「 い。追い風までも間もなく吹いて 三月二十日ごろに大 お着きになった。

と、 母君に

母君の

お住みになるご様子だけでも見ておこう」

同行なさったので、道中は特別に変わった事件もな

私は そのままその浦に残って

37

3 講 『

学習テーマ

 『うなゐ松』は、 江 なゐ松』は非常にマイナー ルだ。 今回のテーマは数多い。 「呼応の 線部の解釈問題」 。 第3講ではあるが、そろそろ古文力を総合 もさることながら、制限時間内でどれくらい読解 得点的にも目標は「満点」におくようにしたい。 複数の意味を持つ単語が問われている場合、かなり慎重に検討していく必要が 問1 ア「あから目もせず」  「あから目」は複数の意味がある単語だ。

あ っ 空メ ール、

と出典

わき見

する間に

浮気 する

長 ちょう 嘯 しょう 子 し によって書かれた歌文

あからめ=1わき見

2浮気

個別のテーマ

。また、

問題編 18 ページ

38

第3講  『うなゐ松』

には「浮気 ちなみに「せず」 =「しないで」 。筆者 から目」の意味 はないので× イ「いかなる岩木もえたふまじく」  「岩木」という単語の意味を知ってい ず「えたふまじく」の箇所から考えてみよう 能を表す。 すでに一度出てきたものだが、もう一度確認して 多くは「え~ず」と打消の助動詞「ず」と呼応するが、ここで の連用形) 」 と呼応しているのがポイント。 「え~ず」 ならば 「~で じ」 訳がなければだめなので、単純に「~できない」と っている選択 4 のように「できそうにない」という形で「まじ」の訳が入っているものに絞る 解は 睡もしないで」 、

え ー 、 ず っと できない

1 と選べる。

5 の「周りの目も気にしない

の?

え~(下に打消・反語を伴って)=~することができない。

1 の「よそ見

1 ・ 3 ・ 5 は× 。 2 ・

ここは 「ま

3 の「一

39

P OINT

助動詞「ま 助動詞「まじ」は てそれを打ち消す形で覚  「べし」の七つの意味のゴ 「情がない のではない。ちなみに「岩木」は「石木」とも 情」のたとえで用いられる。 「たふ」は 堪ふ・耐ふ」で「こら 1 の「強情な」 、 センター古文でよく出る「呼応の副詞」をポイントとしてまとめておこ 打消推量 次に単語の意味だが、 「非情」と訳してある

推量

打消意志

意志

「感

不可能 「岩木 (いはき) 」 は 「岩石と木」 のことで、

2 の「頑強な」 、

可能 4 が正解。単語の意味からだと

か ゴロゴロ

打消当然

当然

⇔ 5 の「気丈な」はいずれも「岩木」の解釈がまちがっている。

禁止

命令

なので、基本的に「

打消適当 3 が迷うが、 「薄情」は「情が薄い」のであって

適当

なし

予定

であり、

40

第3講  『うなゐ松』

P OINT

主な呼応の も表す。こうした単語の意味を直接知らなくても、ここは直 「近いうちにお生みになるような赤ん坊」とあるので、意味は類  「ただならず」は一般に「普通でない」の意だが、 「

ウ「ただならず」 ただ の 奈良漬

え~打消 をさをさ~打消 な~ そ ➡禁止「~しないでください」 つやつ いと~打消

や ・

語 ➡不可能「~できな

さら に・ すべ て・ つ ゆ・ おほか

語 ➡「めったに~ない」 語 ➡部分否定「あまり~ない」

けで 妊娠する

ただならず=妊娠する

た・ あへ て・ たえて~打消

語 ➡全否定「まったく~な

解答

「妊娠している」意

1

1 。

4

1

41

P OINT

問2 助動詞「む (ん aは、重病の床にある筆者の娘が、梅の花を見て、 「この世の の世へ持っていく思い出はこの花なのだろうよ」と言っている箇所で bは、 下に 「こと」 が付いているので 「ん」 は連体形。見た目は終止形 ているところがポイントで、 この場合の 「ん」 は婉曲。 「言はまほしからんこ と訳す。

3 適当 「~するのがよい」 5 仮定 「~としたら、それは~」 4 勧誘 「~してはどうか」

6 婉曲 「~ような」

1 推量 「~だろう」 2 意志 「~しよう・したい」

水 推量・ 意志 滴 適当 か 勧誘 か 仮定 って

波線部の「

「む (ん) 」の下に体言があれば、 「む (ん) 」は連体形で、意味は「婉曲」だ

、 え 婉曲 ーん

「こそ~め」 の

➡三人称+ 「む (ん) 」 。 ➡ 「むに・むには・むは・むも・むこそ」 の形が多 ➡連体形の用法。 ➡一人称+ 「む (ん) 」 。 ➡二人称+ 「む (ん) 」 。 ➡ 二人称+ 「む (ん) 」 。 また、

「 む(ん)

」の下に体言や助詞が付く

42

第3講  『うなゐ松』

「なつかし」 などが入っ

「さすがに」

「あらぬ」

cは強意 父である筆者に してはどうですか」 dは「と」の前で終 「と」の前の「む (ん) 」は意 て、初桜の枝 花瓶に挿して置いたところ」とな 以上から正解は たかどうかであり、aとcは訳が絡むので判断は難しい つるものを

問3 あら/ず 重要単語である 「にほひ」 必ず重要な助動詞や助詞の確認をしよう。

これは 思ひ入れ/ る/顔/の/にほひ、/あらぬ/人/

傍線部は次のように品詞分解できる。

90%以上の確率で当たるパターンで、ここ 見せん

と、 花瓶に挿しおきたれば」=「早く、 娘が 2 。 ポイントとしては、パターン的に解けるbの「婉曲

。 なれ / ど、 /さすがに/なつかしから/ず/は/

見せよう

解答

と思っ

2

43

P OINT

この文の 助動詞「なり」 「なれ/ど」の部分 推定の助動詞「なり」 ないけれども」という訳も く、それだけで正解が選べてし 釈問題では、 語順は崩さず文法に忠実に ている場合は、そう簡単にはずすわけにもい いての検討は必ずするのが鉄則) 。 したがってこの問題は、 るともいえるので、 「なり」の識別についてまとめてお 「なり」の識別 1 断定の助動詞「なり」  (※選択肢

  「~だ・~である」と訳せる。接続は体言か連体形。 2 伝聞・推定の助動詞「なり」

3 や 4 の「あらぬ人なれど」の部分の訳し

「なり」が断定の助動詞なのか、推定の助動詞なの

。選択肢の

2 ・ 5 のように「ようだが 3 ・ 4 のように「思えないが

になってい

1 しかな

44

第3講  『うなゐ松』

伝聞は「 接続は終止形 動詞「なる」の   「成る」と漢字を当 4 ナリ活用の形容動詞の活 次に内容的な解説にうつろう。ここでは、 傍線 の内容は直前の 「 」 の中の内容だとわかる。 「 そして桜が見られないことの無念さが書かれている。そ の童」としている 次に重要単語の解釈として、 「あらぬ」は、 「意外だ」 「無関 3   「 ここでは

  「 と 4 「病人とは思えない」が×。 ま めると まず「思ひ入れたる」 対象の解釈から ては、

から

2 と 4 が消去されて、

1 「別人」 、

か なり」 「

― なり」全体で物事の状態・様子・ ― 体言である「人 に付いているので、 「なり

3 や、 「過去の思い出」としている

3 「以前と同じ人とは思えない」 、

― げ なり」 「

1 が正解として残る。ちなみに 「なつかしからずはあらず」 は 「心ひかれる」

― ら なり」となるものが多い。

5 は×。

5 「本人でない」が該当し、 3 と 5 が消去され、次に「あらぬ人」の解釈

なのは明らかだ。

2 「命のない人」

45

意の形容詞 にはいられない 懐かし 問4 傍線部Bは次のように品詞分 もし/たがひ/ 助詞「 」と「ぞ」はともに係助詞。 傍線部を直訳すると、 「もしも違ってしまうと困る」 安を感じている。選択肢の末尾の表現を見ると、不安を表し はいけない」 、 まへて亡骸を損なはでをさめてん」とある ころから、死後に自分が ので、両親を苦しめるとしている も書かれていないので×。正解は

