古文単語ゴロゴプレミアムプラス+

ゴロゴネットオンラインフリー学参「古文単語ゴロゴプレミアムプラス」

なぜ『古文単語ゴロゴ』が大学入試に強いのかは、データで裏付けされています。 2000年以降の大学入試約4000問において、「実際に出題され」単語の『ゴ ロゴ』カバー率は次のようになります。 ●受験生200万人が 愛用の古文単語集! ●他を圧倒する最強の 出題単語カバー率!

!! 『古文単語ゴロゴ プレミアム+』前書き ベストセラー古文単語集・ゴロゴは日々進化する 発売から 年、200万人以上の受験生に愛用されている №1古文単語集『古文単語ゴロゴ』のプレミアム版が登場! 1997年に『古文単語ゴロ513(ゴロゴサーティーン)』という名で出版され、 幾度と増補改訂を行ってきた『古文単語ゴロゴ』は、おかげさまで発売から 年を 迎えることができました。

20 その実績が評価され、大学入試に強い単語集、成績向上に直結する単語集として、 これまで200万人以上の生徒に愛用されてきました。そして「古文単語集と言え ばゴロゴ」とまで言ってもらえる存在になりました。

20 発売以来、「ゴロ合わせだから一週間で文単語が覚えられる!」という評判が受 験生の間で広まり、センター試験・大学入学共通テスト対策から東大・京大などの 旧帝大、早稲田上智、明青立法中、関関同立といった難関大志望者まで、多くの受 験生を志望校合格へと導いてきました。

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2 入試対応力がさらにUP! プレミアム版の3つの特長 565語すべてにイラスト・例文・単語解説を掲載! 上位・難関大学への対策もより強固なものへ! 今回の『古文単語ゴロゴ プレミアム+』には、次の3つの特長があります。 ② 従来のゴロでカバーできていなかった意味を付け足し、ゴロをパワーアップ! ③ 上位・難関大学に出題された難易度の高い単語を 語追加してゴロ化! ●565語すべてにイ ラスト&例文&単語 解説! 35

96 4 ①に関して、まずはすべての単語にイラスト&解説を付けました。そしてゴロに なっている意味に例文を配し、単語の意味をゴロで覚えた後に、実際の文章の中で も確認できるようにしました。同時に②・③において、多義語や難易度の高い単語 ① 565 語の単語すべてにカラーイラストと例文、単語解説が付いた!

3 回以上出題された単語のカバー率 ・ % おそらくこの数字は、他のどの古文単語集にも負けていないものだと自負してい ます。そして、このプレミアム版では、こうした565語に加えて、最近の上位・ 難関大学で出題された難易度の高い単語 語も掲載しました。 98 2 回以上出題された単語のカバー率 ・ % 35

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●センター・共通テス

突破!

95 語カバー率も %を

トの古文における単

大学入試突破には500語以上の力が必要という事実! センター・共通テストの古文は、文章量が多いうえに難易度が 高く、要求される単語のレベルも高い!

次に、多くの受験生が避けて通れないセンター試験・大学学共通テストの古文 を分析してみました。「設問で問われた単語」と「本文の読解に必要な単語」のカバー 率という条件で見てみると、次のようになります。

に対応したゴロへとブラッシュアップしており、従来以上に入試対応力の高い単語 集になりま 。 今までの『ゴロゴ』でも大学入試に十分対応できていたのですが、今回のプレミ アム版によって、さらに盤石の態勢を取るようにしたのです。

60 上位400語 約 % 約 % 80

40 上位200語 約 % 約 %

65 全565語 約 % 約 % 80 95

古文単語数 設問単語カバー率 読解単語カバー率

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50 入試に強く、学習効率も高い「最強の古文単語集」へ! 配列は 音順で、辞書がわりに使える! 「古文文法」「古典常識」も収録して総合的な単語集に! この『古文単語ゴロゴ プレミアム 』は、普段の勉強においても辞書がわりに使 えるように、単語を 音順に配列しています。 また単語に加え、ゴロで覚える「古文文法」や、入試で問われやすいものをまと めた「古典常識」も巻末に収録しています。 入試での圧倒的な強さを更新しながら、覚えやすさと使いやすさも維持した、ま さに「最強」の文単語集なのです。 ●「古文文法」「古典 常識」など充実の巻 末付録! + 50

実際、東大・京大・早大などの難関大学と比較してみても、センター・共通テス ト古文で出題される文章の難易度は非常に高く、分量も最多といえるものです。 速読速解が求められるセンター・共通テスト古文においては、最低でも『ゴロゴ』 の565語を完璧に覚え、さらには文脈判断できる力を養成する必要があるのです。

これを見てわかるように、センター・共通テスト古文で問われる古文単語は非常 に難易度が高く、基本となる200語程度の単語力では半分も得点できないのです。 また、読解に際して要求される単語レベルも相当なものがあります。

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●楽しみながらゴロで

●インパクトのあるイ

しよう!

古文単語をマスター

に定着しやすい!

ラストで、より記憶

!! 多彩なイラスト陣と覚えやすいゴロで一気に制覇! 「しりあがり寿」「キン・シオタニ」先生ほか、多彩なイラスト陣! 『ゴロゴ』の真髄・覚えやすいゴロは一度覚えたら忘れない

一度覚えてしまえば、もう忘れない! 天下無敵の古文単語マスターです。さあ、 みんなも今日から『ゴロゴ』で古文単語を覚えましょう!

なんといっても565語すべてにイラストが付いているので、記憶に定着しやす くなっています。とにもかくにも、「楽しくてインパクトのある、史上最強に覚えや すい古文単語集」に仕上げまし。

この本では覚えやすいゴロだけではなく、それをイメージ化してさらにインパク トのあるものにするため、イラストを掲載しています。個性的なイラストで有名な しりあがり 寿 ことぶき 先生やキン・シオタニ先生にも登場していただきました。もちろん他 のイラスト陣たちも負けていません。気合いの入ったイラストを描いていただきま した! 

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残りの397語とあわせて一気に565語の制覇だ! Aランクの168語が覚えられたら、一気に頂上を極めましょう。勢いそのまま に短期集中で進むのがオススメです。 残りの397語を一日に50単語程度のペースで、チェックシートを使いながら どんどん覚えていきましょう。一日一時間の勉強で週間あれば、あらかたのゴロ が頭に入ります。自然とゴロが口をついて出るで繰り返してください。 ●Aランク168語は 三日で覚えよう! ●短期集中で一気に 565語を制覇!

● 本書の使用法 ● まずはAランク「入試に出る古文単語1 い 6 ろ 8 は 」を三日でマスター! 本書でAランクと位置づけている168(いろは)語は、大学入試問題から分析 した入試最頻出の単語です。まずはゴロとイラストでこの168語を軽く覚えてし まいましょう。

おそらく一日一時間程度の勉強で、三日もあれば覚えられるでしょう。もちろん チェックシートでの確認作業は必ず行ってください。ゴロの効果がいかに絶大なも のかが実感できる瞬間です。

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60 をはかって、入試を突破する単語力を身に付けましょう。 A = 168語 ➡ 入試でる順の最上位。完全マスターが入試突破の大前提! B = 198語 ➡ 合計366語。ここまでで偏差値 突破だ。がんばれ C = 199語 ➡ 「古文単語マスター」の称号が得られるレベル また、巻末の「古文文法」と「古典常識」は、実は中身が相当に濃いのです。国 公立二次や私大で古文が必要な人は、入試本番までに確認を忘れずに。また、追加 単語 語も上位・難関大学受験者はしっかり覚えて万全を期してください。 ●辞書がわりに使って 完全マスターへ! ●ABCランクでどん どん単語力アップ! !! !!! 35

50 この『古文単語ゴロゴ プレミアム+』の特長の一つは、 音順の配列です。授業 の予習復習に、また授業中にも辞書わりにどんどん引いてください。単語解説に は入試で役立つオイシイ知識もいっぱい詰まっています。十分に活用して一石二鳥 を狙ってください。 ABC各ランクの単語レベルは次の通りです。徐々にペースアップと内容の深化 覚え終わったら辞書がわりに使おう!

一通り覚えたら、今度は例文のチェックです。文章中に出てきていても、迷わず 意味がわかるようになったら完成です。特に、活用する語や多義語には十分注意し て例文で確認していってください。

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https://gorogo.net/ 第一志望大学の合格を祈る ●さあ、古文を得意科 目にして第一志望に 合格だ! ●デジタルコンテンツ も充実! スマホで 学べるプレミアム版 特設ページはこちら  「ゴロゴネット」 ( )

『ゴロゴ』を全部覚えた人は、第一志望大学に合格する! この『古文単語ゴロゴ』は噛めば噛むほど味が出る仕掛けなっています。 是非みんなもボロボロになるまで使ってやってください。

! とにかくボロボロにしてください  『古文単語ゴロゴ』は200万人以上の先輩方を大学合格へと導きました。 その先輩方はみんなこの本をボロボロにしてくれていました。 そして、ひとつの伝説が生まれました。

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11 35 ◦ゴロゴ追加単語 語 ……………… ◦ゴロゴ古文文法 ……………………………… ※ゴロ合わせ中に、人名・地名・商品名のパロディ等を用いた箇所 がありますが、これはゴロ合わせをより簡潔で覚えやすくインパ クトのあるものにするためのもので、それ以外の意図は一切ござ いません。何とぞご容赦いただけますようお願い申し上げま。 311 315 333 358 35 61 77 95 ◦ゴロゴ古典常識 ………… ◦後書き ………………………………………… ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 113 133 151 167 183 205 217 237 257 279 297 310

50 ◦ 音順古文単語 語 …………………………

2 【出典略称一覧】 ◦前書き ………………………………………… 目 次 和泉 … 和 伊勢 … 伊 い せ 勢物語 今鏡 … 今 鏡 いまかがみ 雨月 … 雨 うげつ 月物語

565 ゴロゴ例文チェック …

拾遺 … 拾

十訓 … 十 訓抄 しのび … しのびね

更級 … 更

小夜衣 … 小 夜衣

讃岐 … 讃

狭衣 … 狭

西行 … 西

今昔 … 今 さいぎょう

古事記 … 古 こ じ き 事記

建礼 … 建 古今和 … 古 こきん 今和歌集

源氏 … 源

去来抄 … 去 来抄

唐 … 唐 義経記 … 義 ぎけいき 経記 きょらいしょう

歌学 … 歌 学提 要

女殺 … 女

奥 … 奥

大鏡 … 大 鏡

烏帽子 … 烏 え ぼ し 帽子折 おり

栄花 … 栄

宇治 … 宇 う じ 治拾 宇津保 … 宇 う つ ほ 津保物語

蜻蛉 … 蜻

落窪 … 落

おおかがみ おんなころしあぶらのじごく おく の細 道 ほそみち おちくぼ 窪物語

さらしな 級日記 じっきんしょう

かげろう 蛉日記 けんれいもんいんうきょうのだいぶしゅう げんじ 氏物語

こんじゃく 昔物語集

しゅうい 遺和歌集

さごろも 衣物語 さぬきのすけ 岐典侍日記 さよごろも

から 物語 礼門院右京大夫集

殺油地獄 かがく ていよう

えいが 花物語

いずみしきぶ 泉式部日記

行物語

しゅうい 遺物語

続古今 … 続

大和 … 大 ようきょく

風俗 … 風

堤 … 堤 土佐 … 土 と さ 佐日記 とはず … とはずがたり とり … とりかへばや物語 ふうぞくもんぜん 徒然 … 徒 然草

夜 … 夜

謡曲 … 謡 曲

山路 … 山 やま  じ 路の露 つゆ

万葉 … 万 葉集 紫式部 … 紫 むらさきしきぶ 式部日記

鏡 万葉考 … 万 葉考 まんようしゅう

枕 … 枕 増鏡 … 増 まんようこう

発心 … 発 心集 まくらのそうし

方丈 … 方 丈記 ほっしんしゅう

保元 … 保 ほうじょき

平中 … 平

平治 … 平 へいちゅう

平家 … 平

玉勝 … 玉 勝間

竹取 … 竹 たまかつま

篁 … 篁

太平 … 太 平記

撰集 … 撰 集抄 たいへいき

千載 … 千

住吉 … 住

新古今 … 新

続後撰 … 続

たかむら

せんざい 載和歌集 せんじゅうしょう

草子 ますかがみ

つつみちゅうなごん 中納言物語 つれづれぐさ

よる の寝 覚

たけとり 取物語

すみよ 吉物語

しょくごせん 後撰和歌集

しょくこきん 古今和歌集

ほうげん 元物語

しんこきん 古今和歌集

やまと 和物語

へいじ 治物語

へいけ 家物語

中物語

俗文選

物語

ねざめ

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※ゴロ合わせ中に、人名・地名・商品名のパロディ等を用いた箇所 がありますが、これはゴロ合わせをより簡潔で覚えやすくインパ クトのあるものにするためのもので、それ以外の意図は一切ござ いません。何とぞご容赦いただけますようお願い申し上げま。

さあ、 古文単語565語を ゴロで覚えるぞ! 50 音順

古文単語 565 語 ゴ ロ ゴ

B あいぎゃう でも嫌にならず向かい合っていたいものだ。 まほしけれ。 (徒然) = かわいらしさ

001 【愛敬】 (名) あいぎゃう ありて、言葉多からぬこそ、飽かず向かは 動詞だと「愛敬づく(=愛らしい)」。今の「あいきょ う」の元になった語。「あいぎょう」と濁音で読むの で気をつけよう。漢字「愛敬」で出ることも多いよ。 ● かわいらしさ。 魅力。 愛らしさ。 優しく魅力的なこと 。 ① ② があって、口数の多くない人とは、いつま 「愛無し(=面白みがない)」「合ひ無し(=不調和 だ)」などの説がある。連用形「あいなく〔う〕」の形 で「むやみに・わけもなく」という意味も大切だ。 つまらない。面白く ない。 気に食わない。 (連用形「あいなく〔う〕」 の形で) むやみに。 わ けもなく。 ① ②③ ので、 (形・ク) あいなし あいなけれ ば、 つまらない うれしきことに喜び聞こえける。 002 わけもく ⌇⌇⌇⌇⌇ ⌇ ム ⌇ 気に食わない カつく ⌇⌇⌇ わ あい ちゃん ぎょう さん かわ ⌇⌇ いらしい ⌇⌇⌇⌇ ⌇ A ことわりにていと (紫式部) = そう考えるのも道理であって、たいそう あいなく 愛なし では つまらない ⌇⌇⌇⌇⌇ 、