アで覚えておこう。 もぞ もぞ すると困る

い 映画に

「我を

5 「心配になってきた」の三つ。 「心配」の内容としては、

心ひかれる

も / ぞ /する

。 もこそ

二重否定で

もこそ

1 だ。

4 は×。

なつかし=心ひかれる

「もぞ」

すると大変だ

5 の「極楽往生できなくなる」という表現は本文のどこに

の形で、悪い事態を予測して心配する。

となる。正

。 もぞ ・ もこそ=~すると困る。~すると大変だ。

1 のように「

1 「気がかりだ」 、

「もこそ」

解答

解答

4 「~て

とペ

1

1

46

第3講  『うなゐ松』

問5 第一段落 いたことを押さ いたもの) 」であり まず、 「はや咲きに 1 は、歌の「たれこめて」を「春霞がたちこめる」と解釈 るころが命の限りだと言われていた」という内容は本文 書 3 は「失望」が×。ま 「それを知らずに」以下の内容も本文には 4 は「満開になっていた」が 初桜」に矛盾するので×。 「若い自分も という衰えを嘆く気持ちも本文からは読み取れないので×。 5 は「暗い気持ちで」が×。娘が閉じ もっていたのは病気のた であり、 また この場面からは読み取れないので×。 で使われている 次に「春のゆくへも知らぬ間 れこめて春のゆくへも知らぬ間に待 こもり) 、 春の移り変わりも知らない間 「春のゆくへも知らぬ間に」というのは、病 てしまったよ、という意味だが ここでの がまもなく衰えて死ぬのだろうという気持ちを含ん

。ここで、見られそうにな

「うつろふ」というのは「娘の命」のこと

文末の助動詞「けり」

であり、自分の命

2 。

解答

2

47

問6 こう 。 1 は、 「もともと親し に矛盾するので×。 「 ない。 「娘の死後」以下に 2 は「とまどいながらも」が本文 うより、若くして亡くなったことを 3 は「書き付けを残していた」が×。辞世 者に口頭で言ったことである。したがって「 4 が正解。各要素とも本文と対照していけばわかる 5 は、 「少女のあどけなさが残っていた」が本文から 以下についても、本文には きりとは書かれていない。 いるのである。

内容合致問

解答

4

48

第3講  『うなゐ松』

 『

第3講

問3

問1

1

1

問4

4

1

問5

1

問2

2

問6

2 配点5/5/5/5

4

6/8/8/8

49

昨日といひ今日と 年も返りぬ。睦月は事 色異なる装ひども響きのの いとどなやましく、うたてあれ にて、 「いかにせん、いかにせん」 目もせず、つと添ひつつ嘆くよりほかの なし。軒端の梅の、かつ咲きそめたるを、女 の童折りて、 「君ならでは」 と見せたりしかば、 顔近く引き寄せ 「うれしげに 咲きたる花 かな。色よりも香こそあは なれ。 我はかく、 今日明日とおぼゆるを、げにこの世のほかの 思ひ出これならんかし。桜はまだしくて見ざ らんぞ口惜しき」など、思ひ入れたる顔 に ほひ、あらぬ人なれど、さすがになつかしか らずはあらず。 如月の中の五日にや、 いまはの際と見えし。 第3講  『う

娘の命が と 娘に 付き添って嘆くばかりである。軒端の梅が、一 きはじめたのを、召使の少女が折って、 「あなたで 見せようか、この梅の花を」と に引き寄せ、 「うれし うに咲いた花だこ 。色よりも香り しみじみと趣深い。私はこのように、今日明日の命だと思われ るが、本当にあの世へ持っていく思い出 この花であるのだろ うね。桜はまだ早くて見られない は残念だ」などと、花に思 いをめぐらせている 旧暦二月の十五日であろうか、 るうちに、いつのまにか う特別なことをするというこ 着替えて世間は騒ぎ立てているけ そう病気がちで、つらく悲しいので、 「どうしよう、 どうしよう」と れないで、 けれども、

娘の 顔の様子は、病気のためまるで別人だ 私は やはりいとしく思わずにはいられない。

昨日までか今日で終

娘に 見せたので、

娘の 臨終も近いと思われた。

私は 世間の喧騒を耳に入

娘は 顔の近く

娘 )はいっ

50

たれたれと 置かんと、手馴 もて遊びまで、数々 くそれそれにと配りつ ゐの近くあるを見やりて、 ごろはとかく苛み、遊びがたき くもむつかしくも、さぞ思ひつらめ 我なくは、 『いづちおはしけ 、あはれ 偲ぶ時もあらんかし」と言ふを、聞く人みな 肝魂も消え失せぬ。いかなる岩木もえたふま じく、上中下声をあげて等し 、さと泣きけ り。翁と母、手を捕らへて、呼び生け呼び生 け、 「なほ言はまほしか んことあらば、の たまへ。心のうち晴るけやらぬ 罪深し」な ど言へば、うちうなづき、 「 をば煙とな 給ふな。それなん心にかかる。先立ちて二人 の親に嘆かせたてまつらん心憂さ、黄泉路も やすくは行きやられじ。また病ひ少し緩みあ

それが気がかりです。先立って両親を嘆き悲しませ申し上げる のがつらくて、死出の旅路もたやすく行けそうにありません。

私は 誰々と人を 繰り返し呼びかけて正気を取り戻させて、 「もっと言いたいこ とがあるのなら、おっしゃいなさい。心の中がすっかり晴々と しないのは執着を残すことだから罪深いことです」などと言う と、 娘は 軽くうなずき、 「私を 残そうと、使い 物まであれこれと取 配った。長いこと邸に仕 見やって、冗談を言いながら 遊び相手にしていたのを、 嫌なこ さぞかし思っていただろう、でも私が へいらっしゃったのだろう、ああ寂しいこ あるだろうね」と 心も消え失せてしまった。岩や木 こらえられそうになく、身分の高い人も低い人もみな同 に、わっと泣いた。私と母(=

娘が 言うのを、聞いている人はみな悲しみで

火葬にして

私の妻

のようなどんな非情な人

)は、

煙としてくださるな。

娘の 手を取って、

娘の 形見でも

娘が

も、

51

る折々は、 ず成りぬると、 近きほどに生ませ給 にをかしからん顔つき 残り多かる。さならでは何 らん。かまへて亡骸を損な で もしたがひもぞする」とうしろめた 「さればよ、心やすくおぼせ。この山の は出ださじ。塵灰ともなさで、つねに君だち 具して遊ばしつる挙白堂のそこそこに葬るべ し。翁、物学びうち休むかたなれば、なくて もわが傍らは離れじ。 苔の下にもさ思ひ給へ。 遺言ゆめたがへじ」 と誓ひ言へば、 喜びて、 「願

ひ、今は満ちぬ」と手を合はす。ものなど言 ひ止みて、つゆまどろみ入りたるに、いささ か気色直り 蘇りぬる心地 ながら、なほ頼 むべきものにはあらず。 四、 五日ありて、初桜の面白きを人のもと

また病が少 それを詠み残さ もっていらっしゃっ の、すばらしくかわいら てしまうことが、いよいよ心 残すことがあるでしょうか。必ず ま墓におさめてください。もし いけない」といかにも気がかりな様子であ 安心していなさい。亡骸をこの山の外へは出す て塵や灰とすることなく、いつも れて遊んでいた挙白堂のど そこに埋葬しよう。私が学 たり休んだりする所なので、この私のそばを離れないだろう 死後の草葉の陰 そむくまい」と 今となってかなった」と手を合わす。

やめて、ちょっと眠 に落ちたところ、少し病状も持ち直して 回復するような気持ちがするものの、やはり期待できるも で はない。

にもそのように思っていなさい。遺言に決して 私が娘に

誓って言うと、

私の遺志と

あなたが

娘は ものなどを言うのを

娘は 喜んで、 「願いが、

子どもたちを引き連

異なることもあると

52

よりおこせ のを見せんと、 ながめて、 「はや咲 知らぬ間に」と、言の しをとどめ、はかなき筆 れなるこ をのみ書きおけるは 見にも見よとなるべし。つひに弥生 日、浦島が子の箱開けしくやしさ、何に ん。遺言たがへず、かの堂のうちにをさめ、 跡とふわざなど営むを とまりて見る老いの 命、返す返すつれなし。

四、 五日 きたので、 瓶に挿して置いたと いたことよ。病気の め と、一つ一つの言葉にも懐か ちょっとした筆の気まぐれに書い ことばかり書き残しているのは、 見てほしいということな だろう。ついに 娘は亡くなって は、何にたとえよう 。 堂の中におさめ、死後を弔う法事などを営む を、この どまってそれを見る年老いた命は、かえすがえすも思うに任 ないものである。

娘が 早く見たがって

浦島の子が玉手箱を開けた時のような悔しさ

娘の 遺言を違えることなく、あの挙白

娘は ちょっとながめて、

この先

長い世の形見としても

53

4 講 『

学習テーマ

センター古文の最大の 同時に紀行文の作者でもある。 を識別することは超ー大切なので、ここで完 詞」の知識をまとめておいた。和歌はセンター頻 会を多くしておこう。その意味では、 『百人一首』 問1 近世の文章が出題されると、中古や中世とは違う傾向の単 語というよりも「文脈に応じた意味をとらえて訳す」という視点 で、注意を要する。 ア「ことかたに」 ここでの「ことかた」に漢字を当 ると は 4 「違う場所に行こう」 。 「ことかたに」の下に「行かむ」が省略されている。 まれたのが レベルの文章ではない。 今回のテーマ問題は問4

と出典

本 もとおりのりなが 居宣長

を筆頭とする「国学者」だ

。文法問題だが、 焦点は

め 目路 の橋』という作品自体はマイナ じ

「異方」

「 『たまへ』の識別」

となる。つまり「異なる方角」ということで、正解

菅 す が え ま す み 江真澄

も江戸時代の国学者であり

にある。二種類の「たまへ」

。その路線で最も好

問題編 28 ページ

54

第4講  『来目路の橋』

P OINT

「こと」と  「こと」には、 味をもつ「言」と、 「異 「言」

イ「なづさひて」

「異」

こと わざ

こと ざま・ こと やう=

こと ごころ

こと なり

こと のは= =

こと だま= =

こと とふ=

こと うけ=

こと あげ=

言 霊 言 の葉=1言葉。

言 挙げ=言葉に出してはっきり言うこと 3訪 =古代、言葉に宿っていると信じられていた 2和歌。 言 承け=承諾すること。 言 とふ=1ものを言う。

1「事」 2質問する。

異 業

異 様

異 心

異 なり=1他とは違っている。 =1浮気心。 2余計な考え。

、 2「言」

2格別だ。

=別の行い。

=普通と違った様子。

、 3「異」

の字が当たる。特に

55

P OINT

なづさフ これはゴロで一発 ウ「わがからに」  「わが」 は 「我 (吾) が 次に「から」の意味が問題。こ の意で、正解は 問2 和歌の修辞法としてここでは枕詞・縁語・ 掛詞は、 P

序詞 (じょことば) (例)あしひきの山鳥の尾のしだり尾の➡長長し

序 詞(じょことば

ナに 慣れ親しむ

13のポイントを参照してもらうとして、 ここでは新

4 「私ゆえに」 。 ) =枕詞同様、ある特定の語を導き出すために、その語の上に置 だし枕詞ほど固定的ではなく、作者の創作によるところが大きい。 七音以上。次の例は、 「長長し」という語を導くための序詞の例。

なづさふ=慣

2 「馴れ親しんで」 。

解答

4

2 か 4 に絞れる。

2

4

56

第4講  『来目路の橋』

問いにも がポイントで、 ⓐは「ねもごろ」 問3 和歌の解釈問題は受験生の苦手とするところだ も帰れ」の部分の解釈だ。 「帰れ」というのは命令形なので、 帰 こい と一 と 5 の「帰って来てほしい」がそれにあたっている。 ように「帰って来て、~なろう」という訳は間違ってい ので× 次に下句の解釈だが、 だから」となっているが、 句末の「とはして」は 思って」となっている 選択肢 ⓑは「あさからず」の の麻ぎぬ」になっている 以下、正解として選んだ 結び付く。ⓓは「めやすう」の

3 と 5 の「夏野の草の」との

「あさ」が「麻ぎぬ」の「

1 が正解。

5 が正解と決まる。 5 の確認をしていこう。ⓒは「ふかき 「め」が「網の目」の「目」と掛詞

1 は「馴れた私の家をすみかと思って」 、

5 のように順接の「だから」とは訳せないので×。 「と

2 と 4 の「帰って来ることになろう」や

「ね」を「根」と見

になっている。

5 は「馴れた私の家がすみかなの

と取れるので、 「木曾

。選択肢では

解答

解答

ところから、

3 の

1

5

1

57

P OINT

問4 「敬語」問 二種類の「たま  「たまへ」という形に 1 ハ行四段動詞の「たまふ たまは/たまひ/たまふ/た ハ行下二段動詞の「たまふ」の未 ※ちなみに、右記の活用を見ればわかるように、 「 は・ にしかなく、また「たまふる・たまふれ」の形は下二段活用にし 言える。 ◦たま は ・たま 2 簡単にまとめると以下のようになる。 たまへ たま へ

◦たま

ふ る ・たま

/ たまへ

已然形・命令形=尊敬語(四段)

未然形・連用形=謙譲語(下二段)

ひ ・たま

ふ =四段活用=尊敬 ふれ =下二段活用=謙譲

/〇/たまふる/たまふれ/〇

たまへ

/ たまへ

58

第4講  『来目路の橋』

P OINT

これをゴロ 以上の「たまへ」の まとめてみよう。 「たまへらむ」という形は 「たまへ」の下に「らむ」が付いた場合 「たまへ/ら/む」と切れ、

「 は ・ ひ ・ ふ

傍線部Bの「たまへらむ」は、 ~になる・~なさる」の意で用いられている

尊 たまへ/ら/ ※「たまふらむ」は、 「たまふ」+「らむ」 。 たまふ=ハ行四段動詞の「たまふ」の終止形➡尊敬 らむ=現在推量の助動詞「らむ」の終止形ないしは連体形

敬 (四段)

」は 尊敬 、 「 ふる ・ ふれ 」

む ︷

たまへ ら =完了の助動詞「り」の未然形 む =推量の助動詞「む」の終止形ないしは連体形

=ハ行四段活用動詞の「たまふ」の已然形(

。正解は

謙譲 、 「 たまへ

2 。

「たまへ」は四段活用の補助動詞として「お

」で悩め!