● (源氏) = 世間の人も わけもなく うれしいこととしてお喜び申し上げた。 世の人も

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あえか (なり) なりまさりたまへるを、 なりなさったので、 ※ 「たまへ/る」で、「る」は完了の助動詞「り」の連体形。 B あえかに 【飽かず】 (連語) あかず 死ぬのが惜しいと思うならば、たとえ千年を 過ごしたとしても、たった一夜の夢のように短い気がする であろう。 ※ 係り結び「こそ → め(「む」の已然形)」。 A 心地こそせめ。 (徒然) あかず = もの足りず いとど (源氏) = ますます きゃしゃに

004 003 あかず の扉じゃ もの足りない ⌇⌇⌇⌇⌇⌇ 、 ⌇⌇⌇⌇⌇⌇ ⌇ あ ー Aカ ⌇⌇⌇⌇⌇ ⌇

(形動・ナリ)

ップ、

きゃしゃだ

010 惜しと思はば、千年を過ぐすとも、一夜の夢の 女性に対して使われる場合が多く、きゃしゃな美 しさや弱々しくちょっと病気がちな感じを表す。 『源氏物語』の中の女性に対してよく使われている。 ● きゃしゃだ。弱々し い。 ① 「あく(=①満足する。②いやになる)」の打消表 現で、 「飽かず」と漢字をあてる。「ず」が活用して「あ かぬ」や「あかざる なってもあわてないでね。 ● もの足りない。満足 しない。 嫌にならない。飽き ない。 ① ② 赤ず

嫌にならない

きん、着ていても

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C あかなくに 端よ、逃げて月を入れないで欲しい。 もあらなむ (伊勢) = 名残惜しいのに

005 (形動・ナリ) まかでたるほど、二日ばかりありてしも 現代語の「あらわだ」の意は、近世以降の用法だ。 ②の用例は上代に多く、中古では①の用例が多い。 入試では①が頻出だよ。 ついちょっと。 仮に。 急に。たまち。 ①② ● あからさま (なり) 里に退出したちょうどその間に、ほんの二 【飽かなくに】 まだきも月の隠るるか山の端にげて入れず 『伊勢物語』の主人公、 在 ありわらのなりひら 原業平 の和歌「あかなくに まだきも月の隠るるか~」が有名。例文の和歌ごと 覚えてしまおう。 ● 名残惜しいのに。満 足していないのに。 (詠嘆の意で) まだ飽 き足りないのになあ 。 ① ② (連語) あかなくに 早くも月が山の端に隠れることか。山の

名残惜しい ⌇⌇⌇⌇⌇ ⌇

006 アからサま ⌇⌇⌇⌇⌇⌇ 赤 ん坊 泣く 泣く 煮 て食う、

A あからさまに 雪は降るものか。 (紫式部) 日ほどして雪が降ったではないか。 = ついちょっと

では

ついちょっと

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【傍目】 (名) あからめ りて、 (徒然) = 桜の木の下には、体をにじりよるようにしてむやみに近 寄り、 わき見 もせず花をじっと見つめて、 B 花の本には、ねぢ寄り立ち寄り、 C うちそよめく心地して、人々 り。 (源氏) = そよそよと衣ずれの音がする気がして、人々が 配などもするようだ。 あからめ

もせずまも

007

469 浮気」という関 係がおもしろいね。ちなみに「あからめ」の反対で 「じっと見つめる」の意味の古語は 「まもる」。 ● わき見。よそ見。 浮気。 ①② 「別る・散る」と漢字をあてて覚えると便利。「つど ふ(=集まる)」の反対語で、多くの人が集まった所 から離れて「別れて行く」意味だよ。 ● 別れる。離れる。 ① 【別る・散る】 (動・ラ下二) あかる あかるる 別れる 008 ⌇ あ ー けはひなどすな 気 間に ⌇⌇ する 「傍目」と漢字をあてる。「わき見 ≒

あ っ 空メ ール、 わき見 ⌇⌇⌇ する 浮気

別れる

⌇⌇⌇ ⌇

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004 010 漢字で「飽く」とあてる。打消形 「あかず」の形が 超頻出だ。ちなみに「あく」には同音異義語で「開く」 「空く」の意味のものもるので注意だよ。 嫌になる ⌇⌇⌇⌇ ⌇ ● 満ち足りる。 嫌になる。 ①② 「明らむ」と漢字をあてて覚えておくと便利。現代 語の「あきらめる(=断念する)」と混同しないでね。 ● 明らかにする。はっ きりさせる。 心の中を明す気 持ちを晴らす。 ① ② あか ん。 満ち足りるほど 食べたい。 はてて下り給ひなば、 て(伊勢に)下りなさるなら、 晴れ晴れとさせる ほどに、 【飽く】 (動・カ四) あく 【明らむ】 (動・マ下二) あきらむ あきらめ むとする 明らかにし ようとする ばかり、 009

B われはまづもはら『万葉』を あきらむ

嘆かしき心の中も (源氏) = 悲嘆に暮れていた心の中も

= 私は最初もっぱら『万葉集』を

明らかにする ⌇⌇⌇⌇⌇⌇ ⌇

アキラ の む っつりスケベを

(玉勝)

B あはれ、いかで芋粥に (宇治) = ああ、なんとかして芋粥を あき 嫌になっ

もし世の中に = もし世の中にすっかり

悪 魔 満ち足りる ⌇⌇⌇⌇⌇ が、やがて

(源氏)

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【憧る】 (動・ラ下二) あくがる あくがれ むことを、 浮かれ出て歩く あくがるる 物にな、 て 「憧る」と漢字をあてる。現代語の「あこがれる」の 元になった語だ。「心が体から離れてさまよう」と いうのが原義。下二段活用であることに注意。 ● 浮かれ出る。さまよ い歩く。 心がひかれて落ち着 かない。思い焦がれ る。魂が抜け出るうわ の空になる。 ① ② ③ ようなことを、 011 ⌇ あげ 「論ふ」と漢字をあてる。筋道を立てて議論するこ とを表すのだ。類義語の「いさかふ」は「口げんかす る」の意。● 議論する。 ① 議論し 【論ふ】 (動・ハ四) あげつらふ 、 012

(源氏) (源氏) = 思い悩む人の魂は、なるほど、 体から離れてさまよう もので、 物思ふ人の魂は、げ、

B いさよふ月にゆくりなく = 沈むのをためらう月に不意に

うわの空 ⌇⌇⌇⌇

あ ー 久我ル ンルン♪ 浮かれ ⌇⌇⌇

B おほかた世の人の、万 よろづ の事の善悪是非を (玉勝) = 一般に世間の人が、すべてのことのよしあしを あげつらひ 、

つ、

つらぶ

議論する

⌇⌇⌇⌇ ⌇

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A あさましき つつみなく言ひたるは、 情けない = ひどく 驚き呆れ

013 35 B 014 「あさむ」は形容詞「あさまし」の元となった動詞。 「あさましがる」という動詞もほぼ同義だ。「浅む」 と漢字をてる②は別の語で、①のほうが重要だ。 朝む ● [あさむ] 驚く。 驚き 呆れる。 [浅む] 馬鹿にする。 見下す。 ※ ②の例文は ページ ① ② 動詞「あさむ」に対応する形容詞で、善悪両方の 事態に対して「驚き呆れる」の意味で使われる。② 以下の意味も例文でチェックだ! ● 驚き呆れる。 興ざめだ。 情けない。 話にならない ひどい。 ①②③④ あさみ に、さらにものも聞こえず。 たので、まったくなんとも申し上げない。 あさましき わざなり。 ものだ。 014 (形・シク) あさまし ⌇⌇ ⌇ 朝

いと = 遠慮なく言うのは、

目覚

まし

驚き呆れる

⌇⌇⌇⌇⌇ ⌇

(大和)

(枕)

(動・マ四) あさむ さて鉢が飛び行くほどに、人々、見ののしり、 さわぎあひたり。 (宇治) = さて鉢が飛んでいくときに、人々は、それを見て大声を 出し、 驚い て騒ぎあっていた。

っつりスケベに

驚く

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C さらぬ人だに、 とにするを、 (大鏡) = 大したことない人でさえ、 ん不都合なことだとしているのに、

【戯る・狂る】 (動・ラ下二) あざる あざれ たのぞき見は、たいへ 【悪し】 (形・シク) あし ける ⌇⌇ な 「戯る・狂る」と漢字をあてる。「あざる」の意味と しては「ふざけ が頻出するが、それ以外に「くつ ろぐ」 「しゃれている」の意味もあるよ。 ● ふざける。 うちとける。くつろ ぐ。風雅だしゃれ ①② ③ 「あし」は文脈でいろいろな意味になる。「あし→わ ろし→よろし→よし」という順で最悪から最高にな る。要するに「あし」は誰が見ても最低~こと。 ● 悪い。 下手だ。 卑しい。 ①②③ たる物のぞきは、いと便なきこ ふざけ あしから ぬが、 悪く ない子が、 あしく 書きけるなり。 下手に 書いてきたことだった。 015 ⌇ あ っ

016 ⌇⌇ 、 下手だ ⌇⌇⌇ ⌇ アザ ラシ ル ンルン♪ ふざ ⌇⌇ し が

年頃、不動尊の火炎を = 長年、不動尊の後背の炎を

B ある人の子の見ざまなど = ある人の子であって、姿などが

悪い

(徒然)

(宇治)

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【朝】 (名) あした = 朝 に死に、夕方に生まれるという人の世の常は、 こそをかしけれ。 翌朝 は趣がある。 みかど、筝 さう の御琴をぞいみじう = 天皇は、筝を巧みに あそばせ なさってください あした (方丈)

野 分 の = 秋の台風の の

017 【遊ばす】 (動・サ四) あそばす B 018 サ変の「す」の尊敬語。中古では「管弦をお弾きにな る」「和歌をお詠みになる」の用例が多い。いろいろ な動作の尊敬語になるので文脈判断が大切。 あ ー ● なさる。 (広くいろい ろな動作をする尊敬語) (詩歌・管弦などを) なさる。お弾きにな る。お詠みになる。 [尊敬の補動] ~なさ る。お~にる。 ① ② ③ 「朝」と漢字をあて、夜が明けて朝になったという 感じを表す。朝の時間の進み方は「あかつき→あけ ぼの→あした」の順だよ。 ● 朝。(何か事の行われた) 翌朝。あくる朝。 ①② に死に、夕べに生まるるならひ、 あそばし ける。 演奏なさっ た。 。 。 B ⌇ なさる サル ⌇⌇ ⌇ あ ー ⌇ ⌇

わき あした

くなる

した

(徒然)

あれへお通り

(女殺) = あそこへお通り

だらけ

そば

(栄花)

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や涼しき風吹きけり。 (伊勢) けて次第に い風が吹いた。 = たいそう暑いころに、宵は

A いと暑きころほひに、よひは 管弦の楽

【遊び】 468 ⌇⌇ コ 「詩」は「漢詩(からうた)」、「歌」は「和歌(やまとう た)」、「管弦」は「音楽」のこと。「遊び」の中心は「管 弦(=音楽)」。上代では①の意になる。 ● 詩歌管弦。 神事としての芸能・ 狩猟。行楽。 ①② 「徒」と漢字をあてる。女性関係に使われると①の 意味になり、非難の対象になる。反対語は 「まめ なり」で、「まじめで誠実なさま」。 ● 浮気なさま。 無駄なさま。 はかない。 いい加減さま。 ①②③④ をりて、夜ふけてや をかなでて、夜が更 御心本性とのみ聞きしかば、 ご性分だとばかり聞いてきたことだから、 【徒】 (形動・ナリ) 020 019 ⌇ あ ⌇⌇ は 無駄 ⌇⌇ よ、 はかない ⌇⌇⌇⌇ わ ー だ 遊び 欲 し ⌇ 詩歌管弦 いか ⌇⌇ 、 缶 ⌇ 蹴り ゲン (名) あそび 遊び

あだなる

あだ (なり) 人のその行末をとぶらはむとて、 死んだ人のその後世を供養しようと思って、 A あだなる いと = とても 浮気な

= はかなく

浮気

(山路)

(源氏)

21

021 A 022 この人、若くて失せにし、いといとほしく あたらしく なむ。 (増鏡) = この人が、若くして死んでしまったのは、とても気の毒 で、 もったいない ことである。 ※ 文末の「なむ」は係助詞。 「味気無し」と漢字をあて、望ましい結果が得られ ず行き詰まってどうしようもない状態を表す。現 代語でも面白みのない場合に「あじけない」と使う。 らない ⌇⌇⌇ ⌇ たいない ⌇⌇⌇⌇ ⌇ ● つまらない。情けな い。どうしようも 無益だ。 道理に合わない。 ① ② ③ 「惜し」と漢字をあてる。語幹の「あたら」だけで用 いて、①「せっかくの」、②「惜しくも」の意味がある。 「新し」と漢字をあてるほうは、「新しい」の意。 ● もったいない。惜し い。 ① あぢきなく 物とがめして、異名付きたる。 (今昔) = つまらない とがめ立てをして、あだ名が付いてしまった。 世の中を し と思ひとり (源氏) = 世の中を 無益だ と深く考えて、 【味気無し】 (形・ク) あぢきなし 【惜し】 (形・シク) あたらし A ア ッ、 磁気なし バンド、 つま ⌇⌇ あ ー、 たらし ちゃった もっ ⌇⌇

22

【篤し】 (形・シク) あつし 紫の上、いたうわづらひたまひし御心地の後、いと あ つしく なりたまひて、 (源氏) = 紫の上は、ひどく苦しみなさった御重病のとき以来、随 分 病気が重く なりなさって、 むかし、 あてなる をとこありけり。 = 昔、 身分の高い いとしろう、 あてに = とても色白で 上品で C

023

の婆ちゃん

あつし

危篤だ

132 「篤し」と漢字をあて、病気がちだったり、重い病 気の状態。「熱し(=病気のため熱がある)」からの 転義。対義語は 「おこたる」=「病気が治る」。 ● 病気が重い。 危篤だ。 病気がちである ① 「貴」と漢字をあてる。階級的な高貴さと内面的な 美しさの調和した上品さ、優雅さを表す。対義語 は「いやし(=身分が低い。下品だ)」。 ● 身分が高い。高貴で ある。 上品だ。優雅だ。 ① ② 男がいたという。 痩せているが頬がふっくらとして、 【貴】 (形動・ナリ) あて (なり) A 024 高い ⌇⌇ のは

⌇⌇⌇

⌇ あて だっせ、 上品で ⌇⌇⌇ 身分が ⌇⌇⌇

(伊勢) やせたれどつらつきふくらかに、

(源氏)

23

025 A 026 「入りて消息せよ」と宣へば、人入れて 案内 せさす。 (源氏) = 「(邸内に)入って案内を請え」とおっしゃるので、供人を 邸に入れて 取り次ぎ をさせる。 「強ち」と漢字をあてる。他人の非難を無視して、 自分勝手に感情のおもむくまま度を越えて行動す る様子。 あ ● 無理やりだ。 強引だ。 むやみだ。ひたすら だ。度を越している ①② ③ 「案内」と漢字をあてる。「あんない」の撥音「ん」の 無表記形。サ変の「す」とくっついて複合動詞化し、 「あないす」となることもあるよ。 ● 取り次ぎ(を頼む) 。 事情(を知らせる) 。 ①② 下 しも つ方 かた 思ひやるに あながちに たけ高き心地ぞする。 (源氏) = 下半身を想像すると、 むやみに 背が高い感じがする。 花の散らむは、 あながちに いかがはせむ。 (宇治) = 桜の花が散るようなのは、 無理に どうすることもできない。 【強ち】 (形動・ナリ) あながち (なり) 【案内】 (名/動・サ変) あない (す) B けど、 ⌇⌇⌇⌇ 進もう ー ⌇⌇⌇⌇ ⌇

ない

ない

取り次ぎ

穴が小 さくなる。 む ⌇ むやみだ っ、 闇だ ⌇⌇ 無理やり

24

(連語) あなかま あなかま しっ、静かに 」と申し上 【侮らはし】 (形・シク) あなづらはし 感動詞「あな」に形容詞「かまし」あるいは「かまびす し」の語幹「かま」の付いたもの。「しっ、静かに」と 制するじがいいね。 ● しっ、静かに。うる さい。 ① 「侮らはし」と漢字をあてる。「侮 ぶ 蔑 べつ 」の「侮」だから、 「(遠慮なく)馬鹿にする」という意味だよ。 ● 馬鹿にしたくなる。 あなどりやすい。 気の置けない。遠慮 がいらない。 ① ② あなづらはしき にや。 馬鹿にしたくなる のであろうか。 あなづらはしき 方にと、 者として召使えと、 、 028 027 」と聞こゆ。

B 人々かたはらいたしと思ひて、「

げる。

= 人々は実に間が悪いと思って、「

「 「 しっー静かに ⌇⌇⌇⌇⌇⌇ 」 あな たもオ

?」

カマ

(源氏)

右近をばむまじう

B やつれたるに、 = 落ちぶれているので、 遠慮のいらない

= 右近を親しく

⌇ あな たの ヅラはし ょーもない、 遠慮せず ⌇⌇⌇⌇ ⌇ 馬鹿にしたくなる ⌇⌇⌇⌇⌇⌇⌇⌇ ⌇

(源氏)

(栄花)

25

B 中将の声づくるにぞ (源氏) = 中将が咳払いをしているので あなる 山の頂、 あるという 山の頂に、

029 (形動・ナリ /感動詞) A 030 「あはれ」は形容動詞以外に感動詞でも使われ、賛 美や悲哀、驚嘆などを表す。『源氏物語』では「あは れ」が 回も用いられている。 する ⌇⌇ ● [形動] しみじみと趣 がある。 情趣がある。 [形動] (文脈に応じて) かわいい。 気の毒だ。 立派だ。 など [感動詞] ああ。 ① ② ③ ラ変動詞「あり」の連体形+伝聞・推定の助動詞「な り」の連体形。「あるなる」→「あんなる」→「あなる」 と変化したもの。①は「推定」、②は「伝聞」の意。 ● (「なり」が推定の場合) あるようだ。 (「なり」が伝聞の場合) あるということ あるそうだ。 ① ② あはれに 心細くて、 (残された者たちは) (連語) あなる あなる 。 あるようだ 。 と 推定 ⌇⌇ する

駿河の国に

= 駿河の国に

「 あ ⌇ あ ⌇ 晴れ た」と しみじみと ⌇⌇⌇⌇⌇ あ っ、 なる ほど あるようだ ⌇⌇⌇⌇⌇

(竹取)

= 急に亡くなったので、 、昨日は翁丸をひどく打ったなあ。 あはれ

931 にはかに亡せぬれば、 、昨日翁丸をいみじうも打ちしかな。 あはれ (なり)

= ああ

しみじみと

心細く、

(源氏)

(枕)

26

【会ふ・逢ふ・合ふ】 (動・ハ四) あふ あひ にけり。 結婚し たのだった。 あは ず。 適合し ない ⌇⌇⌇⌇ ⌇ 「会ふ・逢ふ・合ふ」と漢字をあてる「あふ」はいろ いろ意味があるが、入試では「結婚する」がポイン ト。「あはす」は「結婚させる」という意味になるよ。 ● 結婚する。 出会う。対面する。 出くわす。 適合する。 ①②③ 031 あ ⌇ 阿部狩り ラ変動詞「あり」の連体形+推量の助動詞「べし」の 連用形。「あるべかり」→「あんべかり」→「あべかり」 と変化したものだよ。 ● あるに違いない。あ るだろう。 ① ⌇⌇⌇⌇ ⌇ あべかり けるこ ぁ、 032

B つひに本意のごとく (伊勢) = とうとうかねての望みどおり ざえ ありて頼むべからず。孔子も時に (徒然) = 学才があってもあてにできない。孔子も時勢に 才

と結婚する

(連語) あべかり のちに思へば、をかしくもあはれにも との、 (源氏) = 後になって思うと、面白くもしみじみと感動することで も あるに違いなかっ たことが、 C

に行ったに

違いない

27

= 秋の風に あへぬ

B あへず 堪えられず 雪の花と見ゆらむ 雪が花に見えるのだろう 秋風に

消え きれない

033 【敢へ無し】 (形・ク) あへなし 034 「敢(あ)ふ」に「なし」の付いたもの。「敢ふ」は「こら える」の意で、「あへなし」は「こらえきれない」→ 「がっかり」となった。 あ ー 変 な 梨 、 がっかり ⌇⌇⌇⌇ 。 ● がっかりする。張り 合いない。 どうしようもない。 ① ② 「敢へず」と漢字をあてる。「消えあへず(=消えき れない)」「息もつぎあへず(=息もつぐことができ ない)」のように、補助動詞で使われる場合に注意。 ● 堪えられない。 [補動] ~しようと してもできない。 ①② 散りぬるもみぢ葉の 散った色づいた葉が あへなく て、帰り参りぬ。 がっかりし て、宮中に帰ってきた。 あへなき 事を思ひ騒ぎて、 出来事に心中であわてて、 【敢へず】 (連語) あへず

= 消え

どうしようもない ⌇⌇⌇⌇⌇⌇⌇⌇ ⌇ あ ぁ へ は ず っとは 堪えられ ⌇⌇⌇⌇ ない ⌇⌇

(古今和)

(古今和)

誰 = 誰も彼も、異常で

C 御使ひも、いと = お使いも、たいそう

たれ も誰も、あやしう

どうしようもない

(源氏)

(源氏)

28

B 「小さきは = 「小さい者は同行しても

【敢へなむ】 」と、公も許させ給ひしぞかし。 」と、朝廷もお許しに ー ⌇⌇⌇⌇⌇ ⌇ 「敢(あ)ふ(=差し支えない)」+完了の助動詞「ぬ」 の未然形「な」+意志の助動詞「む」=「差し支えある まい。仕方があるまい」。 ● 仕方がない。我慢し よう。 差し支えがないだろ う。 ① ② 変なム あへなむ 仕方がない (連語) あへなむ 035 あ ⌇ 「 「数多」と漢字をあてて覚えておくと便利。あまた たび」=「何度も」、「あまた年」=「多年」のように、 接頭語的用例もあるよ。 ● たくさん。数多く。 非常に。はなはだ。 ①② たくさん ⌇⌇⌇⌇ 」 あま っ 036

なったのですよ。

ード、仕方がない

(大鏡)

【数多】 (副詞) あまた (源氏) = 美しい顔つきをした女たちの透き間を通した姿が、 たく さん のぞいているのが見える。 A をかしき額つきの透 すき 影 かげ 、 あまた 見えてのぞく。

29

037 A 038 生ひ先遠き人の御うへも、つひにかの御心にかかるべ きにこそ あめれ 、 (源氏) = 将来の長い姫君のお身の上も、結局はあのお方のお心に よらなければならないので あるらしい が ①②の「あやし」は「奇し・怪し」の漢字をあて、「不 思議だ」が原義。そこから③④の「賤し」という漢字 をあてる「卑しい」 「粗末だ」の意が生まれた。 あ っ やし の実だ、 い ⌇ 卑しい や ⌇ 、 しい ⌇⌇ たけだ、 そ ⌇ 粗末だ ー まつ ⌇⌇ ぼっくり 不思議だ ⌇⌇⌇⌇ な アメリ カに ⌇⌇⌇⌇⌇ ⌇ ● [奇し・怪し] 不思議 だ。異常だ。並々で はない。 [奇し・怪し] けしか らぬ。不都合だ。 [賤し] 卑しい。 身 分が低い。 [賤し] 粗末だ。 見 苦しい。 ① ② ③ ④ ラ変動詞「あり」の連体形+推定の助動詞「めり」。 「あるめり」→「あんめり」→「あめり」と変化したも の。 「あなる」とペアで覚えよう。 ● あるらしい。あるよ うだ。 ① つひに見えず。 あやし と思ふに、 (増鏡) = とうとう現れない。 不思議だ と思っていると、 あやし の宿り立ち寄りては、 (増鏡) = 卑しい 者の宿に立ち寄っては、 【奇し・怪し/賤し】 (形・シク) あやし 029 (連語) あめり C

あるらしい

30

【文無し】 (形・ク) あやなし あやなし 。梅の花は、花の色こ そ見えないが、その香りは隠れようか、いや、隠れはしない。 B 春の夜のやみは あやにく (なり) A こと。 (枕) = まったく知らないということを申し上げたのに、 く 無理に追及なさったことだ。 さらに知らぬ由を申ししに、 あやにくに くるる (古今和) = 春の夜の闇は、

【生憎】 (形動・ナリ) 意地悪 039 「あやなし」の「あや(文)」は「物事の道理」の意。そ れがなし」なので、「道理がない」→「わけがわから ない」の意にるのだ。 ● わけがわからない。 道理に合わない。 つまらない。 (連用形「あやなく」の 形で) わけもなく。 やたらに。 ① ②③ 梅の花色こそ見えね香やはか わけがわからない ⌇ あや憎 「生憎」と漢字をあてる。現代語の「あいにく」の元 になった語。「あいにく雨だ」は「都合が悪いことに 雨だ」というこだよね。 ● 意地悪だ。 都合が悪い。あいに くだ。 ①② ⌇⌇⌇⌇ ⌇ 強ひたまひし 040

あや 梨 と戦う、 わけわか ⌇⌇⌇⌇ らん ⌇⌇ し、つまらない ⌇⌇⌇⌇⌇ ⌇ 、

たらしい、意地悪だ

31

012 申し上げない。 ※ 「いたう~ず」で部分否定「大して(あまり)~ない」。 参照。 いたうも 言い争い (源氏) = 大して

021 「あらたし」は「新たし」と漢字をあてて覚えると便 利。もっいない」の意の 「あたらし(惜し)」と 混同しないように。 あら 、 確 ● 新しい。 新鮮である。 ① 「あらがふ」は「争ふ」と漢字をあてて覚えると便利。 前に出てきた 「あげつらふ(=議論する)」と合わ せて覚えよう。 ● 言い争う。 否定する。 競争する。賭けをす る。 ①② 年の初めの初春の今日降る雪のいやしけ吉 【争ふ・諍ふ】 (動・ハ四) あらがふ 聞こえさせず。 B あらがひ 042 ⌇⌇⌇ ⌇ 荒 井 ⌇⌇⌇⌇ ⌇ が二 041

人で

言い争う

076

C あらたしき 積もれ、めでたいことが。 事 = 新しい

【新たし】 (形・シク) あらたし 年の初めの新春の今日降る雪のように、ますます ごと (万葉)

かに

新しい

32

できて、 (徒然) = 今日はそのことをしようと思ったけれど、 先に出てきて、

B 今日はそのことをなさんと思へど、 意外な

急ぎまづ出

あらぬ 急用が

(連体詞) あらぬ

043

【顕】 (形動・ナリ) 無関係 ⌇⌇⌇ ー 「ぬ」は打消の助動詞「ず」の連体形。「あらぬ道」と 言えば「自分とは無関係の専門の道」のことだよ。 ● 意外な。思いがけな い。無関係の。別の。 ① ② 「顕なり」と漢字をあてる。動詞「あらはる(=表面 に現れる)」と同語源。物事が隠れず、はっきり見 える状態を表すのだ。 ● 丸見えだ。 明白だ。 表立っている。 ①②③ あらはに 見おろさる。 あらはなり しかば、 明白だっ たで、 あらは (なり) 044 ⌇ あら半 ⌇⌇⌇⌇ ⌇ あらヌ ード、 意外だ ⌇⌇⌇ わ。