解答

2

59

問5 スタートであり 的に考えていこう。 1 の「みづはさしたる」 いた姿) 」というのは直前 ではないので×。 次に、 かの言葉であるのは確か 引き続き読ん らむ」に対する返事であることがわかる。ま (私が) れにこそあらめ」 と 涙をさきだてて つまり、 「私」が「またお伺いしますよ」と言ったのに対して、政員の母が 死ぬかわからないので、 今日が最後のお別れです」と答えた形になっている。こ と いへば、 (政員の母が)

会話や引用

「ふたたびとひ侍らむ」

2 の「ふたたびとひ侍らむ」だが、こ

「またとのたまへれど、老いたり。かく、ほけほけしうなり

16行目にあるが、注を見

16行目にあり、直後に「といへば」と

ここは、選択肢

60

第4講  『来目路の橋』

たたびとひ しうなりては」 葉としているのは、先 旅路を」から「さぞやおぼ て「早く旅を終えてご両親の元 ない。 1 の「梅雨に入った」と「旅を続けられなくなった 月雨のはれなむ頃ほひ」となっている。また作者が を続けられなく った」からではない。次に 本文では可児永通自らが自宅に滞在してくださいと言ってき まる日が多かった」というのも× 残りの選択肢は特に問題ない で、 「合致しないもの」としては、 残った 問6

内容不合致問題

5 だが、確認すると「

。例によって要素に分けて消去法で考えてい

4 も×になる。

3 の「可児永通の家に滞在するつもりで」とあるのが×。

2 と 3 が×。さら

1 と 3 でOKだ。

18行目から始まる「長き

解答

解答

1 ・ 3

5

61

 『

第4講

問3

問1

1

4

問4

2

2

問5

4

問2

5

問6

5 配点5/5/5/6

1 3

※問6は順不同

7/6/6/5・ 5

62

古きところどころ まく、はた、名だたる と、このもかのもに馳せめ 五月雨のはれなむ頃ほひ、この 筑摩の郡に来て、むかしかたらひし とへば、世をはやうさりてなきが多かり ば、 ありつるひとりふたりにこととひかはし いざ、ことかたにおもふ折しも、可児永通て ふ医師の、あが宿に、たびごろもうらぶれや すめよなど、 夏野の草のねもごろにいへれば、 いざ、 ひと日ふつかもありなむと思ふほどに、 木曾の麻ぎぬあさからず、諏訪の海のふかき なさけに、なにくれと、引く網のめやすう馴 れむつび、ここらの友どちの円居に、かたら ひなづさひて たびの空のくもらはしきここ ろもなう、月日のうつるもしらぬに ふる里 第4講  『来

諸国の古い神社に 名所をすみずみまで見た 夏、梅雨も終わろうとする時 て来て、昔仲のよかった友人を訪 た人が多かったので、生きている一人 違う場所に行こうと思っていた矢先に、 可 私の家に旅の疲れを休めに滞在してくださいな 夏草のよう 重ねて親切に言ってくれたので、それ 日も泊めてもらおうかと思っていた に、木曽の麻ぎぬ に浅くはない、諏訪の湖のように深い親切なもてなしに、何 につけて くの友達の親しい集まりに、話がはずみ馴れ親しんで 旅の空 の憂鬱な気分もなくて、月日 たつのもわからなかったが、そ のうちに故郷のことがしきりに気にかかって、まだ見ていない 場所に心残りはあるものの、この土地への未練はい さら言う に及ばず、幼い子供や、軒下の敷石で餌をつつく鶏や、門口

漁師の引く網の目のように心安く馴れ親しんで、多

63

来のたよりをぞまつ 政員が家にとへば、あるじの母 む、みづ はさしたる姿して出でたちけるに ふたたび

のかたしき 心ひけど、 この をさなきわらはべ、 犬すらも、朝夕目馴れ りければ、しかすがに、別 心ぐるしう、むねつとふたがる 水無月のつごもりの日、本洗馬の なむと欲りするに、いましばと止めて、 里の人び 、うまのはなむけして、とりどり に歌ながめてわれに贈りける。宿のぬし可児 永通、 行く旅をめぐりも帰 この里の馴れ わ

がやを住処とはして あさゆふ、こととひむつびたる政員、 別れては雲路はるかにへだつ も雁の往

寝そべる犬 こうに怪しみ見 ますます心苦 くな 六月の三十日、本洗馬 く居てください、と引きとめ るしにと、あれこれ歌を詠んで私 人の可児永通の歌は、 行く旅を…=方々を旅してまわった後 帰って来てほしい。馴れたわたしの家を自分の て。 毎日、親しく話し合った政員の歌は、 別れては…=お別れした後は、たとえどんなに遠く隔た ていようとも、雁の往来に託してでも、あなたから お便り を心待ちにしています。 政員の家を訪ねたところ、主人(= で出て来られたが、 またと こんなに老いぼれてしまっては、明日にも消えようとする か

あなたは

おっしゃいますが、私はもう年老いた身です。

私が 、またお伺いしますよ、と言ったら、

私を 見馴れてい

政員 )の母が年老いた姿

64

とひ侍らむ わが身すでに老 なりては、ゆふべの ば、けふをかぎりの別 さきだてて、長き旅路をは にまみえてあれ。われだに、ひ と思へば、さぞやおぼしてむと涙に まぜて、 わが子をおもふ如にい けるに がははの袖もちなでてわがからに泣きし心を わすらえぬかも」と誦し いよよ親坐す国 の恋しう、いかなる宿世にや、かく人の親の 心の闇におもひたまへらむと、 涙をとどめて、 いかなれば老いの涙のわが袖にかかるな

さけをえやは忘れむ

ない命です 涙を浮かべ、長 面なされよ。私 さ ろうなあと思うくらいで とそうお思いでしょう、と、 子を案じるように言ったので、 の衣の袖をとって撫でさすり、私ゆえ お気持ちを忘れることは きませんよ」と た。 旅立ってみると 恋しく、いったいどんな前世の因縁で、親というも でも、 ものの区別もつかない闇夜のようにわが子のことを心配 して くださるのかと、 だ。 いかなれば…=いったい老いた

て 、私の衣の袖に涙を注ぎ けてくださ ようなこんな愛情 を、どうして忘れることができようか、 や、とても忘れる ことはできない。

、なおいっそう両親のいらっしゃる故郷が

こみ上げてくる

あなたが

あなたのご両親は 私も 「わがははの…=母上が私

辛い一人旅をなさっ

両親が私のことを心配し

涙を押さえて、こう詠ん

あなたの

、なおのこ

ご両親に対

65

5 講 『

学習テーマ

本に戻り、藩校で国学を教 今回のテーマは「る」の識別と この問題集は「易→難」の順に問題を配 の中でも最も難易度の高い問題を三つ並べた ないと次のステップへと進めないの 覚悟してほ 1講からの総復習をここでやった上で、次の講へと センター古文を攻略するため は、 「単語+文法」の 点が取れるに過ぎない。残りの半分は、 「速くて正確な読解 握」 「選択肢を比較し、ポイントをつかんで解答する力」 ど、 問題集と平行して、 『古文単語ゴロゴ』や『古文文法ゴロゴ』をやっ こで古文の学習に真剣に正面から立ち向かってほしい。 とも」のまとめだ

問1

中 なかじまひろたり 島広足

と出典 は、江戸末期の国学者

本 もとおりのりなが 居宣長

そう考えると、この

の養子である本居

間違えた問題の復習はもちろんのこと、第

次の第6講から、いよいよセンター古文

第5講を

大 おおひら 平 の門人。晩年は故郷の

20分で満点取れる力が

もう一度こ

問題編 34 ページ

66

第5講  『うつせ貝』

ア「かかる 「かかる」は「 と思い惑っているの がて絶え入りてうつし て 3 が正解。 ウ「心落ちゐぬるままに」  「心落ちゐる」は、 「心が静まる・落ち着く」の意なの 、こ 1 とわかる。 文脈的には、舟酔いで気分が悪くなった女を男が誘って舟を降り、よう 流れから、 「舟酔いの気分が治まったので」という意であることはわかる。 4 の「決心」 、 きりしいていること) 」であっ イ「をか げなるを」 形容動詞「をかしげなり」は、形容詞 う代表的な意味以外に、文脈によって「すば ここでは女の様子を表している。 朝日に照らされて姿があらわになるのを恥ずか とをかしげなる」と表現しているので、