運命の末になること = 運命が終わりになることが

C 高き所にてここかしこ僧坊ども (源氏) = 高い所なのであちこちに僧の住まいが 丸見えに 見下ろされる。

ケツ、丸見えだ

(平家)

33

C かねての に違わないこともあるので、 = 前もっての

046 から違はぬ事もあれば (徒然) 計画

045 名詞「あらまし」を活用させた語。「行く末久しく あらます」=「長い将来にわたって予期する」。 期待する。 予期する。 ① 「あらまし」は「願望。予期」の意もあり、これが動 詞化して 「あらます」となった。「あらまし」だけ で実行を伴わないなんてことのないようにね! ● 計画。こうありたい という願い。願望。 全体のあらすじ ① ② あらまし 、 期待し 、 (動・サ四) あらます (名) あらまし 、みな違ひゆくかと思ふに、おのづ あらまし がすべて食い違っていくかと思うと、稀 ● 045

046 ⌇⌇⌇⌇ ⌇ あらま ー ⌇⌇ ⌇ あらま ー

っかりした

計画

C さかゆく末を見んまでの命を (徒然) = 子孫が栄えていく将来を見るまでの命を

っごい

期待する

34

あいなし ゴロゴ例文チェック 単語 ~ 単語 。

(9) (10) (11) (12)

(5) (6) (7) (8)

(4)

(3)

(2)

(1)

言葉多からぬこそ、 て、「世のしれ者かな……」と言ふに、 (徒然) そしり笑い( 馬鹿にし )て、「この上ない馬鹿者だな … …」と言うので、 蝶になりぬれば、いともそでにて、 あだに なりぬるをや。 (堤) (蚕が)蝶になってしまうと、人はまったくおろそかにして、( 無駄な ものに )なってしまうのよね。 時々はればれしうもてなしおはしませ。 あたら 御身を。 (源氏) 時々は気が晴れ晴れするようにお振る舞いなさいませ。( もったいな いほど )若いお身の上ですも。 宮の辺に 案内 しにまゐらまほしけれど、 (枕) 中宮の御所に( 事情を伺い )に人を参上させたいけれども、 水くめるなむ、前より あやしき やうなる家に入りける。 (源氏) 水をくんでる人が、前から来て( 粗末な )様子の家に入った。 訳 訳 訳 訳 訳 訳 訳 訳 訳 引きつらむ袂 たもと は知らずあやめ草 あやなき 袖にかけずもあらなむ (蜻蛉) 引いて濡れたあなたの袂は存じませんが、( つまらない )私の袖に菖 蒲をかけなどしないでください。 訳 思ししづむれど あやにく すすみいづる御涙を、 (増鏡) 我慢なさるが( 都合悪く )流れ出る御涙を、 訳 一道にたづさはる人、 あらぬ 道のむろにのぞみて、 (徒然) 専門の道に従事しいる人が、( 無関係の )道の集会に出て、 訳 (徒然) 口数が多くない人こそ、( 嫌にならず )向き合っていたいものだ。 (大和) 以前のようには( 浮気 )もしないで(この女と)ともに暮らした。 もとの如く 二年が間、世の中飢 け 渇 かつ して、 あさましき あさみ (方丈) 二年の間、世の中は食糧が欠乏して ひどい )ことがございました。 あざけり

001 046 おのづから聞きつけて、うらみもぞする、 (枕) (噂話を)自然と聞きつけて、恨んだりするのは、( 気に食わない )。 あかず 向かはまほしけれ。 あからめ もせで添ひゐにける。 こと侍りき。

35

047 【有り・在り】 (動・ラ変) あり B 048 ラ変動詞「あり」は存在するの意が基本だが、「生き ている」「生活するの意が大切。「あられず」=「生 きていくことができない」。 アリ も ● 生きている。 生活する。 存在する。 ①②③ 「あらまほし」は、本来「あら+まほし」の二語で構 成され、「ありたい。あってほしい」の意だが、一 語の形容詞として用いられると「理想的だ」となる。 ● [形] 理想的だ。 好 ましい。 [連語 (あら+まほし) ] ありたい。あってほ しい。 ① ② いらっしゃる。 あってほしい ものである。 (形・シク/連語) あらまほし B ⌇⌇⌇⌇⌇ ⌇ あらま ⌇⌇⌇ 。 そう ⌇⌇⌇⌇ わ あらまほしう 理想的で ものしたまふ。

少しのことにも先 せん 達 だつ は あらまほしき = ちょっとしたことでも、指導者は

心ばせおほどかに = 気立てもおっとりしていて ことなり。

ー りたい

一徹、

理想的

(徒然)

(源氏)

名にし負はばいざ言問はむ都鳥わが思ふ人は あり や なしやと (伊勢) = 「都」を名して持っているなら、さあ都のことを尋ねよ う。都鳥よ、私の恋しく思っているあの人は 生きている か どかと。

生きている

36

ありありて

048 動詞「あり(=生きている)」を重ねて接続助詞 「て」を付けたもの。「とどのつまり」というのは「結 局」という意味だよ。 ● 生きながらえて。 とどのつまり。挙 あげ 句 く の果てに。 ①② 「あることが難しい」が原義。そうしたものに対し て喜び、尊重する気持ちを表す。現代語の「ありが とう」の元になった語だよ。 ● 珍しい。めったにな い。生きていくのが困難 だ。(めったにないほど) すぐれている。 難しい。困難だ。 ① ② ③ ④ もの、舅 もの、舅から誉められる婿。 命を助けきこえつ。 命をお助けした。 後でも会おうと言葉だけは ……今はかく花の都をさへ立ち別れ、 ……今はこのように美しい都をさえ離れて、 【在り在りて】 (連語) ありありて C ありありて こと のみを (万葉) = 生きながらえて 【有り難し】 (形・ク) ありがたし A ありがたき 生きていくのが困難な 珍しい ⌇⌇⌇ 。 生きづらい ⌇⌇⌇⌇⌇ 世の中だ がらえて ⌇⌇⌇⌇ 、ト ⌇ とどのつまり ドの ⌇⌇ あつまり ⌇⌇⌇ しうと にほめらるる婿。 (枕) = 珍しい ありがたき 後も逢はむと 言 050 049 アリが足し ありありて ーへん、 生きな ⌇⌇⌇

= とどのつまり

(増鏡)

かく = このように

算してる、

(今昔)

37

A ありき かぎりなく悲しくのみ思ひ = この上なくただもう悲しく思い 狩し = 狩りをして 歩き回っ

051 【在りつる】 (連体詞) ありつる 052 類義語の「ありし」も一緒に覚えよう。「ありし」が 遠い過去を示すのに対し、「ありつる」は比較的近 い過去を示すだ。 アリ と ● さっきの。 ① 「歩く」と漢字をあてる。広くあちこちを巡って移 動する意を表す。補助動詞の用法も大切。足で一 歩一歩移動する意を表す語は「あゆむ」だよ。 ● 歩き回る。 [補動] あれこれ~ し続ける。 [補動] あちこちで ~する。 ①② ③ ありつる やうに置きて、とばかり さっきの ように置いて、しばらく けるにいきあひて、 ているところに行き会って、 ありく ほどに、 続け ばかりでいるときに、 【歩く】 (動・カ四) ありく ⌇⌇⌇⌇ 店へ アリク ⌇⌇⌇ り ⌇ 続ける ⌇⌇⌇ ⌇

イが

歩き回

(伊勢)

(大和)

B いみじう悲しうて、 あるほどに、ものしためり。 (蜻蛉) すると、の人が来たようであった。 = ひどく悲しくて手紙を

んで

つる

さっきの

38

(連語) ありとある すべての」のという意味だよ。 ● かんだちめ 達部、みこたち、四位五位、これに物ぬ ぎて取らせざらむ者は、 (大和) 上達部や皇子たち、四位、五位の殿上人よ、こ 上

C ありとある の娘に着物を脱いで与えないような者は、 = すべての

【有りと有る】

「ありとあらゆる。

054 053 アリ と 餅つかず 落ち着か ⌇⌇⌇⌇ アリと歩 ⌇ すべての べ ⌇ っ て ⌇ ん の ⌇

いて

「ある(有る)」を強めた言い方で、 すべての。 ①

= 落ち着かず ありつき

ありもつかず

わざと (宇治) = 特に(結婚して) 住み着い

【在りも付かず】 ない ⌇⌇ ⌇ 「ありつく(在り付く)」が、「住み着く。落ち着く」 の意をもっているので、それを「ず」で打ち消した 語だよ。 ● 落ち着かない。住み なれない。 ① 、いみじうもの騒がしけれども、 、ひどく騒がしいけれど、 たる男となくて、 (連語) ありもつかず C

た男もなくて、

(更級)

39

C すさまじきもの、 方 かた 違 たが へに行きたるに、 あるじせ ぬ所。 (枕) = 興ざめなもの、方違えに行ったのに、 ごちそうをし ない所。

【饗す】 (動・サ変) あるじす

055

ッと

あるじス

ごちそうする

056 「饗設け」と漢字をあてる。「あるじ」は「主人」であ り、「まう は「準備」。主人が客をもてなす準備 をすることから、「ごちそう」の意が生じたのだ。 しろよ ● ごちそう。饗応。 ① 「饗す」と漢字をあてる。要するに「饗 きょう 応 おう する」こと。 「あるじ(主)」は主人であり、同時に客をもてなす 人でもあったのだ。 ● ごちそうする。 ①

⌇⌇⌇⌇⌇⌇ ⌇

【饗設け】 藤原良近といふをなむ、まらうどざねにて、その日は あるじまうけ したりける。 (伊勢) = 藤原良近という人を正客として、その日は ごちそうの宴 をしたのだった。 (名) あるじまうけ C

あるじ儲け 過ぎ、 ごちそう ⌇⌇⌇⌇

40

【或は】 (連語/接続詞) あるは あるは は この土地人ですが、その御苦労はこの上もありません。 C 遠き所よりいまする人あり。 遠い所からいらっしゃる人です。また、 あるは そのいたつきかぎりなし。 (大和) = ある者は ある者

ここながら

058 057 ある夜 あるは ⌇⌇⌇⌇⌇ ⌇

ずだ、

あるものは

【有る様こそは】 「あるは~、あるは~」の形で用いられることが多 く、 者は~、またある者は~」となる。②は 接続詞で用いられたときの意味。 ● [連語] ある者は。 ある場合は。 [接続詞] または。も しくは。 ① ② 「あるやう」が「わけ。事情」の意をもっており、「こ そは(あらめ)」とあわせて、「何かわけがあるのだ ろう」となのだ。 ● 何かわけがあるのだ ろう。 ① (連語) あるやうこそは C あるやうこそは 何かわけがあるのだろう と と思ひてものし

命 婦 たまふ。 (源氏) = 命婦がこのように言うのを、 思ってしがっていらっしゃる。 みゃう ぶ のかう言ふを、

、 こそば すからには 何かわけがあるのだろう ⌇⌇⌇⌇⌇⌇⌇⌇⌇⌇⌇ ⌇

41

立ち出づるほどの心地、

024 「優なり」と漢字をあてる。教養が感じられる上品 で優れているさまを表す。 「あてなり」 「えんな り」 「なまめかし」 「らうらうじ」などが類義語。 上品だ。優美だ。奥 ゆかしい。 素晴らしくよい。優 れている。 ① ② 「あれ」は「吾」と漢字をあてる。自分か他人か区別 できない、茫然自失の状態を表す。「に」は断定の 助動詞なりの連用形。文法的に大切! ● ぼうっとしている。 茫然自失の状態であ る。 ① いうに おぼえて、 上品に 感じられて、 いうに おはすなり。 ていらっしゃるそうだ。 127 【優】 (形動・ナリ) いう (なり) 060 あれかにもあらず 、現実のこ 、現 ぼうっとしていて ● 059 【吾かにもあらず】 (連語) あれかにもあらず C

ぼえで、 (更級) = 宮仕えするときの気分は、

ととも思われなくて、

あ れ 、 蟹もア ー ラず ーっと ぼうっとしている ⌇⌇⌇⌇⌇⌇⌇⌇ ⌇

うつつ ともお

かぐや姫のかたち

392 (徒然) = それでもまだ、その様子が 素晴らしく 545 A なほ事ざまの

= かぐや姫の容貌は

優 子のう なり 声、 上 ⌇ 品 ⌇ ね。 素晴らしい ⌇⌇⌇⌇⌇ わ

(竹取)

42

【如何(は)せむ】 (連語) いかが(は)せむ A 【如何で】 (副詞) いかで 副詞「いかが」自体に、疑問「どのように・どうして (~だろうか)」と、反語「どうして(~だろうか、い や~ない)」の意があるよ。 ● [疑問] どうしよう か。 [反語] どうしよ か、どうしようもな い。仕方がない。 ① ② 述部に願望・意志があるときは①願望。述部に疑問・ 反語に関する語があるときは②・③の疑問か反語。 「いかでか」 「いかでかは」の形でも用いられる。 ● [願望] (多く下に願 望・意志表現を伴って) なんとかして。 [疑問] (下に推量表現 などを伴って) どう して。どうやって。 [反語] (下に推量表現な どを伴っ) どうして (~か、いや~でない) 。 ① ② ③ とうろたえた。 このかぐや姫を得てしがな、見てしがなと、 このかぐや姫を手に入れたい、見たいものだと、 いかがはせん 。 と惑ひけり。 どうしようか いかがせむ

A (古今和) = 好きに思っても離れてしまう人を どうしようか、どうしようもない 。 いかで いかで 酒宴ことさめて、 (徒然) = 酒宴は興がさめて、 思ふとも離れなむ人を

062 061 イカで かいのは どうして ⌇⌇⌇⌇ ? なんとかして ⌇⌇⌇⌇⌇⌇ よ イカがせ ま(む ) ってくる、 どう ⌇⌇ しようか ⌇⌇⌇⌇ 、 どうしようもない ⌇⌇⌇⌇⌇⌇⌇⌇ ⌇

= なんとかして 情けなく幼きものをかくはするぞ。 情け容赦なく幼い者をこのようにいじめるの か 。

= どうして

(宇治)

(竹取)

43

いかめしう

A いかめしう し申し上げる。

あるじ = もてなしを

いと おごそかに

063 【寝汚し】 (形・ク) いぎたなし 064 漢字で「寝汚し」とあてて覚えると、「いぎたなし」 という語の感じがとてもよくつかめる。この「い」 は「寝(い)」であり、眠ることだよ。 い び ● ぐっすり眠っている 。 寝坊である。 ①② 「厳し」と漢字をあてる。現代語で「いかめしい」は 「威圧感がある」という意味だが、古語ではまず「お ごそかだ」という意味が大切だよ。 ● おごそかだ。 盛大である。 激しい。 ①②③ いぎたなし とおぼされぬるにこ 寝坊だ とお思いに その作法したるに、 その葬儀をとり行っているところに、 仕うまつる。 【厳めし】 (形・シク) いかめし

= 大変 盛大に

き高 ⌇⌇⌇ イカ飯 盛大 ⌇⌇ 、 おごそかだ ⌇⌇⌇⌇⌇ ⌇ い 梨

(竹取)

(源氏)

A 帰りぬるにやあらむ。 そ、もの思はぬさまなれ (和泉) = 帰ったのであろうか。わたしのことを なったに違いない。

寝坊だ

44

(連語) いざたまへ 「いさや」は相手の発言に即答できないときや、否 定的に受け流すときに発する語。「いざ(=さあ)」 とは違う語なので注意。 ● [副詞] さあ、どう かな。 [感動詞] さあねえ。 ① ② 「たまへ」は尊敬の意の四段動詞「たまふ」の命令形。 尊敬の気持ちを含んだ命令。ちなみに「いざ鎌倉」 は一大事が起こったときに言う言葉だね。 ● さあ、いらっしゃい。 さあ、参りましょう。 ① 、いかなるべき事にか」と、物憂 さあ、どうかな 、 いざた

(副詞/感動詞) いさ(や) 、これからど うなるのであろうか」としきりに憂鬱にお思いになるが、 A 女君はなほ、「 くのみおぼさるれど、 (とり) C (和泉) = このごろの山の紅葉はどんなに趣があるだろう。 いらっしゃい まへ いさや = 姉宮はそれでもやはり、「 【いざ給へ】 このごろの山のもみぢはいかにをかしからん。 。見む。 さあ、 に行こう。

066 065 いざ多摩へ 「 いさ 子 「 さあーどうかな ⌇⌇⌇⌇⌇⌇⌇ 」 、 や

、おいで」

さあいらっしゃい

⌇⌇⌇⌇⌇⌇⌇⌇ ⌇

45

春の = 新年を迎える いそぎ が先に出てきて気を取られて一日を送り、

093 068 ①②は「甚し」と漢字をあて、良い悪いにつけて程 度のはなだしいことを表し、 「いみじ」に近い。 ③の「痛し」は肉体的・精神的な苦痛を表す。 ひどい ⌇⌇⌇ 、いや ● [甚し] はなはだし い。ひどい。 [甚し] 素晴らしい。 立派だ。 [痛し] 苦痛である。 ① ② ③ 「急ぎ」と漢字をあて、「急ぐこと」=「急用」の意味 だったが、「急いでやること」 ≒ 「準備すること」と なった。動詞「急ぐ」も「準備する」の意があるよ。 ● 準備。用意。 急用。 ①② に取り重ねて催し行はるるさまぞ、 準備 と同時に行われる様子は、 まづ出で来てまぎれ暮らし、 いたく 吹きければ、押したたみ、 ひどく 吹いたので、たたんで、 し かし。 素晴らしい よ。 067 【甚し/痛し】 (形・ク) いたし 【急ぎ】 (名) いそぎ A いそぎ ⌇⌇⌇⌇⌇ 急ぎ の ⌇⌇ ⌇ 板 野 死 んだら あまりに ⌇⌇⌇⌇ 準備

あらぬ 急用

= 意外な

(徒然)

(徒然)

B 御屏風も、風の 女かしづきたる家いと (源氏) = 娘を大切に育てている家というのが、とても = お屏風も、風が

素晴らしい

(源氏)

46

【徒ら】 (形動・ナリ) 【労し】 (形・シク) いたはし 「徒ら」と漢字をあて、努力に見合った結果が得ら れず無駄だったと失望する感じを表す。「いたづら になる」=「死ぬ」も注意。 ● 無駄である。役に立 たない。 むなしい。 はかない。 何もない。すること がない。 (「いたづらになる」の 形で) 死ぬ。 むなし く終わる。 ① ②③ ④ 「労し」と漢字をあてる。現代語の「いたわる」に近 く、気の毒でかわいそうだから大切にしたい」と いうニュアンスだよ。類義語は 「いとほし」。 ● (病気や心労などで) 苦しい。 気の毒だ。かわいそ うだ。 大切にしたい。お世 話したい。 ① ② ③ いたづらに なりにけり。 なってしまった。 いたづらになり いたはしけれ ば、 いたはしう こそ覚ゆれ。 無駄に いたづら (なり) A にけり。 死ん でまった。

しゃう ……と書きて、そこに

上 人 = 上人が感激して流した涙は

にん の感涙 = ……と書いて、そこで

070 069 板 野 走 る、 苦し ⌇⌇ そう。 気の毒だ ⌇⌇⌇⌇ 、 お世話したい ⌇⌇⌇⌇⌇⌇ ⌇ いたづら ⌇⌇⌇ 、 むなしい ⌇⌇⌇⌇ 、 死ん ⌇⌇ じゃいたい

しても

無駄だ

(徒然)

(伊勢)

081 (枕) = 親などがかわいってる子は…… お世話したい と思われる。 B ので、 親などのかなしうする子は…… 己 おの が身し = 自分の体が (万葉) 苦しい

47

071 (名) いちのひと の御有り様はさらなり、ただ人も舎 「一の人」は「第一に優れた人」の意で、朝廷におけ る第一の席次の人を指す。主に摂政・関白を指すが、 太政大臣を指す場合もあった ● 摂政・関白。 太政大臣。 ①② ①は「傅く」と漢字をあて、「神に仕えるように大事 に育てる」こと。こちらが頻出する。②は「斎く」と 漢字をあて「心身を清めて神に仕える」の意。 い ー ● [傅く] 大事に育て る。 [斎く] 心身を清め て神に仕える。 ① ② いつき 侍りしを、

【傅く/斎く】 (動・カ四) いつく (源氏) = 亡き大納言が、宮中に差し上げようと、並々でなく 大事 に育て ましたけれども 【一の人】 のご様子は言うまでもなく、一般の貴族でも、警 護のための随身などをいただく身分は、素晴らしいと思われる。 C とねり 人など給は るきはは、ゆゆしと見ゆ。 (源氏) B 故大納言、内裏に奉らむと、かしこう 一の人 = 摂政・関白

072 ⌇⌇⌇⌇⌇⌇ 一 位 の人 折 ⌇ 摂政・関白 檻 ⌇ 受けて 大 ⌇ 太政大臣 丈夫 ⌇⌇ ? つく

し、

大事に育てる

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A ただ海に波なくして、 とのみなむ思ふ。 早く

【何時しか】 (副詞) みさきといふ所わたら たい と 074 073 い たい ⌇⌇ ⌇ 「何時しか」と漢字をあてる。下に願望表現を伴う と「早く(~したい・してほしい)」。願望表現を伴 わない場合は、「①いつ~か。②いつのまにか」。 ● (下に願望表現を伴って) 早く~したい・し てほしい) 。 ① 「何ら」と漢字をあてる。「ら」は場所や方向を示す 接尾語で、「何処。どのあたり」の意になる。感動 詞で使われるとさあ」の意。 ● どこ。どのあたり。 ① ー ⌇⌇ ドコ殴る いづら と問ふぞ悲し いつ鹿 早く ⌇⌇ 見 いつしか いつしか (+願望) 御崎という所を通過し つら

む ばかり思う。

(土佐) = 海に波が無くなって、

来るの?

【何ら】 (代名) いづら かりけ。 (土佐) = 生きているものと思って、死んでしまったことを忘れて は、やは死んだ人を どこ にいるのだと尋ねるのが実に悲 しいことだ。 C あるものと忘れつつなほ亡き人を

ドコ

49

C あはれをおぼし捨てて、ひたみちに (源氏) = 情愛をふり捨てなさって、ひたすらな思いで いでたた 出世をし

075 (副詞) 076 「いと・いたく」は通常、「たいそう・非常に」と程度がは なはだしいことを表すが、下に打消を伴うと部分否定に なる。例文の『源氏物語』冒頭箇所を暗唱して覚えよう! イ イ と あまり ⌇⌇⌇ 痛く ない ⌇⌇ 家出たつ ⌇⌇⌇⌇ ⌇ ● (下に打消表現を伴って) あまり(~ない) 。 それほど(~ない) 。 ① 「出で立つ」と漢字をあてる。つまり「出立する。出 発する」こと。他に「出仕する」「出世する」の意もあ るので注意しよう。 ● 出発する。 出仕する。 出世する。 ①②③ ようと思って、 やむごとなき際にはあら ぬ が、 ない いと・いたく 〔う〕 (+打消) 【出で立つ】 (動・タ四) いでたつ いでたち 出発し むと思て、 給ふ。 なさる。

いかで……世にも = なんとかして……世間でも

いでに

出発する

(源氏)

C 方で、 その里に なまめいたる女はらか住みけり。 (伊勢) = その里に たいそう 若々しく美しい姉妹が住んでいた。 いと (源氏) = あまり 高貴な身分では

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【幼けなし】 (形・ク) いとけなし = 幼い 子が、依然として乳房を吸い続けて横たわっている ことなどもあった。 C いとけなき けり。 (方丈)

083 「幼けなし」と漢字をあてて覚えておくと便利だよ。 「いときなし」とも言う。類義語は 「いはけなし」 「をさなし」。 ● 幼い。子供っぽい。 あどけない。 ① 程度がいっそうはなはだしくなる様子を表す。 副詞「いと」を重ねた「いといと」の転じたもの。 「いと(=たいそう・とても)」とは違うので注意だ。 ● いっそう。 ますます。 その上さらに ①② 子の、なほ乳を吸ひつつ臥せるなどもあり 、ものわびしきこと数知らず、 心細く思われることは数限りもなく、 その上さらに 五月に生まれて、 (副詞) いとど い

078 077 い トド いっそう ⌇⌇⌇⌇ 賢くなる 伊藤けなし ⌇⌇⌇⌇⌇ ⌇

たのは

子供っぽい

076 これは四十たりの子にて、 いとど 五 さつき 月にさへ生れて、 (大鏡) いとど (源氏) = いっそう

A = この子は四十歳の時の子で、

51

079 「厭ふ」と漢字をあてて覚えておこう。形容詞形が 「いとはし」だったね。「世をいとふ」=「出家する」 の意に注意。 伊藤婦 ● 嫌う。 (多く「世をいとふ」の 形で) 出家する。 ①② 「いとはし」は 「いとふ」の形容詞形。「厭はし」と 漢字をあてて覚えておくとニュアンスがつかめる よ。 ● 嫌だ。 わずらわしい。 ① れず、万 れず、すべて許されていた。 いとふ はなかなか人悪きわざなり。 079 C 080 かかるかたち有り様を、などて身を いとはしく 思ひ始 め給ひけむ。 (源氏) = このような美しい顔立ち・容姿であるのに、どうして自 分の身を 嫌だ と(出家を)思い始めなさったのだろう。 人に 【厭ふ】 (動・ハ四) いとふ 080 【厭はし】 (形・シク) いとはし C ⌇⌇⌇ 伊藤端 ⌇⌇ ⌇ いとは 嫌わ (源氏) = この世が辛いから 出家する のはかえって外聞が良くないことだ。 よろづ 許されけり。 (徒然) = 他の人から 世の憂きにつけて

っこ

嫌だ

人は

嫌いだ

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A 熊谷あまりに もおぼえず、 (平家) = 熊谷は(敦盛が)あまりにも

070 「いとほし」は、自分より弱い者や幼い者に対して 「気の毒だ。かわいそうだ」という心情を表すとき に用いた。類義語は 「いたはし」。 ● 気の毒だ。かわいそ うだ。 かわいいいじらし い。 ① ② 「辞ぶ・否ぶ」と漢字をあてる。「いなむ」とも言う。 感動詞「いな(否)」+「ぶ」。「ぶ」は動詞をつくる接 尾語だよ。 ● 断る。辞退する。 ① て、いづくに刀をたつべしと 気の毒 で、どこに刀をあてる (形・シク) いとほし 082 081 「 い 「いや ⌇⌇ よ」 いなび ぬ御心にて、 伊藤氏 ⌇⌇⌇⌇ ⌇ いとほしく

のがよいともわからなくて、

気の毒だ

【辞ぶ・否ぶ】 (動・バ上二/バ四) いなぶ (源氏) = そうはいってもやはり、他人の言うことに対しては、強 くも 断ら ないご性質で、 B さすがに、人のいふことは、強うも