1 の 「生気をなくしている」

5 の「誠実さ」はいずれも文脈からはずれる。

4 の「かわいい様子」が最も適当。

。 「かかるさま

解答

2 の「納得」 、

3

3 の「真意」 、

4

1

67

問2  「る」の たどり着くのが a「さながらなる 助動詞「なり」の連体 b「 (雨を)さそへる」 (存続)の助動詞「り」の連体 c「降りしきる」の「る」は、 d「 (梢に)かかれる」は、四段動詞 e「醒むなる」は、 下二段動詞「醒む」の終止 この問題は、 「なり」の識別問題にもなっている。 「 動詞なら、 「醒むる(連体形)+なり」となるはず。ここは 「なり」が伝聞・推定の助動詞であると判断しよう。 f「多かる」の「る」は、 したがって正解は (存続)の助動詞「り」の連体形「る」 推定の助動詞「 り の連体形「なる」の一部

2 。 1 はeが×、

ク活用の形容詞「多し」の連体形「多かる」の活用語尾の一部

四段動詞「さそふ」の已然

四段動詞「降りしきる」の連体形活

3 はfが×、

4 はaが×、

5 はどちらも×だ。

解答

断定の

伝聞・

完了

完了

2

68

第5講  『うつせ貝』

P OINT

「る」 の識

れていることをつかむ

◦ ア 段 + る =四段動詞未然形+ 例: 「咲か+る」 「思は ◦ ウ 段 + る =上二段・下二段動詞連体形の一 例:上二段動詞連体形→「恨むる」 「 下二段動詞連体形→「見ゆる」 「経 ◦ エ 段 + る =四段動詞已然形 (命令形という説もある) 連体形 例: 「給へ+る」 「思へ+る」→完了 (存続) の助動 用するので、 「エ段+ら・り・る・れ」 だ、というふうに覚えておこう。 問3 理由説明の問題。女があわてて男のもとへやって来た理由は、 傍線部直 に述べられている。 「さるは」というのは、 「それというのは」の意なので、その直後から理由が われる場合が多い。

る (ただし、例外は除く) 。

の形の「ら・り・る・れ」は、完了 (存続) の助動詞「り

― u る 全体で一語

る (例外は除く) 。

69

理由説明問  「理由説明問題」 因果関係には、次の二 A原因→B結果 B結果→A理由説明(原因) 1は、 「已然形+ば」で原因を表し れている箇所や、 「連体形+に・を」で 所に答えやヒントがある。 2は、今回のように「なぜなら~だからだ」と ら展開する理由説明をつかめば答えがみつかる。 女は最初、下女を使って男に今夜も都合が悪くて会えない ろが、男からの手紙(=こなたよりの消息)を読んで女は気持ち その手紙の内容 要点は二点ある。まず 「今宵さへさはりあらむは ここでは、逢瀬を拒否してばかりいる女の愛情のほどを男が疑っている。 かくれて、世をものがれぬべし」の部分。ここでは、 男は女の前から姿を消し 以上の二点の手紙の内容から、女は驚いて屋敷を抜け出し、男のもとへ駆けつけ P OINT 1 2

70

第5講  『うつせ貝』

P OINT

内容を押さ 3 は、 「夜中にな ので、男の手紙はそ ところで、 さはりあらむは、心のほど 絞れる。 「む (ん) 」の仮定の用法 助動詞「む (ん) 」にはいくつも 意味が

む(ん ゴロでは次のように覚えよう。

むに むにハ

) + は

この問題はもう一つ大

にには

もこそ

ムハ ムも むも むこ

=仮定「~としたら、それは~」

4 。 1 ・ 2 ・ 5 は、状況説

っ そ り としたらそれは

「むは」に注目

。さきほどあげた「今

すると、選択肢は二つに

71

これを知 1 と 4 の二つであるこ のを読解するのが大 ころだ。 問4 問3に続いて理由説明問題。 どうかがポイント。男が女を連れて まず女の思いは、傍線部Bの前 「女 に述べられている。 しいということ 次に男の思いは、傍線部Bの直後「男は、年ごろ ントは、長年 がかなって女を連れて帰れることを こうしてみると、二人の気持ちは対照的といえる。 1 は、 「悪路を行くことがつらく」が×。また、 「道中の危険を気にしつつ」も 該当する記述がない。 ・ 女 =姫君と別れ、都を離れるのが そうした二人の心情をきちんと説明し 選択肢は ・ 男 =女と一緒に都を離れるのが

ポイントは、思いがけなくも突然都を離れた

嬉しい

悲しい

むは 」の解釈で

5 で、これが正解。

「~なら」

と仮定で訳

解答

ポイ

4

72

第5講  『うつせ貝』

2 は、女が泣 階ではまだ二人 「宮中を去る」 「生活の厳しさを気に 4 は、 まず「心外」が×。女 も×。男のほうの説明でも、 「 問5 和歌の解釈を踏 えた内容説明の問題 高得点をとるためには避けて通れない問題だ まず、和歌を解釈してみよう。その場合、 そして、ポイントになる助動詞や助詞、副詞などの ることで、意外なくらい簡単に選択肢が絞れる場合が多 り着ける。 まず、 形接続なので順接確定条件。 「生ひにけり」の「 り」はここでは過 三句目で切れる。 ので岩にも松は生えた とだなあ」と直訳でき 。 次に 3 は、

下の句

上の句

の、 「種しあれば」の「し」は強意の副助詞、 「ば」は接続助詞 だが、ここでは「恋ひをし恋ひば」の「恋ひば」が、上二段動詞「恋ふ」の未然 和歌の中の助動詞「けり」は過去ではなく、 「詠嘆」の意だ

「品詞分解」が絶対条件

であるのは、繰り返すまでもない。

。上の句は「種子がある

解答

5

73

P OINT

助詞「ば」 意の副助詞なの の仮定条件になって についてまとめておこ 接続助詞「ば」 「ど・ど 右の表中、センター試験で特に重要なものは、接続助詞「ば の用法だ。 る箇所に「ば」がある場合、 「已然形+ば」なのか「未然形+ば」なのかを必ず

接逆 「已然形+

確定条件 接順 「已然形+ば」 ① 原因・理由=~ので。~だから。 ② 単純接続=~すると。~したところ。 ③ 恒常条件=~するといつも

=~けれども。~が。

ど・ ども」

未然形+「

2 しかないことがわか

「 終

仮定条件 「未然形+ば」 = (もし) ~ならば。~だったら。

※ 止形+とも」 = (仮に) ~としても。 ※形容詞型活用のものには連用形に接続す る。

であること

傍線部中や解答の根拠とな

74

第5講  『うつせ貝』

以下は、 「もしひた なお「松」には「待 以上を踏まえて、選 分が女をひたすら思い続け 1 は、 「淡い恋心」 「互いに心変 え間違えているので×。 全体を直訳すると、 「荒磯の波に漂う貝殻は二枚を ようやく一緒になれたことの喜びが歌われている。 次にFの歌を検討すると、 「べし」は可能の意で、 「いかが~べき」で、 「どうして~でき 全体を直訳すると、 「二枚そろえたとしてもどうして当てにできよ 辺の貝殻はからっぽだ 聞いたので」となる。女としては、たとえ二人が なくて将来は当てにはできない、と応じている。  「うつせ貝」というのが何を意味しているかを知っている受験生はほとんどい と、 く、 「恋の成就」がポイント。 問6 まずEの歌の