ー 断る

って?」

53

B いはけなく たいそうかわいらしい。 つくし。 (源氏) = 子供っぽく

083 【言ひ消つ】 (動・タ四) いひけつ 否定する。 ①② 「稚けなし」と漢字をあて、精神的に子供っぼいさ まを表す。類義語として 「いとけなし」 「をさなし」 があるよ。 ● 子供っぽい。あどけ ない。 ① れ、 れ、災難をも招き寄せるのは、もっぱら 077 かいやりたる額つき、髪ざし、いみじうう 【稚けなし】 (形・ク) いはけなし 髪を手でかきあげた額の形や、髪の様子は、 「言ひ消つ」と漢字をあて、「人の言葉を打ち消す。 否定する」の意から、「悪く言う。非難する」の意に なったのだ。 悪く言う。 非難する。 ● 禍 わざはひ をも招くは、ただこの慢心なり。

084 ⌇⌇⌇⌇ 言 い ⌇⌇⌇ なぁ いいケツ

よ、

訳なし

子供だ

C いひけた このおごり高ぶる心のためである。 人にも 非難さ = 人からも

してると

悪く言う

(徒然)

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いぶかしく = 様子が知りたい

【訝し】 (形・シク) いぶかし けれど、我が人をやるべきにしあらねば、 が、自分の使いをやるのはよいことでもないので、 おもほしなる品々のあるに、 とお思いになる色々な階層の女があるので、 A いぶかし

= 気掛かりだ

086 085 誘拐なし ⌇⌇⌇⌇⌇ ⌇ イブ 、お 菓子 が 気掛かり ⌇⌇⌇⌇ よ、 知りたい ⌇⌇⌇⌇ わ 「訝し」と漢字をあてる。古語では、はっきりしな い不審なものを「気掛かり」に思い、それを「見たい。 知りたい」とする気持ちが強いということ。 ● 気掛かりだ。 見たい。聞きたい。 知りたい。 不審だ。疑わしい。 ①② ③ 「いふかひなし」は「言うだけの価値がない」→「つま らない」→「卑しい」となった。「いふかひなくなる」 の形で世を去る。死ぬ」の意にも注意だよ。 ● どうしようもない。 言っても仕方がない 。 つまらない。情けな い。身分が低い。取るに 足らな (「いふかひなくなる」 の形で) 世を去る。 死ぬ。 ① ② ③ ④ いふか

(源氏)

(伊勢)

【言ふ甲斐無し】 女、親なく、頼りなくなるままに、もろともに てあらむやはとて、 (伊勢) = 女が、親が亡くなって、生活のよりどころがなくなるにつれ て、男はこの妻とともに 情けない ままでよいものかと思って、 (形・ク) いふかひなし B ひなく

つまらない

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087 B 088 一、二日たまさかに隔つるをりだに、あやしう いぶせき 心地するものを、 (源氏) = 一日二日たまに間を置くときでさえ、不思議なくらい 憂 鬱な 思いがするのに、 「いぶかし(=気掛かりだ)」の意味に、「狭(せ)し (=狭くて窮屈な感じ)」が加わり、なんとなく心が 晴れず、うっとうしい感じを表す。 ● 憂鬱だ。気分が晴れ ない。 不快だ。むさくるし い。 ① ② 、 085 (形・ク) いぶせし A

今いまし ⌇⌇⌇ 幽霊 井伏氏 は ⌇⌇⌇ ⌇

憂鬱だ

● いまいましう ゆゆしき身に侍ればかくておはしますも (源氏) = 不吉な身ですので、こうしていらっしゃるのも、 忌み謹むべきで 、 聞くも = それを聞くだけでも (平家)

【忌ま忌まし】 (形・シク) いまいまし 恐ろしかりし事どもなり。 不吉で 恐ろしかったことである。 いまいましう 「いまいまし」は動詞「忌む」を重ねて形容詞化した もので、「忌み謹まなければならない」→「不吉だ。 縁起が悪い」となった。 不吉だ。 縁起が悪い。 忌み謹むべきだ。 不快だ。しゃくであ る。 ①②③

たよ、

不吉な

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【坐す・在す】 (動・サ変/サ四) います いまする まします めれど、 ようだが、 【在すがり】 (動・ラ変) いますがり 坐す)」「まします(坐します)」も、「います」と同義 の尊敬語。丁寧語として解釈しないように注意。 ● いらっしゃる。 (「あ り」の尊敬語) お出かけになる。お いでになる。 (「行く」 「来」の尊敬語) [尊敬の補動] ~てい らっしゃる。 ① ② ③ 「在すがり」と漢字をあて、ラ変動詞で「あり」の尊 敬語。「いますかり・いまそがり・いましがり」と も言うので注意。 ● いらっしゃる。 (「あ り」の尊敬語) [尊敬の補動] ~てい らっしゃる。 ① ② 」と言ふを見れば、 いらっしゃる いますがり けり。 いらっしゃっ た。 。 ていらっしゃる 。 ー 「います」は「あり」 「行く・来」の尊敬語。

C 「かかる道はいかでか (伊勢) = 「このような道にどうして いらっしゃる のか」と言うのを見ると、 大臣の御女、二人ながら后に (大鏡)

090 089 い ⌇⌇⌇⌇⌇⌇ ⌇ います ぐに ⌇⌇⌇⌇⌇⌇ ⌇ 「ます(座す・ 鱒狩り

= 大臣様の御娘は、二人とも后で

いらっしゃる

染 殿 かの大将は、才 ざえ もかしこく = あの大将は、学識も優れ

A = 染殿の内侍という方が いますがり そめ どの の内 ない 侍 し といふ

いらっしゃる

(大和)

(宇治)

57

091 C 092 疎き人には聞かせじと思ふを、行きて尋ねよ。母に い まだしき に言ふな。 (源氏) = 関係のない人には聞かせたくないと思うので、行って様 子を見てきなさい。母には まだ早い ので言ってはいけない。 とらしい。 ①② 「未だし」と漢字をあてて覚えておくと便利。漢文 調の文章によく用いられる。和文や和歌において は 「まだし」を用いることが多いよ。 ● まだその時期ではな い。未熟だ。 ① いまめかしく きららかならねど、 (徒然) = 現代風で もなく、けばけばしくもないけれども、 ※ 打消「ず」の已然形「ね」は、「いまめかし」と「きららかなり」の 両方にかかっている。 【今めかし】 (形・シク) いまめかし 462 【未だし】 (形・シク) いまだし C 動詞「いまめく」を形容詞化したもの。対義語は「ふ るめかし(=古風だ)」。「めく」は接尾語で、「~の ようになる・~のように見える」の意。 今 お ● 現代風だ。 当世風だ。 軽薄だ。今さらわざ ⌇⌇⌇ 今ダシ ⌇⌇⌇⌇ ⌇

取るの、

まだ早い

するのが

めかし

現代風

58

094 動詞「いむ」を原義とし、程度のはなはだしい状態 を言う語。プラスイメージの場合は「素晴らしい」、 マイナスイメージの場合は「ひどい。大変だ」と訳す。 ● 程度がはなはだしい 。 素晴らしい。 ひどい。大変だ ①②③ 「忌む・斎む」と漢字をあてる。①の「嫌って避ける。 不吉として避ける」の意味が入試では大切だよ。 ● 嫌って避ける。不吉 として避ける。 身を清め慎む。 ① ② いみじく 制し申せば、 お止め申し上げるので、 いみじけれ 。 素晴らしいの 。 (形・シク) いみじ 【忌む・斎む】 (動・マ四) いむ 「月の顔見るは いま むこと」と制しけれども、 不吉として避ける はなはだ

御乳 世は定めなきこそ、 (徒然) = この世は無常であるからこそ、

A = 御乳母たちも不吉なので、

094 093 井村嫌って避ける ⌇⌇⌇⌇⌇⌇ ⌇ い い ミジ ンコ、 はなはだ ⌇⌇⌇⌇ ⌇ 素晴らしい ⌇⌇⌇⌇⌇ 、いや ひどい ⌇⌇⌇ ⌇

めのと 母どもも、ゆゆしとて、

(夜の)

C ある人の、 = そこにいる人が、「月の面を見るのは べきことだ」と止めたけれども、

(竹取)

59

夜は 寝もしない いをねず 眠らず

C いも寝ず

= 夜は 家思ふと (万葉) = 故郷の家を思って

095 【答ふ・応ふ】 (動・ハ下二/名) A 096 動詞「いらふ」は「答ふ・応ふ」と漢字をあてる。「い らへ/ず」=「答えない」、「いらふれ/ば」=「答え たので」などの形に注意。名詞形は「いらへ」。 イラフ 人、 いらへ んでも 返 ⌇ 返事をする 事せい ⌇⌇⌇ ⌇ ● [動] 返事をする。 答える。 [名] 返事。答。 ① ② 漢字で「寝も寝」と書く。「いをぬ・いのぬ」とも言 う。下に打消表現を伴って、「いもねず(=寝ない)」 となる場合が多いよ。 ● 寝る。眠る。 ① いらへ んと、 返事をし 。二十日の夜の月いでにけり。 。気がつくと二十日の夜の月が出ている。 をれば にいると、 【寝も寝】 (連語) いもぬ イモぬ ⌇⌇ ⌇

くぬく

寝る

(土佐)

いらふ ・ いらへ ようと、 ※ 「と」の前の「ん(む)」は、意志「~よう」となることが多い。 いま一声呼ばれて (宇治) = もう一度呼ばれてから

60

ゴロゴ例文チェック 単語 ~ 単語

(10)

(9)

(8)

(7)

(6)

(5)

(4)

(3)

(2)

(1)

去りがたき妻、 (堤) 男の子で、何も怖がらず、( 身分の低い )者をお呼び寄せになって、 やがてそ興尽きて、見にくく いぶせく 覚えければ、 (徒然) すぐにそ興味がなくな 、見苦しく( 不快に )感じられたので、 。犬を蔵人二人してうち給ふ。死ぬべし。 (枕) ああ( ひどい )。犬を蔵人二人がお打ちになっている。死ぬに違いない。 訳 男の童の、ものおぢせず あな いみじ

せし間に (古今和) (撰集) 別れづらい妻が、( かわいい )子を振り捨てて、 あやしが言へど、使ひのなければ (枕) 不審に思って言うけれど、使者がいないで( どうしようもなく )て、

いかで 月を見ではあらむ。 (竹取) ( どうして )月を見ないでいられよう( か、いや )いられ( ない )。 さこそ世を捨つる御身といひなが御 (平家) いくら世を捨てている御身だといっても、お( 気の毒で )す。 いとほしき いふかひなき 花の色はうつりにけりな いたづらに わが身世にふるながめ

047 096 連歌しける法師の、行願寺の辺 ほとり に あり けるが、 (徒然) 連歌をたしなんでいた法師で、行願寺の辺りで( 生活してい )た者が、 ありがたき 御かたち人なむ。 いたはしう こそ。 て、 訳 訳 訳 訳 訳 訳 訳 訳 訳 后の宮の姫宮こそ、…… 子を振り捨てて、 いふかひなく を召し寄せて、

(源氏) 后の宮の姫宮こそは、……( すぐれて美しい )ご容貌の方でございます。 桜の花の色も私美貌も色あせてしまったなあ。( むなしく )私が世 を過ごしてもの思いにふけり、春の長雨が降り続いた間に。

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B 心にかなはぬ = 思うとおりにいかない うきよ (新古今) = この山里に 俗世間 を避けて住むような友人があってくれればなあ。 かしこき仰せごとをたびたび = 帝の恐れ多いお言葉を何度も 御琴の音をだに = お琴の音さえ お聞きし (小夜衣) 山里に

097 【承る】 (動・ラ四) うけたまはる 098 「承る」と漢字をあてる。「受く」 「聞く」 の謙譲語。今でも「お話を承ります(=お聞きいた します)」など使う場合があるよね。 う 毛 する ⌇⌇ ● お受けする。いただ く。 (「受く」の謙譲語) お聞きする。 (「聞く」 の謙譲語) お引き受け申し上げ る。 (「引き受ける」 「承 諾す」の謙譲語) ① ② ③ 中古語の「うきよ」は「憂き世」と漢字をあてる。「浮 き世」と書くほうは近世語で、「浮世草子」などでは 「楽しむべきこの世」という意味で用いられるよ。 ● つらくはかない世の 中。俗世間 ① ② のならひなれば、 つらい世 の定めなので、 うけたまはり ながら、 お受けし ながらも、 うけたまはら で、久しくなり侍りにけり。 ないで、久しくなってしまいました。 【憂き世】 (名) うきよ B に お ⌇ ー 憂き世 らいよ ⌇⌇⌇ ⌇ 憂き世 いとむ友もがな

⌇ つらくはかない世の中

「引き受ける」 っ!