「いもせ」は「妹背」で「夫婦」のこと

2 が正しいこ

2 の内容をチェックし、 4 は「辛抱強く待ち続ければ~待ち人 5 は、 「どんなに恋い慕っても」以下が×

「いかが」が反語の副詞

であることがポイント。 「いかが」を受ける助動詞

。また、二枚貝に男と女をたとえている。

3 は、全体的に和歌の内容をとら

解答

2

75

を見るとE い。 ポイントは、 んでいるのに対して、 と切り返している関係 選択肢を見ていくと、 また、Fの説明で「身よりのない」 2 は「理想の女性と暮らせる」という説明 はない我が身を」以下の説明が歌意にあわな 3 は、先ほどの歌の解釈に沿ってい 説明なので、 4 は「女と再会を果たせた」が たFの「都を遠く離れ 生活の寂しさ」と う説明も歌 5 はEの説明はOKだが、Fの「中身のない貝殻はもはや閉じ えに、 「二度と会えないのではないかという不安」も×。女は男 のであって、男と二度と会えない不安に駆られているわけではないの 以上から、保留しておいた

男のほうが、ようや

をつかめたかどうかだろう

1 の「無事に落ち合えた」という

3 が正解となる。

1 と同様に、第一段落の男女の状況の説明になってい

解答

3

76

第5講  『うつせ貝』

第 5講

問3

問1

 『うつ

4

3

問4

4

5

問5

1

問2

2

問6

2 配点5/5/5/6

3

7/7/7/8

77

「例もかうや に絶え入る折々あ とは聞け ど、今し にはかにかかるさま をいかに せむ」と思ひ惑はれて、 いみじうかなしき 、

かくてなほ、その とどおぼつか く思ひ るに、行きたがひて、彼方 をおこせたり。今宵もさはるよ つかひもなく、思ひしをれたるに、 るころ、かの女まどひ来たり。さ は たよりの消息に、 「今宵さへさはりあらむは 心のほどもおぼつかなし。今は立ち返るも、 はしたなる身になりぬれば、このままに、い づちもいづちも行きかくれて、世をものがれ ぬべし」など言ひつかはしつるに、驚きて、 わりなく忍び出でぬるなるべし。やがて絶 え入りてうつし心なし。もの思ひ騒ぎては、  『う

第5講

い旨を言うので、 とは聞いていたけれど、たった今突然このように気を失ってい るのをどうしたものだろうか」と途方に暮れずにはいられず、 ひどく悲しいので、神仏に祈りながら、 めて、薬湯などを飲ませたとこ 、

こうしてやはり、 そう気掛かりで思い悩ん なって、 初夜を過ぎるころ、あの女があわてて のは、こちら( て会えないならば、あなたの気持ち よくわか う故郷に戻るのも、中途半端な身になっ しまった ままどこかへ姿を消して、 俗世を捨ててしまおう (=出 などと書いて送ったので、 出てきたのだろう。 動揺し 、 「

女のほうから

女は ふだんもこのように時々気を失うことがある

下仕えの女を寄越した。今夜 男は 待つ甲斐もなく、がっかりしてい = 男 )からの手紙に、 「今夜までも都合が悪く

女は 驚いて、仕方なく人目を忍んで 女は そのまま気を失って意識がない。

女を しっかりと抱きし 女が やっとのことで意識を

男は いっ

男は

78

り。 「人や見つけむ」と思ふもいと恐ろしき に、雷さへおどろおどろしう鳴れば またも 「いかならむ」と女の心思ひやるに、我さへ いと苦しくて、胸を押さへつつ、何くれと慰 め暮らす。やうやう雨は晴れぬれど 風はな

神仏を念じ ませぬるに、か いとうれし。やうや づのことども語らふも かとふけゆく秋の夜、軒 の、戸口さへさながらなるに、 影もいつしか雲隠れて、雨をさそへ た寒く、うちしめりゆく虫の声々いとあ なり。 風わたる草のたも にあらそひて露散り

まがふ袖の上かな 明けゆく軒の雨そそきも い わびし 降 りしきるに、立ち出でむ空もなくて籠りを

心情を思いやると、自分までもひどく苦しくて、胸を押さえな がら、あれこれと てきたが 風はなおも激しいのに、 やはり人目もはばかられて、 夕暮れ時に出立した。粗末な車に乗って行くと、女は、前から

取り戻した 落ち着かせなが いつの間に ふけて で、戸口までもあらわに いつの間にか雲に隠れて、 雨 しんみりとした虫 声々がたいそ 風わたる…=風が吹きわたると草 かかるこ よ。 明けてゆく軒に雨が降りかかるのも、たいそうも 絶え間なく降り続ける中、出立できる空模様でもないの こもっていた。 たいそう恐ろしい上に、雷までも激しく鳴るので、また 「ど うだろう( それと先を争うように私(

= また驚いて気絶したりしないだろうか

男は 「人が見つけるかもしれない」と思うのも

女を 慰めて時を過ごす。しだいに雨はあがっ

= 男 )の袖にも涙がたいそう降り

) 」と女の

女の 心を

79

ほ激しきに たそかれ時より に乗りて行くに、女 のから、かく思ひかけ がれ出でぬるが、さすがに のうち、姫君の御方のみ恋ひし 泣かれぬ。男は、年ごろ 本意かな の名残のいと悪しき道を どり行く苦し かつは忘れつつ、ただ急ぎに急ぎて、夜中う ち過ぐるころ、もとの渚に来着きて、ありし 舟に移し乗するほど、さらに知る人なし。や がてさし下すに、いととく過ぎ行くもうれし くおぼゆ。川尻を離るれば、沖つ潮風荒まし う吹きて、波さえ高う立ち来るに、ならはぬ 人はましていと苦しげにて、いみじう思ひ惑 へるさまの心苦しければ、もろともに衣ひき かづきてうちふしをり。我が住む方もいつし か近づきぬる心地するに、明けゆく空の光に

男と 心を通わせ へと突然さまよ がら仕えていた邸や と泣いてしまった。一方 後のひどい悪路を迷いながら ら、ひたすら急いで、夜中を過ぎ 渚に到着して、もとの舟に女を移して つからなかった。すぐに河口を目指して舟 速く進み行くのも 沖の潮風が荒々しく吹いて、波までも高く打ち寄せ れていない いる様子がかわいそうなので、 横になっている。 た気がするところに、明け行く空の光に見ると、風情のある入 り江のほとりを漕いでいく。 渚に立っている多くの松の景色や、 その梢にかかっている葛の様子などが何とも言いようもなく美 しいので、 「あれをご覧なさい。種さえあれば、あのよ な荒 磯にも、育つ松はあるのですよ」などと

男は うれしいと思う。 やがて河口を離れると、 女は ましてひどく苦しそうで、本当に途方に暮れて

男は 自分が住むあたりもいつの間にか近づい

男は 一緒に着物を引きかぶって

男が 言うと、女も少し

80

のもの参れよ。ふし給ひて みは、いとど御 心地も悪しかんなるものを」など言ふ。あや しきまかなひを見も入れずうちふしたるを、 「舟の酔ひは、浜づらを歩くなむ、いととく

見れば、 お 渚に立てる松ど まなど、えもいはず へ。種しあれば、かか る松はありけるものを」な し頭もたげたり。朝日影のは でたる、苫のひまひまもはしたなき に、寝くたれ髪のいたう乱れたるを掻き つつ、恥づかしげにまぎらはしゐたるまみの いとをかしげなるを、 「今よりはかくて心の どかに見るべし」 と思ふもうれしきものから 「あとより漕ぎ来る舟は追ひ来る人にや」と、 なほ胸つぶらはしくおぼゆ。 からうじてなにが の浦に寄せぬ。 舟人 「朝

では、あれこれと考え続けることなどが多い だが、お互いに 気を紛らわせるようにして貝などを拾う。 荒磯の…=荒磯の波に揺れて漂ううつせ貝も二枚ともそ

頭を持ち上 屋の隙間隙間も 髪がひどく乱れてい らわしている目元がとて らはこう てゆっくりと見ら のの、 「後ろから漕いで来る舟は であろうか」と、 やはり心配で胸がつ やっとのことで何と いう浦に舟を寄せ 召し上がりなさい。寝てばかりいらっしゃっ 気分も悪いでしょうから」などと言 。 きもしないで横になって るのを くと、たいそう早く醒めるそ だから」と言って、 せきたてて舟を降りた。次第に気持ちが落ち着いてきたので、 人目につかない松の陰に座って、これまで ことや、月日 隔 てられて