玉張る

受け ⌇⌇

(源氏)

(源氏)

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A うし つらい 世の中ことわざげく (紫式部) = この世の中はいろいろな人がいて 気に食わない ものでございました。 なほ = ますます (伊勢)

【憂し】 (形・ク) うし 【後ろ見】 「憂し」と漢字をあてて覚えよう。自分の思い通り にならず晴れ晴れとしない気持ち。「ものうし」= 「なんとなくつらい」の形でも出てくるよ。 ● つらい。嫌だ。 気に食わない。 憎い。 つれない。無情だ ①②③ 「後ろ見」と漢字をあてる。私的に日常的な世話を する人の場合と、公的に補佐する後見人の場合と があるよ。 ● 補佐をすること。ま た、その人。 後見人。 世話をすること。ま た、その人。 ① ② と思ひつつなむありける。 と思っているのだった。 うき ものに侍 り 100 099 後ろ をするなむ、行く

食わない ⌇⌇⌇⌇ ⌇

牛 になるのは つらい ⌇⌇⌇ 、 気に ⌇⌇

B ただ人にて、おほやけの御 安心できそうであることだと、ご決心なさって、 = 臣下として、朝廷の御

(名) うしろみ うしろみ さきも頼もしげなることと、思しさだめて、 (源氏) 後見人 をつとめることが、将来も

ている

後見人

⌇⌇⌇ ⌇

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101 B 102 後の世も、思ふにかなはずぞあらむかしとぞ、 うしろ めたき に、 (更級) = 死後の世も、きっと思い通りにはいかないだろうよと、 心配だ けれど、 ような妻などに任せて、 ※ 体言の前の「む(ん)」は、連体形で婉曲「~ような」となる。 102 【後ろめたし】 (形・ク) うしろめたし A 人となして、 うしろやすから 安心できる (蜻蛉) = 成人させて、

101 「後ろ安し」と漢字をあてる。「後ろ(=後々のこと)」 が「やすし(=安心だ)」ということ。対義語は 「う しろめたし」。ペアで覚えておこう。 後ろ に ● 安心だ。 頼りになる。 ① 後方の見えないところが心配だという感じ。①の 意が大切だ。②は中世以降の用法で数も少ない 対義語は 「うしろやすし」。 ● 心配だ。 気掛かりだ。 うしろ暗い気がと がめる。 ①② む妻などにあづけてこそ、 【後ろ安し】 (形・ク) うしろやすし ⌇⌇⌇ 後ろ の ⌇⌇⌇ ⌇

かに

心配だ

やすし

安心だ

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B 給ひて、七 翁をいとほしく、かなしと思しつることも (竹取) = 翁を気の毒で、いとしいとお思いになったことも 消え てしまった。 うせ = 亡くなり

うせ

ぬ。

【失す】 (動・サ下二) うす なさって、四十九日の御法要を、安祥寺で行った。 A ⌇⌇ ⌇ 「失す」と漢字をあて、「なくなる。消え去る」こと を指すが、「この世からいなくなる。死ぬ」の意が 入試では大切だよ。 ● 死ぬ。この世からい なくなる なくる。 消え去る。 ① ② 「転」と漢字をあてる「うたた」が転じたもので、事 態がどんどん悪い方向に進み、程度がはなはだし くなることを表す。 ● ますます。ますます ひどく。 嫌だ。情けなく 異様に。気味悪く。 ① ②③ うたて う なななぬか 七日のみわざ、安祥寺にてしけり。 (伊勢)

104 103 歌 っ て みると、 ますます ⌇⌇⌇⌇ っ す ら

死ぬ

(副詞) うたて 三日月のさやにも見えず雲隠り見まくぞほしき このころ (万葉) = 三日月がはっきり見えず、雲に隠れているので、見たい ことだ。 ますますひどく この頃は。

ひどい ⌇⌇⌇ 、 情けない ⌇⌇⌇⌇ ⌇

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104 人の物言ひなども ひて失せにけり。 (大和) = 人がうわさをしていることなども 、やはり俗世で暮 らすのはやめようと思い、そう言って姿を隠してしまった。

105 嫌だ ⌇⌇ 「 (形・ク) うたてし 中古では語幹のみの用例が多く感動表現で用いら れ、「ああ嫌だ」と訳す。形容詞「うたてし」は中古 末から一般化した。 「 歌 っ 「 嫌だ ⌇⌇ 、 情けない ⌇⌇⌇⌇ 」 ● 嫌だ。嘆かわしい。 情けない 気の毒だ。 (語幹「うたて」のみで 使われ) ああ嫌だ。 ①②③ 「うたて」同様、事態がどんどん悪い方向に進み、 それを不快に思う気持ちを表す。嫌だけど、どう しようもない不快感を表すよ。 ● 嫌だ。不愉快だ。 ① 「よよ」と泣きければ、 やな。 なあ。 うたてき 。 情けない 有様だった。 【うたて有り】 、なほ世に経じと思ひ言 (連語) うたてあり 嫌で C 106 うたてあり 歌 っ 「 」

さん」

てアリ

うたてし (平家) = 褒美をもらおうとして尋ね求めたが 勧 賞 蒙 けん じゃう かうぶ らんとて尋ね求むるぞ

B さくりあげて、 = しゃくりあげて、「おいおい」と泣くので、 嫌だ

マウマさん」

てシ

(宇治)

66

伊勢の斎 さい 宮 ぐう に うち = 伊勢の斎宮に

【内・内裏】 にお入りになられるけれども、 (名) うち ⌇⌇ ? 「内・内裏」と漢字をあてる。「うち」は「内部」など の意もあるが、大切なのは①と②の意。「内裏」は「だ いり」以外にも「うち」とも読む。入試頻出だよ! ● 宮中。内裏。 天皇。帝 ①② 「打ち付け」と漢字をあてる。物を打ち付けるよう に急に物事が起こる様子を表し、そこから「突然で ある」の意が出てきた。 ● 突然である。だしぬ けだ。 軽率である。 ① ② へ入らせ給ふに、 のお使いとして参上したところ、 されば、 うちつけに 、海は鏡の面のごとなりぬれば (更級) 宮中 B またの年の八 は 月 づき に、 内裏 = 翌年の陰暦八月に、 の御使ひにて参れりければ、 天皇 【打ち付け】 (形動・ナリ) うちつけ (なり) A (土佐) = そうしたら、 突然に 、海は鏡の表面のように静かになったので、 うちつけなる 心かな。 軽率な 心だなあ。 108 107 打ち付け ⌇⌇ 死 うち が ⌇⌇ ? まして

宮中

天皇

(伊勢)

いと = まったく

た顔面、

突然

(源氏)

67

C はじめこそ心にくもつくりけれ、今は (伊勢) = 女は初めは奥ゆかしくとりつくろっていたが、今は 気を許し て、 うちとけ 寝たるに、 くつろいで 寝ているのに、

【打ち解く】 (動・カ下二) うちとく うちとけ

人はみな

て、

= 人はみな

109

【愛し・美し】 (形・シク) うつくし 110 「愛し」と漢字をあてる。元来肉親、特に幼少の愛 らしいものに対して用いた。それが徐々に現代語 の「美しい」の意になっていったのだ。 う っ、 つくし ● かわいい。かわいら しい。 きれいだ 立派だ。みごとだ。 ① ②③ 「打ち解く」と漢字をあてる。現代語の「打ち解ける」 と同じで、くつろいだり、男女の隔たりがなくな る場合に使うよ。 ● 気を許す。打ち解け る。くつろぐ。 安心する。 油断す ① ②③ うつくしう てもちたまうたりけるを、 かわいい 娘をもっていらっしゃったが、 うつくしき は物も、 ⌇⌇⌇⌇ ぞ うち 、 と ⌇⌇⌇⌇ ⌇

気を許す

(和泉)

たくみに造れる、

= 大納言がたいそう

= 巧みに作った、

A 大納言のむすめいと 立派な 容器も、

んぼ

かわいい

(徒然)

(大和)

68

(副詞) うつたへに 忘れてしまおうと言っているのではなくて、 人妻といヘば触れぬものかも C うつたへに 人妻というと触ないものでもあるま。 消えはて給ひぬるに、さらに (小夜衣) = 息が絶え果てなさったので、まったく 現実 とは思われなさらない。 にも似ず、たけく厳 いか きひたぶる心出できて、 (源氏) = 正気 の時と違って、気が強くて荒々しい恨み心が出て来て、 A (土佐) = ことさら うつたへに (万葉) = 決して うつつ

【現】 (名) うつつ さら ⌇⌇ われた 「うつたへに」は下に打消・反語の表現を伴って、「こ とさら(~ない)。決して(~ない)」の意になるよ。 ● (下に打消・反語表現 を伴って) ことさら (~ない) 。 決して (~ない) 。 ① 「現」と漢字をあてる。「夢」の反対の語。「夢かうつ つか幻か」「夢うつつ」などと現代語でも使うので、 混同しやすいので注意だ。 ● 現実。 正気。 ①② 忘れなむとにはあらで、 うつつ とも覚え給はず。 112 111 打つ ⌇⌇ だ 訴えに 打

行こう、

⌇ ことさら(~ない)

イチロー、

現実

69

C まことの 難かるべしかし。 (源氏) 才能のある人物 と、それは難しいことだろうね。 = 真に

113 【移ろふ】 (動・ハ四) うつろふ 「散 る」などの意もあるが、「色あせる」「心変わりする」 の意が入試では頻出するよ。 色あせ ⌇⌇⌇ て 心変わり ⌇⌇⌇⌇ されるのは ● 色あせる。衰える。 移り住む。 移動する。 色づく。 散る。 心変わりする ①②③④⑤ 「器物」と漢字をあてる。「容器」「道具類」の意もあ るが、入試では「才能」の意が大切だよ。 ● 才能。能力。 容器。 ①② うつろひ ぬばたまの黒髪変はり うつろふ 。 移り住む 。 【器物】 (名) うつはもの となり得る者を、選び出そうとする 114 「色づく」 うつはもの となるべきを、取り出ださむには、 「移ろふ」と漢字をあてる。「移り住む」 打つは 、 ⌇⌇ で

すごい

もの

才能

B 紅の色も あせ て、黒髪も変わり、 さるべき故ありて、東山なるところへ (更級) = しかるべきわけがあって、東山にある、とある所へ (万葉) = 紅の色も

う っ! つろう ございます。

70

116 「疎し」と漢字をあてる。「疎遠で親しみがもてない 感じ」が原義。対義語は「親(した)し」。 形容詞「う とまし(=嫌だ。気味が悪い)」も一緒に覚えよう。 ● 親しくない。 疎遠だ。 よく知らない。関心 が薄い。 よそよそしい。 ①② ③ 動詞「疎む」の形容詞形で、「疎まし」と漢字をあて る。嫌な感じや気味が悪いものに対して用いられ たのだ ● 嫌だ。 気味が悪い。 ①② 人にしあらざりければ、家 人でもなかったので、主婦が送別の杯をすす 食ふべき心地もせず。かへりては うとましく なりにけり。 うとまし 。 気味が悪い 。 【疎し】 (形・ク) うとし B 【疎まし】 (形・シク) うとまし いへ とう じ さかづきささせ うとき 刀 自

て、 (伊勢)

めさせて、

= 親しくない

116 115 う っ! トマ ト 死 んじゃ 嫌だ ⌇⌇ 、 気味が悪い ⌇⌇⌇⌇⌇ ⌇ らない ⌇⌇⌇ から ⌇⌇⌇⌇⌇ ⌇ ⌇

う っ と ー し ーやつは よく知 ⌇⌇⌇ 親しくない

C (宇治) = 食べたいという気持ちもしない。かえって 嫌に なってしまった。 手をたたき給へば、山彦の答ふる声いと (源氏) = 手をたたきなさると、木霊の反響する音がとても

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C さぶらふ人々の泣きまどひ、 上 おはしますを、 (源氏) = お仕えする人々が泣き悲しんで取り乱し、 絶え間なく流れておいでになるのを、

117 【馬の餞】 (名) 送別会。餞 せん 別 べつ 。 ① 「うへ(上)」は上方・上部・物の表面の意もあるが、 なんといっても「天皇」の意が大切。建物に使われ る場合は、②の意となるよ。 ● 天皇。帝。 清涼殿。清涼殿の殿 上の間。 ①② むまのはなむけ 送別会 をし、別れを惜 118 送別会 ⌇⌇⌇ だ うへ ⌇⌇ だ も御涙のひまなく流れ も御涙が 「馬の餞」と漢字をあて、旅立つとき、乗る馬の鼻 を行く先の方向に向けて旅の安全を祈ったところ から、送別会・餞別」の意になった。 ● 【上】 (名) うへ 天皇

っ、

天皇

C し、別れ惜しみて、 (土佐) = 乗船予定の地で、彼の地の人が、

う 〔む〕 まのはなむけ 船に乗るべきところにて、かの国人、

しんで、

馬の鼻むけ

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【呻く】 (動・カ四) うめく たるも、 たのも、 C ⌇⌇ ⌇ 「呻く」と漢字をあてる。「嘆息する」の意もあるが、 「苦心して詩歌を詠む」=「苦吟する」が大切だよ。 ● 苦吟する。苦心して 詩歌を詠む。 嘆息する。ため息を つく。 ① ② 「うらなし」の「うら」は心の意。そこで「うらなし」 =「心に何もない」→「隠し隔てがない。ざっくばら んだ」となった。 ● ざっくばらんだ。隠 し隔てがない。 うっかりしている 気遣いをしない。 ① ② てかへし。 て返歌をして。 120 119 裏話 梅食 ク ⌇ ー、 ギン ⌇⌇ ギン 苦吟し うめき

C あまたたび誦 ずん じて、 うめき = 何回も口ずさんで、 「あな」と高やかにうちいひ、 嘆息し

= 「ああ」とかん高く声にだし、

うと、

苦吟する

(大鏡)

する

(枕)

(形・ク) う なし をかしきことも、世のはかなき事も、 うらなく 言ひ慰ま んこそうれしかるべきに、 (徒然) = 面白いことも、世の中のつまらないことも、 ざっくばら んに 語って心が晴れるならばそれこそ、うれしいに違いな いが、

ざっくばらん

⌇⌇⌇⌇⌇⌇ ⌇

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(形・ク) うるさし うるさし 。 嫌味だ 。

B こまかなることどもあれど、 うるさしけれ ば書かず。 (徒然) = 字が下手だからといって、人に書かせるのは = 細々したことも書いてあるが、 面倒な のでここでは書かない。 見苦しとて、人に書かするは

121

⌇⌇⌇⌇⌇ ⌇ うるさ い 面倒 ⌇⌇ で 嫌味だ ⌇⌇⌇ なぁ

【麗し・美し】 (形・シク) うるはし A 122 「麗し」と漢字をあてる。正式で端正で整っている 美しさを言う。ただし、それをけなして「格式ばっ ている」となる場合もあるのだ 。 ウ ー ● 端麗である。 立派だ。 整っていて美しい。 格式ば る。 仲がよい。 ①②③④ 現代語でも「人間関係がうるさい(=面倒だ)」と使 うことがある。ただ、「口やかまし」という意で の用法はないので注意しよう。 ● 面倒だ。わずらわし い。わざとらしくて嫌味 だ。すぐれている立派 だ。 ① ② ③ うるはしう わたして、 きちんと整えて美しく 作りめぐら