女に会うのが

待ち遠しかったことなどを語る。心の中

女は 粗末な食事に見向 男は 「船酔いは、浜辺を歩

男が 、

男は 「これか

女は 寝起きの

女を 無理に

81

醒むなるも 降りぬ。やうや ぬ松陰に降りゐて、 しおぼつかなさなど語 まざま思ひ続くること も みに ぎらはして貝など拾ふ。 荒磯の波にたゆたふうつせ貝い

と言へば、女、 そな ぬるいもせもいかが頼むべき空し

ふる時もありけり

と聞きし浦の磯貝

ろっている もあるのだなぁ と詠むと、女は、 そなへぬる…=二枚 る貝殻のように、あなたと一 て先のことまで頼みにできましょ

82

第5講  『うつせ貝』

83

6 講 『

学習テーマ

と出典  『 兵 ひょうぶきょう 部卿 物語』 は、 鎌倉時代末 に影響を受けている作品で が再会する場面である。 今回のテーマ問題はなんと言っても で最頻出の問題だ。全部で七つある「に える。完全マスターを心がけよう。文法力が 問3で示した解法は、古文の心情説明問題を解く この解法を知っておけば、傍線部の近くに根拠を求 は、文章が長くて人物関係も複雑なので、読解す のが 内で高得点を取るためには 「解法テクニック」 をマスターす クは必ず頭に入れておいて欲しい。 問4で示した 「和歌の解釈の手順」 ただし、和歌の問題は例年難易度が非常に高いので、あまり時間をかけ過 れた時間内で出来る限り解いてみて、難問だと判断したら、極論すれば「捨て ありだ。

も同様にセンター古文を攻略する上では避けて通れないもの。

ぜ 察使 の君との悲恋をテーマとし ち

センターに限らず、全大学の文法問

仮に全体が読めない時でも、

問題編 44 ページ

84

第6講  『兵部卿物語』

釈問題の解法」に従 ア おろかならず思ふ ポイントに従って品詞分 ずは重要単語の形容動詞「おろ  「おろかならず」を「懸命だ」と訳してい 意ではないので×。 ていないので×。 助動詞を中心に文法的な整合性を確認すること。 助動詞「ず」の訳も問題ないので正しい。 いとよしよししくにほひやか り 品詞分解すると、 「いと/よしよししく/にほひやかなり 分けられ 「由々し」の連用形。この単語自体はあまりお目 かからないが、 「よしあり てほしいところ。 イ

オ ー 、 廊 下 掃除 いいかげん

問1 センター ようにいくつも

ひっかけの選択肢なので絶対に引っかからないよう

3 では「おろかなり」の意は表されているものの、

、この

未熟 者!

1 や、

4 は「並み一通り」

おろかなり

= 1いいかげんだ。2未熟だ。 2 ・ 5 で示されている意味は「おろかなり」の

「いいかげん」 、そして打消の

14でポイントにし

85

 「よしあり」は「 ほひやかなり」も、動 うちそばみおはする 品詞分解すると、 「うちそばみ/おはする」と 訳さなくてもいいこ が多いが、強いて訳す場合は 正解の あまり出てこ い単語だが漢字を当てはめて考えるとわかり ここでは文脈判断が大切。右大臣の姫君が「横を向いて」いる そむき」とあることからわかってほしい。正解は 問2  「に」の識別は全大学でNO1の出題率を誇っているものなので、絶対にマ 的な美しさを表す語 ウ

よ ー しアリ

日本 の フ ン つややかに美しい

2 が選べるが、さすがにこれだけで決めるのは危険。 「そ

んこ 風情がある

で、これに気がつけば正解

よしあり=風情

にほふ=つややかに美しい

2 。

3 しかない。

「ちょっと」

「うち」は動詞に付く接頭語。 と訳すことが多い。実はこれだけで

1 ・ 3 ・ 5 が該当する。次に「

解答

4

「にほふ」は視覚

3

特に

2

86

第6講  『兵部卿物語』

P OINT

「に」の識  「に」の識別の解 していくことにしよう。 1 完了の助動詞「ぬ」 連用形に付き、下に助動詞の 「なり」 と言

連用形 断定の助動詞「なり」の連用形 a 体言 ・連体形に付いて、 活用する。終止形に直してみて、 も・ぞ・なむ・や・か・こそ」が付いている場合が多い。 2

※「に」の下に助動詞「たり」 「けり」 「けむ」 き」 動詞「ぬ」の連用形! これをゴロでまとめてみよう。

に た 景 色 は完了!

+ 「に

完 了「ぬ

」 +

」用

け む ( け ん) ・

け り・ け る・

た ら・ た り・ た る・

き ・ し ・ し か

け め

け れ

た れ

(せ) き/し/しか/〇

〇/〇/けむ けむ/けめ/〇

(けら) 〇/けり/ける/けれ/〇

たら/たり/たり/たる/たれ/たれ

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連体形

体言

体言 ※ 「にや」 「にか」の下の「あらむ」 、 「にこ 試でよく問われる。 b 下に「あり」 「おはす・おはします」 「候ふ」 「侍り 連体形

+ に

「なり

断定

「なり

断定

+(助詞)…

も + なむ (なん) 」用 ぞ

」用

やかこそ

侍りなし

候ふ

あり おはす・おはします

下に「 ︸ 下に「

あらめ

あらむ

」などが省略されてい 」などが省略されている場合が多 。

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第6講  『兵部卿物語』

※ もともと断定 が文中で使われる 「 格助詞「に」 体言・連体形に付いて、活用しない ※ 接続助詞「に」との識別 大切。訳して 接続助詞、 「に」を「に」としか訳さないの 接続助詞「に」 連体形に付いて、活用しない。下 、 」がある場合が a 順接「~ので」 b 逆接「~のに」 c 単純接続 と・~ところ ※「~ので」 「~のに」 「~と・ところ」と訳せたら接続助詞! 3 4

に 」 おはす

アリ 侍 候 だ !

※ 「に」の下に「おはす あれば断定!

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5 形容動 物事の状態・様 副詞や助詞の一部 副詞「つひに」 「さらに」 「げに」などの「に」 。 助詞「だに」 「にしかな」などの「に」 。 複数に傍線(波線)が引かれている場合は、 「わかりやすいものから解 とcが確実なので、そこから解いていこう。 まずaを含む「にや」は、直前がラ変の連体形で、直後に「あらむ あるいは 6 形としては「死に」 「 ナ変動詞の連用形の一部 7

― 「 に 」の上「 ら

全体で一語の

か げ ら 」 形容動詞

往 い に」 「 去 い に」の三つしかないので、覚えておけば大丈夫。

― かに」 「

「きよ

「おぼろ

「みそ

― げに」 「

げ に」 ら に」 ︸

か に」

― らに」となる場合

一語の形容動詞

ここではa

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第6講  『兵部卿物語』

P OINT

係り結びの の下に係助詞「 は 4 ・ 5 の二択に絞られる。 けり」 を伴って使われ /き」の過去の助動詞「き めやかに」も形容動詞「しめやかなり」 と「状態・ 様子」に付けてみて、全体で一語 君の御前『に』控えていた」と、 問3 傍線部の「思ひ」というのは按察使の君の「物思い」 いる。ここでは、傍線部の直前に書かれている按察使の君 センター古文で登場人物の心情や何か 原因を問われ センター古文で登場人物の心情や何かの原因を問われた場合は、直前の が書かれていることが多い。特に、 「と・など」で受けられている場合は、そ 着目して解く。 あるとわかる。したがってこ ちなみに「~

か なり」となっている語は全体で一語

「に」をそのまま「に」と訳すので格助詞

このaが断定の

「にや」は であることも確認しておこう。最後のdは、

5 と決まる。

cは完了の助動詞「ぬ」の

とわかる。

「しめやかな状態 ・ 様子」

解答

5

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傍線部に「 問4 一見和歌の解釈問題のように見えるが、実は各選択肢で和 けでは正解は絞れない。だが、まずはとにかく和歌の解釈をして 和歌の解釈の手順 1 各句(五七五七七)に切って品詞分解する。 2 助動詞があれば必ずチェックする。 れている按察使 まず、 「とても」 まにて見え奉らん、い 姿を見せるのは恥ずかし 次に、 「かくても」が指 て 見とがめんか」が該当する。 「周囲 この二つの原因がその ま選択肢 1 以外の選択肢では、 内容に合致しているが、 の内容は、本文のどこにも書かれ いない。

4 の後半の「宮には自分の存在を隠し通さなけ 4 は前半の「宮が身分を偽っていた理由を突き止め

1 の内容となっているので、これが正解。

傍線部の手

解答

1

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第6講  『兵部卿物語』

3 人物関係や内 解釈問題でもポイン めるのが一番確実だ。 の文末が「~ているの ろう」 1 と 3 の 二択に絞れる。センター古文解法に 次に、 手前が「已然形+ば」の順接確定条件に 行前の「持たせ給へる筆にて墨をいと濃 塗 すぐに塗りつぶしてしまった」が合致しているこ が和歌中の「初霜も置きあへぬものを」の解釈とし や露 降りる」 、 「~あへず」は「~しきらない」 、 「 えておこう。 1 は「冷やかして詠んだ」は按察使の君のすることとは思えな 釈ですでに×にしているが、一応確認しておくと、 4 は「工夫」がおかしい。右大臣の姫君は自分で描いた菊の絵が下手だ つぶしたのであって、 「工夫」とは言えない。 これに該当する記述は本文中に見当たらない。 重要語句 4 気に ていない。

今回では、文末の「らん」

5 は「容色の衰え始めた女性の姿を連想して」とあるが

2 「宮仕えで気苦労が絶えない」は本文に書かれ

3 の「初霜もまだ降りないのに」

で、 「 2 ・ 4 ・ 5 が×になり、一

3 の「描いた白菊を姫君が

」の解釈

だ。和歌の2

解答

3

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問5 問3のポ 直前の会話や引 その会話や引用部分 この設問で問われて と差し過ぎたり」がヒント ので、童女の行為を「差し過ぎ ここまでの本文の流れを追うと、 そうとしている。1行前の「 『いと悪し 手な絵を自ら墨で塗り消したことであり、 そ そうした童女の行為は、姫君にしてみれば恥ずか 、なのである。このことが正しく説明されているの 1 の「按察使の君の様子が気の毒」 「長々と引き止めてし われている」 「自分が描いた絵のつたなさを恥ずかしく思っ 5 の「按察使の君の行動が不注意にすぎる」 「自分の女房として恥 ていないのでこれらは正解にならない。 問6 内容合致問題は選択肢を要素に分けて本文と照らし合わせて正誤の判断をし ンター古文の場合、選択肢の順番と本文の流れが連動していることが多いので、 とだ」 た」 、

になる。この姫君の会話は

「と」で受けられてい

「いと差し過ぎたり」=「まったく出過ぎたこ

4 。

2 の「見事な筆跡に宮が目を奪 3 の 「自らの教育が行き届かなかっ

解答

4

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第6講  『兵部卿物語』

第6講  『兵部卿物語』解答欄

問4

問1

けば本文の もなることもあ こで」以降の内容が本文に書か 段落に書かれている内容に合致する 内容が本文に書かれていないので×。 つ目の正解。

1 は前半が第一段落に 3 は、すべての要素が本文に

3

4

問5

2 は、 「侍従は、そのこ

3

4

問6

2

問2

1 5

5

問3

7/7/

ところだ。 4 は、 「侍従から知らされた 5 は、前半が本文最初と第四段落

4・ 4

問6の選択

1 配点5/5/5/6/7 ※問6は順不同

6 は、 「按察使の君を気に入り」以降

解答

1 ・ 5

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かくて過ぎゆくほ はなけれど、 おのづか 昼なども折々は渡らせ給う ぎなど、さまざまの御遊びども 使の君は宮の御姿をつくづくと見る 夜な夜なの月影に、さだかにはあらねど 人に違ふところなければ、 「世 かかるま で通ひたる人に似たる人もあるにや」と思ふ に、見慣るるままには、物のたまふ声、けは ひ、様体、みなその人なれば、あまり心ひと つに思ふも心もと くて、侍従にしかじかと 語り給へば、 「さればよ、我もいと不思議な ることども侍り。かのたびたびの御供に候ひ し蔵人とかや言ひし人、ここに候ひて、 と さら『宮の御乳母子なり』とて、人もおろか ならず思ふさまな 。昨日も内裏へ参らせ給 第6講  『兵

こうして月日が過 和らぐこともあるのであろう へ お通いになられて、碁を打ったり さまざまなお遊びをなさるの 、按察 よく見ると、昔夜ごとに月の光の下で、は 逢い見た人と違うところがない で、 「この世 どまでに るのであろうか」と思うが、 かおっしゃる声、 立ち居振る舞い、 姿かたちなど、 みなその の恋人)に違いないので、 右大臣の姫君に 収めて思い込むのも気がかりで、自分の乳母の娘にあた 侍従 にこれこれと事情をお話になると、 よ、 私にもとても不思議に思われることがたくさんございます。 以前 あのお方の た人が、こちらに参上して、わざわざ『自分は宮の御乳母の子

我が元へ

たびたびのお供にお仕えしていた蔵人とかいっ

傾くというわけではない

通ってきた人(昔の恋人)に似ている人もい

按察使の君は自分ひとりの

宮のお姿を

宮は 昼などにも時折

侍従は

兵部卿の宮の

見慣れるにつれて、何

「やっぱりそうです

お気持ちが

姫君の元

心の中に

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ふとて、出 の御文もて往に とて忙はしげなるさ 将は仮の御名にて、宮 や」と。 いとど恥づかしく悲しくて、 見つけられ奉りたらん時、いかがは はかなく聞かれんとこそ思ひしを、かか まにて見え奉らん、 いと恥づかしきことにも と、今さら苦しければ 宮おはします時はか しこうすべりつつ見え奉らじ すまふを、 「人

ある昼つかた、いとしめやか 、 「宮も 今朝より内裏におはしま ぬ」とて、人々、 御前にてうちとけつつ、戯れ遊び給ふ。姫君

もいかなることにかと とがめんか」と、こ れも苦しう、 「とても くても思ひは絶えぬ 身なりけり」と思ふには、例の、涙ぞまづこ ぼれぬる。

なって、 「それなら もまた心配で、 「いずれにしても悩みはつきないわが身である なあ」と思う つけて、

どもである りでなく思って ことで、 お出かけな て行ったお供の方も、 『 そうな様子でございましたが のお名前であって、実は宮でいら 言う。 聞いておられるだろうとばかり思っていたのに、このよ 様で 宮に お会い申し上げるのは、とてもきまりが悪いことよ」 と、今さらにつらいので、宮が まくその場をそっと抜け出しては にしよう 引き下がるが、 「 ことであろうかと それを聞いて、按察使の君は どうしようか。

宮の前から姿を消した私の行方は

私の様子を

宮に お見つけられ申し上げたような時は、

按察使の君は

他の女房たちも 見咎めるのではないか」と、それ

姫君の元へ

ますますきまりが悪く悲しく

宮に お会い申し上げないよう

いつものように、まず涙

お屋敷の人

お越しになる時はう

いったいどういう

わからないと

並一通

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