(源氏)

同じ小柴なれど、

して、

= 他と同じ小柴垣だが、

っかり

ルはし

整っている

(源氏)

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C まことにまめやかに ふさぎこんで うんじ (平中) = 男はすっかり 嫌になっ て、それっきり(女のもとに)手紙も出さない。 A 我は、三巻、四巻をだに、 え (枕) = 私は、三巻か四巻さえも、読み切ることは できないだろう 。 (枕) = 本当に心底 男はかぎりなく

29 嫌になる ⌇⌇⌇⌇ ⌇ 「鬱ず・捲ず」と漢字をあてて覚えると、「ふさぎこ む。嫌になる」の雰囲気がよくわかる。ちなみに「鬱」 の字の画数は 画。嫌になるよね。 ● ふさぎこむ。 嫌になる。 ①② 副詞「え」は下に打消表現を伴って、不可能の意で 使われる場合が多い。「え~ず」以外にも、「え~じ」 「え~まじ」 「え~で」などの形があるので注意。 ● (下に打消表現を伴っ て) ~することがで きない。 ① 、つらがると、 てそのままにものも言はず。 【鬱ず・捲ず】 (動・サ変) うんず うんじ 、心憂がれば、 (副詞) え(~ず) 見はて じ 。 124 123 え ー、 ⌇⌇⌇⌇ の? う ー ん

、 ず っと ふさぎこん ⌇⌇⌇⌇⌇ で

っと

できない

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なく、 (徒然) = 避けられない くなる際限もなく、

125 【え成らず】 C 126 「なんとも表現できない」が原義だが、ほとんどが ほめる場合で使われるので、「なんとも言えないほ どよい」となった。 ● なんとも言えないほ どよい。並大抵では ない。 ① 「え避らず」=「避けることができない」。「え~ず」 は不可能を表し、「~できない」と訳す大切表現 だったよね。 ● 避けられない。やむ をえない。 ① えならぬ 調度どもならべ なんとも言えないほどよ ことのみいとど重なりて、事の尽くる限りも ことばかりがますます重なって、俗事のな (連語) えならず 【え避らず】 (連語) えさらず 唐の、大和の、めづらしく、 B えさらぬ

え ー 奈良漬 いほどよい ⌇⌇⌇⌇⌇⌇ ⌇ え ー 皿ず ぅえったい 避けられ ⌇⌇⌇⌇ ない ⌇⌇ ⌇ 、

おき、 (徒然) = 中国のや、日本のや、珍しく、 い 家具をいろいろと並べておいて、

なんとも言え ⌇⌇⌇⌇⌇⌇

76

097 ゴロゴ例文チェック 単語 ~ 単語 後ろ見 なるべし。 うたて おぼさるれば、太刀を が侍りしも、 126 たのめぬ月はめぐり来て (新古今) あの人は( 無情だ )。あてにさせない月はまためぐってきて (源氏) 小納言の乳母と、人が呼んでいるようなこの人は、この子の( 世話を する人 )であるのだろう。 なりける心なしのしれ者かな。 うつくき 訳 訳 訳 訳 訳 訳 訳 訳 めで (1) (2) 人ぞ 小納言の乳 めのと 母とぞ、人言ふめるは、この子の

(9) (10) (11) (12)

(5) (6) (7) (8)

(4)

(3)

御心 人ごとに、わが身に うとき にさぶらへば、 (源氏) その方面も備えていて、( 立派で )ございました。 訳 いかなる所にかこの木は候ひけむ。あやく たき物にも。 (竹取) どういう所にこの木はあたのでしょうか。不思議なほど( 端麗で ) 結構なものですね。 訳 もし給ふ人に、あるべきことは違へ給はず。 (源氏) ( 格式ばって )振る舞いなさる方なので、当然そうあるはずのことは、 違えたりなさらない。 訳 うらなく その方も具して、 うるはしく

うたて 色濃く咲きたる木のやうだい うつろひ て過ぐしける世の人笑へならむ事を、 (源氏) ( うっかりし )て過ごしたことが人々の物笑いになるようなことを、 訳 うるさく なむ侍りし。 ことをのみぞ好める。 (徒然) 誰でも、自分が( よく知らない )ことばかり好んでいる。 どころ にさしのぞきたまひて、 (源氏) 翌日、( 殿上の間 )にお仕えしてると、台盤所にちょっとお顔をお 出しになって、 またの日、 うへ 台 盤 所 だい ばん

うき (宇治) ( 情けない )分別なしの馬鹿者よ。 ものに襲はるる心地して……。 引き抜きて、 (源氏) 物の怪に襲われる気持ちがして……。( 気味悪く )お思いにならずに はいられないので、太刀を引き抜いて、 て、こよなくおぼし慰むやうなるも、 うるはしく

(大鏡) 色濃く花が咲いている木で、状態の( きれいな )木がございましたが、 (源氏) お心が別の女性に( 移っ )て、格別にお気持ちが休まるようであるのも、

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いと えんなる 優美な

= とても (源氏) = 「いつものように、 思わせぶりだ 「例の、

127 (形動・ナリ) B 128 おっとりしていて穏やかなものごしを指す。「おほ どかなり」とも。平安時代の貴族社会の女性の一つ の理想像だったのだ。 いる ⌇⌇ ⌇ ● おっとりしている。 穏やかだ。 気楽だ。 素直である。 (「おいらかに」の形で) 率直に。 ① ②③ 「艶なり」と漢字をあてる。基本的に①の意味だが、 ②と③にも注意。類義語に 「あてなり」 「いう なり」 「なまめかし」があるよ。 ● 優美だ。しっとりと 美しい。 色っぽい。 思わせぶりだ ① ②③ つれなうもてなし給へるさまの、いと そしぬ顔をしていらっしゃるの 匂ひかな。いづくより吹きくる風にや。 香りだな。どこから流れてくる匂いだろう。 」と憎み給ふ。 おいらか (なり) 060 【艶】 (形動・ナリ) えん (なり)

B 艶なる

かずき

えんなり

優美だ

392

024 」と憎まれ口をおききになる。

⌇⌇⌇ ⌇

(しのび)

いと 心苦しければ、 (源氏) おっとりして が、とても気の毒なので、 = きわめて

おいらかに

おいら感 度が おっとりして ⌇⌇⌇⌇⌇⌇

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C 木にのぼせて梢 こずゑ を切らせしに、 (徒然) = 有名な木登りと評判だった男が、人を に登らせて梢を切らせたときに、 高 名 かう

【掟つ】 (動・タ下二) おきつ 沖 「掟つ」と漢字をあてる。あらかじめ決めておくこ とで、それを他人に要求する場合は「指図する」と なる。下二段活用なので「おきて/て」などに注意。 ● 指図する。 決めておく。計画す る。取り計らう。 ①② ③ て、高き 指図し て、高い木 おきて 【翁/嫗・老女】 (名) おきな/おうな C 二人、 嫗 といきあひて、 老人 二人が、 「翁(おきな)」は老人が自分のことを「このじじいめ が」と謙遜して使う場合もある。「嫗(おうな)」は「お みな」の転じたもの。 ● [翁] 老人 。 [嫗・老女] 老女。 ①② 婆さん ⌇⌇⌇ ⌇ 翁

130 129 お ー きな 爺さん ⌇⌇⌇ 、背 負うな で 釣 ⌇⌇ を 指図する ⌇⌇⌇⌇ ⌇ る

みゃう の木のぼりといひしをのこ、人を

計画

うたてげなる

= 異様な感じのする

老女

(大鏡) とたまたま出会って、

79

553 後れ きこえたまはむことをばいみじかるべく思し、 (源氏) = 取り残される ようなことをとても耐え難いようにお思いになり、 十二にて殿に おくれ 給ひし程、 (源氏) = 十二歳で父君に 先立たれ なさったころ、 乱り心地はまだ おこたり 果てねど、 = 病気はまだ 治り おこたる 間なく漏りゆかば、 = 休む 間もなく水が漏っていけば、 【後る・遅る】 (動・ラ下二) おくる A

131

おこた ⌇⌇⌇⌇⌇ ⌇ お ー クル クル、 取り残され ⌇⌇⌇⌇⌇ て 死に遅れる ⌇⌇⌇⌇⌇ ⌇ にあた

398 132 「怠る」と漢字をあてる。対義語としては 「なやむ」 「わづらふ(=病気になる)」、 「あつし(=危篤 だ。病気が重い)」などがあ ● 病気が治る。快方に 向かう。 怠ける。休む。 ① ② 「後る・遅る」と漢字をあてる。現代語でも「人にお くれをとる」と③の意味で用いるが、なんといって も①②の意味に注意だよ。 ● 取り残される。あと に残る。 先立たれ 死に遅 れる。 劣る。 ① ② ③ きっていないけれど、 023 【怠る】 (動・ラ四) おこたる A

病気が治る

(徒然)

(大和)

80

鞍 馬

る。

A (大和) = 鞍馬という所にこもってたいそう厳しく くら ま といふ所に籠 こも りていみじう

【行ふ】 (動・ハ四) おこなふ てい 134 133 オヅ する ⌇⌇ ⌇ 「行ふ」と漢字をあてる。何かを「行う」という意味 も持つが、「仏道修行する。勤行する」という意味 が重要だよ。 ● 仏道修行する。勤 ごん 行 ぎょう する。 する。行う。 ① ② 「怖づ」と漢字をあてて覚えると便利。現代語でも 「おずおずと(=おそるおそる)」と使うよね。 ● 怖がる。恐れる。 ① 行ひ をり。 仏道修行し

お ー 粉フ リフリ、 仏道修行 ⌇⌇⌇⌇

【怖づ】 (動・ダ上二) おづ おぢ ず、 ず、 ※ 「いと~ず」は部分否定で「それほど(あまり)~ない」。 B をさなき心地にも、いといたうも 怖がら (源氏) = 幼い心にも、それほどひどくも

の魔法使いを

怖がる

⌇⌇⌇ ⌇

81

135 【大殿】 136 「大殿」と漢字をあて、元々は貴人の邸宅の敬称だっ た。それが「大臣」と書いて、大臣・ 公 く 卿 ぎょう の敬称と なっのだ。 お っ ● 大臣・公卿の敬称。 (「大臣」とも書く) 御殿。 ① ② 「おと」は、「音に聞く(=評判が高い)」、「音もせず (=便りもない。訪れもない)」の形が大切だよ。 ● 評判。うわさ。 便り。 訪れ。 音沙汰。 音。響き声。 ①②③ 音 にも聞きつらん、いまは目にも見給へ。 は、法 おとど の御五男、 大臣 の御五男で、 おとど のあたりにこそ、しげけれ。 御殿 の付近には、大勢いる。 (名) おとど ⌇⌇ だい 夫 ⌇⌇ を 便り ⌇⌇ にする

B 昔、男、久しくもせで、 (伊勢) = 昔、ある男が、長い間(女に) 便り もしないままで、

【音】 (名) おと (平家) = 日頃は 評判 でも聞いているであろう、今は目でもごらんなさい。 日頃は

に聞く

評判

C おとど は、法興院の = 人々も、(源氏の)いらっしゃる この 大臣 人々、おはします ほこゐん 興院の = この

っこい

とど

大臣

(大鏡)

(源氏)

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A 十一になり給へど、程より大きに、 おとなしう 清らにて、 (源氏) = 十一歳におなりだが、年ごろよりも大きく、 大人びていて 美しくて、 おとなしく 、 思慮分別があり

年の程よりはいと

= 年のわりにずっと

【大人し】 (形・シク) おとなし 、

138 137 大人フ おとなし ⌇⌇⌇⌇⌇⌇ ⌇

い子は

【訪ふ・音なふ】 聞こゆる人もなかりけ 「訪ふ」と漢字をあてる。元来「音なふ(=音をたて る)」だったものが、「訪ふ(=音をたてて訪れる)」 になったものなのだ。 ● 訪れる。 手紙を出す 音を立てる。 ①②③ (動・ハ四) おとなふ 申し上げる人もなかっ ⌇⌇⌇ ⌇ おとなひ 訪れ 「大人し」と漢字をあてる。文字通り「大人らしい。 思慮分別がある」の意。現代語の「おとなしい」の意 味は古語にはないので注意だよ。 ● 大人びている。 思慮分別がある。老 成している。 年配で、おもだっ いる。 ①② ③

大人びている

(紫式部)

C るを、 (源氏) = 古びたところだということで 古 ふ りにたるあたりとて たので、

リフリ

訪れる

83

141 「おどろおどろし」は 動詞「おどろく」の「おどろ」 を二つ重ねて形容詞化したもの。おおげさに感じ るほど威圧的で恐怖であるさまを表すよ。 気味が悪い。恐ろし い。おおげさだ。仰々し い。 ① ② 「大人ぶ」と漢字をあてて覚えるて便利だ。「大人ら しくなる」「一人前になる」の意。 「おとなふ(訪 ふ)」と混同しないこと。 ● 大人らしくなる。大 人じみる。 一人前にな 大人 になる。 ① ② おどろおどろしく 作りたる物は、 気味が悪く 作ってある物は、 。あなかま。 。ああ、やかましい。 一人前になら せようと、 かわいらしいご様子で、 (形・シク) おどろおどろし 138 【大人ぶ】 (動・バ上二) おとなぶ おとなび させむと、 139

御年のほどよりは、 おとなび

B 今はこの若き人々 = 今はこの若い人たちを 大人じみて

= 御年齢のわりには、

140 おおげさだ ⌇⌇⌇⌇⌇ 大人ぶ って ⌇⌇⌇⌇⌇⌇ ⌇ 踊ろ踊ろ

一人前になる

(更級) うつくしき御さまにて、

(源氏)

A 目に見えぬ鬼の顔などの おどろおどろし

夜の声は

● = 目に見えない鬼の顔などの おおげさに響く

= 夜中の声は

気味が悪く ⌇⌇⌇⌇⌇ て

尻 ふりダンスは

(源氏)

(源氏)

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